Hellblade: Senua’s Sacrifice の制作ストーリー
2017年8月8日

Hellblade: Senua’s Sacrifice の制作ストーリー

作成 Daniel Kayser

過去 10 年にわたり、Ninja Theory は小規模インディー チームの可能性の限界を押し上げてきました。技術的に優れた、アクション満載のナラティブ重視のプロジェクトでそれを実証してきました。そうした代表作として、『Enslaved:Odyssey to the West and DmC:Devil May Cry』があります。

Ninja Theory の最新作、 Hellblade:Senua’s Sacrifice では、全く新しい IP を作ることに挑んでいます。迫力あるビジュアルと洗練されたナラティブを特徴とし、プレイヤーを神話と狂気が渦巻く残忍な幻のクエストへと導きます。Hellblade では、スキル ツリー、インベントリー、標準の HUD もなくして自然に見えるようにして、Senua の亡くなった恋人の魂のために戦いながら Viking Hell にプレイヤーを没入させることに力を入れています。

ゲームそのものを超えて、Hellblade はインディー AAA の基準になることを目指しています。Ninja Theory によれば、インディー AAA とは、AAA クオリティの IP を制作、その資金調達、所有をしながら、インディー ゲームのようにゲーム デザインに力を入れて、低価格帯、オープンな開発プロセスを特徴とするとのことです。

Ninja Theory の共同設立者であり、チーフ クリエイティブ ディレクターである Tameem Antoniades 氏にお会いしてお話を伺う機会がありました。このゲームを制作したきっかけ、ユニークなナラティブとゲームプレイの目標、アンリアル エンジンがゲームの着想から完成までどのような役割を果たしたかについて以下をご覧ください。

Q:Hellblade:Senua’s Sacrifice のコンセプトはどのように生まれましたか?

インディー デベロッパーが置かれている状況は厳しいものであり、すべてをパブリッシャーに頼っている状態では仕事を進めるのも容易ではありません。独自の IP を作ることが重要だと思いました。我々はある程度の規模のゲームを作るには十分な予算がありましたが、AAA とインディーとの間に位置するゲームはうまくいかないというのが常識でした。それが正しいか試してみようと考えたんです。そこで、自分たちの強みを生かして、面白いテーマを見つけて作ることにしたのです。

Q:プロジェクトの人数と開発期間を教えてください。

3 年間費やして、平均して 20 名が従事しました。

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Q:全体的なゲームプレイについて、Hellblade ではどんなものを目指しましたか?

表現では AAA レベル、感性はインディー、価格は AAA とインディーの中間に位置するゲームを作ることです。 自分たちのニッチは、純粋にストーリーに重点を置いたアクション ゲームであり、妨げになりそうなものは排除しました。だから HUD、インベントリー、スキル ツリー、クラフティング、チュートリアルといったものをなくしたんです。プレイヤーが目にするもの、耳にするものだけにしました。

Q:Hellblade 内の戦闘とそれが過去に手掛けた作品とどう違うのか、お話いただけますか?

チュートリアルと HUD がないので、戦闘は気づきやすく、すぐに始められるものでなければなりません。つまり、表面上はシンプルだけど、8 時間以上にわたり飽きさせない深みのあるものにしなければなりません。ある意味、古き良きアーケード ゲームへの懐古といえます。

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Q:Ninja Theory は、技術的限界を超えることで知られ、Hellblade でアニメーションとリアルタイム シネマトグラフィーの水準を引き上げました。こうした分野での技術革新は、完成作品にどんな影響を及ぼしましたか?

自社のパフォーマンス キャプチャー スタジオを作ったことで、必要なときにシーンを撮影して、柔軟に開発できるようになりました。Hellblade では、表情を持つ一人のキャラクターが主人公です。こうした制約に沿ってステージを作りました。過去の作品よりも上のクオリティを目指しましたが、思ったよりもうまくいきました。目標達成に向けて力を貸してくださった、Vicon、 3Lateral、 Cubic Motion、そしてエピック ゲームズに感謝します。

Q:ゲームのテーマについてかなりリサーチし、神経科学者、そして精神疾患の経験者の協力も得て作業を進めたと伺いました。ゲームをしながらテーマについてどんなことを感じてもらいたいですか?

他の立場になってもらって、テーマについての考えを変えさせるようなことはしません。Senua を哀れだと思わないでください。数時間、彼女が向きあう現実の世界に入り、幻のクエストを始めてほしいのです。幻聴、幻視、妄想に襲われ、実際の体験に応じて状態が変わっていきます。

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Q:アンリアル エンジンを使って、Hellblade のビジョンをどのように実現させましたか?

アンリアル エンジン 4 (UE4) を使うことでアーティストやデザイナーは、コードの使用を最小限に抑えて独自のブループリント システムを構築することができました。ほとんどの分野で、担当者は 1 名のみです。背景アーティスト 1 名、オーディオ担当 1 名、コンバット デザイナー 1 名といった感じです。制作したコンテンツの量とクオリティは驚異的なものであり、彼らの才能がもたらしたものと同じくらい、アンリアル エンジンの機能もすごいものでした。UE4 のお蔭で大規模スタジオと肩を並べて競うことができました。

Q:開発全般でアンリアル エンジンで特に役立った部分はありましたか?

ブループリントとリアルタイム編集が、あらゆる分野で役立ちました。5 年前と比べても一桁速くコンテンツをイタレーションし、作成しています。

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Q:ゲームのフォト モードについてお話いただけますか?

ゲームはどこをとっても美しいので、フォトモード実装は必須でした。 豊富なツールやプリセット フィルタがあります。皆さんがどんな写真をキャプチャーするか非常に楽しみです。

Q:Hellblade は、美麗でありながら骨太の作品ですね。このプロジェクトは、スタジオとしての Ninja Theory の哲学をどのように反映していますか?

非日常的なパーソナルな物語に焦点をあてて、美しい世界と迫力あるアクションへと広げていくやりかたが気に入っています。作業を進めながら、まだ学ぶことがあります。いつも、自分たちはまだ力不足と感じて向上に努めています。調子に乗ってうぬぼれたり、周囲に振り回されないようにして楽しんでいます。

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Q:Hellblade:Senua’s Sacrifice は、AAA ゲームのように見えますが、価格は29.99 ドルですよね。この価格がプロジェクトにとって、またスタジオとしての Ninja Theory にとって何故重要なのかお聞かせください。

中規模スタジオがこの業界で生き残るには何らかの方法を見つけなければなりませんでした。最先端だけど規模は小さく、AAA パブリッシャーが手を付けないようなジャンルでクリエイティブなゲームを作りたかったんです。2014 年当時、Hellblade を AAA が作るゲームの半分の規模にして、価格も半分に抑えるという目標で始めました。本作はその集大成です。自分たちでパブリッシュしてデジタル配信のみなので、価格を低く抑えることができました。 小売価格の期待に迎合していたら、模範にならないと考えたのです。この試みがうまくいくかどうかはわかりませんが、やることに決めました。

Q:ゲームの詳細はどこで見れますか?

弊社の YouTube チャンネル でご覧いただけます。プロジェクト着手当初から 3 年以上にわたる開発ダイアリー シリーズを作りました。このシリーズは 28 個あり、ゲーム制作と並行してやらなければならない作業が山のようにありました。しかし、ゲームを作るということは、とても大変だけれど楽しいものだということを知っていいただきたかったんです。 ゲーム そのものについて知りたい場合は、情報を見ないようにして、先入観なしにプレイしてみてください。最近ではこうしたゲームをネタ晴らしや期待感なしでプレイするのは滅多にありません。その上、たった 30 ドルのゲームです。