2019年10月24日
キャッスルヴァニアの名プロデューサーによる新作イガヴァニア『Bloodstained』のインディー開発
創設間もない限られた予算のインディー スタジオがスタジオがこのようなジャンルの責任重大なゲームの新作をいかにして制作できたのか知るべく五十嵐氏にインタビューを実施し、開発の様子について語っていただきました。また、ArtPlay 社がいかにしてBloodstainedの多岐にわたる多岐にわたる武器や敵をデザインしたのかについても公開していただきました。ゲームの公平性を保つため、ボスのデザイナー達が短刀 1 本かつノーダメージで各キャラを倒せるようにしたそうです。
ペーシング (ゲームの展開速度) に非常に高い評価を得ているBloodstainedですが、いかにしてこの広大で詳細なゲーム環境を設計したのかについて五十嵐氏に詳しく話していただきました。スタジオがどのようにコミュニティからのフィードバックを取り入れ、Bloodstainedのグラフィックスを改良していったのか、また、Unreal Engine がどのようにゲーム中の高品質な画像の中心的役割を果たしていったのかについても回想していただきました。最後に、お気に入りの UE4 ツールや機能について共有していただきました。 Bloodstainedのルーツはキャッスルヴァニア シリーズと密接に繋がっていますが、ファンの望んだものを作ることと、このジャンルを発展させることのバランスはどのように取っているのでしょうか?
五十嵐孝司プロデューサー:2D の探索型を基本とする横スクロール アクションの新旧ファンを満足させる土台を作ろうとしました。プロジェクト全体のテーマとして、ファンの期待どおりのものを作るということがありました。つまりすでにプレイされているゲーム システムでありながら新しい設定を持ったゲームです。この [シリーズ] の続編を作るとしたら、このジャンルの [雰囲気] を維持しつつも、新しいアイディアを盛り込むことがひとつのチャレンジになるでしょう。
今回イガヴァニアをインディー スタジオで開発したわけですがどういった違いがありましたか?
五十嵐氏:インディー スタジオとして仕事をして特に大変だったのは、[フレキシブル] なスケジュールでも厭わず働いてくれるスタッフを探すことでした。大手スタジオには有能な開発者が沢山いるだけではなく、緊急時に責任を取ることを厭わない開発者が内部にいます。とは言えプレイヤーにとって楽しいものを創りたいという気持ちは同じです。

開発段階でBloodstainedの美術面、ビジュアルに関してフィードバックをいただいてから、美しいライティング、格好良いアニメーション、たくましいビジュアル エフェクトに 刷新しました。どのようにゲームのグラフィックをオーバーホールしたのですか?
五十嵐氏:労力の多くはライティングのやり直しに費やしました。作らなければならないコンテンツが大量にあったので、[当初] 大部分のライティングは自動化していました。3D 面に 2D のビジュアルを描くにあたって、最初は FOV (視野) を狭くしていたのですが、そうすると画角の問題が出てきました。ゲームプレイを優先するところでライトが届くべき所に届きませんでした。フィードバックをいただいて、最終的には抜本的にライティングを手作業でやり直しました。ライティングとは別に、追加の支援を受けて、アニメーション、NPC モデルや環境アセットを改良しました。
戦闘のタイトさや反応の良さが高評価です。どうやってこのような操作感の良いゲームにできたのでしょう?
五十嵐氏:戦闘の反応の良さは特徴のひとつですね。とても気を遣いました。どんなにゲームの設計が素晴らしかったとしても、プレイヤーにとってのゲームの楽しさは操作性の良し悪しで決まってしまいます。

目まぐるしく連続する武器や術はどのようにデザインしましたか?
五十嵐氏:武器は武器の種類で分類して、同一の DPS (秒間ダメージ) になるようデザインしました。スピード、レンジ、フリーズ時間、属性が異なっていたとしてもです。今回採用したシャードと呼ばれる術は、役割に基づいて装備されます。[素早いワンショットの攻撃] を作りたい時は、魔法シャードに分類しました。[ディレクショナル攻撃] なら、ディレクショナル シャードにしたり。また、攻撃以外では、プレイヤーが MP を消費することなくブーストを可能にするパッシブ シャードがあります。武器と術は、考え得る様々なプレイスタイルに合うような攻撃回数と防御方法を元にデザインしました。
おぞましいものから可愛いものまで様々な敵がいますが、どのように創ったのでしょうか?
五十嵐氏:数名のアーティストに敵をデザインしていただきました。彼らの個性が出ていますね。ほとんどの敵は アルス ゴエティア の悪魔と中世からのインスピレーションをベースにしています。

戦闘は難しいながらも不公平さがありません。どのようにゲームの難易度を調整しましたか?
五十嵐氏:以前のゲーム制作では、ゲームがリリースされるごとに難易度も徐々に上げていきました。このジャンルのゲームの初期の難易度に戻そうと考えました。敵やボスのデザイナーがナイフ 1 本でもノーダメージで敵やボスを倒せるようにするというルールを設定したことで戦闘を公平にできたかと思います。これにより、どんなに武器のリーチが短くても毎回時間的に余裕かつノーダメージで敵を倒せるようになっています。私たちは敵からの不公平な攻撃を認めません。
Bloodstainedの環境は、連絡しあう部屋で構成されたレベルが広大ながらも細部までよく作り込まれていると思います。ゲームの幽霊城はどのように創り上げていったのか教えて下さい。
五十嵐氏:まず、ゴシック調のゲームに必要なアイディアをいくつか出しました。使いたい設定、カラーパレット、環境的な仕掛けなどです。次に、城の外装デザインをベースに全体の地図を作成して、ゲームの流れに沿って各エリアにアイディアを割り当てていきました。これらのアイディアを割り振ったら、ゲーム全体の筋書きと矛盾の無いように遷移しているか確認して、なるべくドラマチックになるように調節しました。

ゲーム展開のペースが高く評価されています。プレイヤーを飽きさせずに没頭させ続けるコツはなんですか?
五十嵐氏:ゲーム全体を通して良く練られた「モチベーション フロー」かなと思います。この点においてうちのディレクターは凄腕でして、武器の獲得タイミングや敵の出現タイミングは彼が統括して決定しました。これらのタイミングが良いので、プレイヤーは飽きることなく最後までプレイできるんです。
Bloodstainedでは、キャッスルヴァニアで好評を博した作曲家、山根ミチル氏による、このゲームのために生演奏で録られた荘厳なサウンドトラックが目玉のひとつです。再びチームを組んでみていかがでしたか?
五十嵐氏:彼女のサウンドトラックはいつも間違いないので毎回安心してお任せできます。長年一緒に働いてきましたし、彼女には基本的に「いつものやつ」お願いします、みたいな感じですね。近ごろ彼女はヒーリング ミュージックに力を入れていまして、私たちも彼女のその曲作りの方向性を尊重しています。

五十嵐氏:何といってもビジュアルの忠実さです。UE4 の物理ベースのマテリアル によって、ゲームのクオリティーが大幅に良くなったと思います。
チームでお気に入りの UE4 ツールまたは機能はありますか?
五十嵐氏:好きな機能はたくさんあります。たとえば、 LOD (詳細度) の設定を異なる LOD にコピーペーストできるので、時間の無いリリース直前に、ゲームの最適化が非常に効率良くできました。それと マテリアル インスタンス をして様々なバリエーションを作成できたり、アセットの関連性を確認できる リファレンス ビューア がとても役立ちました。

ゲーム開始直後から膨大な数のコンテンツがあるのもBloodstainedの特徴のひとつです。なおかつ、スタジオは 13 の無料 DLC も提供すると発表しました。ここでのスタジオによる出し惜み無い努力について詳しく説明していただけますか?
五十嵐氏:実は、ゲーム本体に含めたかった機能がいくつかありましたが、ゲームの規模だったり、複数のスタジオが協力しているために、分割して DLC となりました。505 Games、WayForward、New Future Lab、その他信じられないくらいたくさんのご協力をいただいて、このような形での提供となりました。このプロジェクトに携わる全員が良いゲームを世に出したいという情熱を持っていたことが、ここまでやってこれたもうひとつの理由です。

Bloodstainedへのファンからの 圧倒的称賛 と、クラウドファンディングから誕生した最も成功したゲームとの呼び声が高いですが、スタジオの皆さんはどんな気持ちですか?
五十嵐氏:ファンからのそのような称賛を読んだり耳にしたりするのはシンプルにとても嬉しいです。ゲーム開発を続けられる大きな会社が残ったことが嬉しいですね。新たな自信が付いたところで、ファンのことを考えながらこれからも精進していくことにしました。
貴重なお時間ありがとうございました。どこに行けばBloodstained: Ritual of the Nightについてもっと知ることができますか?
五十嵐氏:Bloodstained: Ritual of the Nightのニュースは 505 Game の公式ウェブサイトのゲーム ページ や私たちの キックスターター ページ から入手可能です。