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Rookie Award で賞を獲得したゲーム環境 Asha の舞台裏

Shira Eilan
Asha を目にすると、ゲーム・オブ・スローンズの世界の数千年後、失われた都市のコンセプト アートを見ているように感じることでしょう。見る人を別の世界へいざなうような作品であり、Shira Eilan 氏にとっては名刺代わりになりました。Eilan 氏は、この荘厳な卒業制作のプロジェクトで Rookie Award の People’s Choice を獲得し、Ember Lab で仕事に就くことができました。
 
本日は、Eilan 氏にお話を伺うことができました。Asha の詳細、経歴や現在の仕事、Unreal Engine を使って環境を開発したいと考えている学生に向けたアドバイスを聞いています。

簡単に自己紹介していただき、どうやって 3D アーティストになったのか教えていただけますか?どちらの学校に通い、どのプログラムに参加したのでしょうか?

こんにちは。Shira Eilan です。ゲーム向けの環境アートについて学び、昨年 Think Tank Training Centre を卒業しました。
子どものころからアートに魅力を感じていました。何年か絵画について学んでから、セル アニメーションの学習を始めました。楽しかったのですが、私のスキルでは就職するのが難しいことがわかりました。

何年かニュースの放送の分野で働いて (タイミングについて多くを学んでから)、もう一度挑戦することにしました。Israeli Animation College で 1 年にわたる Blender のコースを受講し、3D アートの基礎を学びました。初回の授業から 3D アートのことが気に入り、芸術的にも職業的にも、この分野に全力で取り組みたいと思いました。ほかに 2 つ短期のコースを受講してから、作品の 1 つを Think Tank に送りました。入学が認められたときにはとても嬉しかったです。
 
Think Tank での目標は、ゲーム業界でのキャリアを始めるきっかけとなる 1 つのプロジェクトを作成しすることでした。本日ご紹介する卒業制作の Asha は、Student Showcase Spring 2021 に採用されました。また、The Rookies のRookie of the year のゲーム開発部門で People’s Choice に選ばれました。
 
Asha のプロジェクトはどのように始めたのですか?このプロジェクトでの目標は何でしたか?どこからインスピレーションを得ましたか?
 
Eilan 氏:Muyang Xu 氏による美しいコンセプト アートを見つけてから、Asha の作成を始めました。まず、Maya でごく基本的なブロックアウトを行いました。コンセプト アートの時間を超越した静かな雰囲気、建物の主な形状、スケール感を保つことが目標でした。
 
コンセプトは詳細なものではなかったので、マテリアル、フォリッジのタイプ、パターンの参考資料を集めました。都市のモジュール型の建物に関しては、ムーア建築、極東の霊廟、スター・ウォーズのナブーから多くのインスピレーションを得ました。
 
プロジェクト全体を完成させるのに 1 年近くかかりました。メンターシップ期間中に作業を始めて、開発を進め、洗練させていき、その期間が終わったあともすべてに満足するまで作業を続けました。
 

学校はプロジェクトの作成にどう役立ちましたか?
 
Eilan 氏:Think Tank Training Centre で学ぶことにしたのは、ゲーム業界でのキャリアを始めるために最適な判断でした。教師やメンターは業界で働いている人たちで、知識がとても豊富です。また、Think Tank では学生が互いに助け合う雰囲気を育んでいて、これも大きなプラスになります。
 
メンターシップ期間の前に受講した授業では、大きなプロジェクトに取り組むために知っておく必要があるワークフローとソフトウェアのすべてに慣れることができました。その次の学期では、Aaron Dodd 氏をメンターとすることにしました。Dodd 氏は、私が Unreal Engine についてさらに深く知ることができるように支援してくれました。Unreal Engine でライティングのさまざまなワークフローやマテリアル エディタについて学ぶのは特に興味深く、このシーンを作成するにあたって大いに役立ちました。
 
たとえば、これらは、Asha のメインとなるマスター マテリアルで使用したシンプルで効果的なノードです。頂点をペイントするために 2 つのチャンネルを使い、それから Precomputed AO Mask ノードを使ってベイクした AO 汚れマスクを追加しました。このノードは、タイル処理可能なマテリアルを分解して、主に角や端に汚れのレイヤーを追加するために役立ちました。また、マスター マテリアルでスタティック スイッチ パラメータ ノードを使うと、メモリを節約でき、インスタンス マテリアルを整理しやすくなりました。
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学校での学習とプロジェクトへの取り組みを通じて身に付けた開発スキルのなかで、有効なものをいくつか教えていただけますか?
 
Eilan 氏:このプロジェクトに取り組むなかで、多くのことを学びました。シーンへの適切なライティング、アセットの最適化、フォリッジの作成など、さまざまです。技術的なスキルのすべてを結び付けることにもなる、最も重要なことの 1 つは、前もって計画を立てることです。特にプロセスの記録をとることが重要です。私はノートを用意して、する必要があることをすべて書き留め、タスクが終わることにその内容を更新していました。そうすることでプロセスを追跡し、次に行うべきタスクに備えることができました。
 
Unreal Engine を使った経験はどのくらいあったのですか?

Eilan 氏:Think Tank で学び始めたときには、Unreal も、ほかのリアルタイム パッケージも、まったく使ったことはありませんでした。私にとっては、このプロジェクト全体が、単に完成品を目指すだけのものではなく、学習の過程でもありました。経験を通じて学ぶのが一番だと思います。
 
Asha ではほとんどすべてのエレメント (鉢植えの植物と中庭の果物以外) を自分で作ったようですが、どうやってそのようなことをやり遂げたのですか?
 
Eilan 氏:Asha のほとんどすべてのエレメントを作成するのは大きな課題でした。私 1 人での作業だったので、時間を節約する方法を見つける必要がありました。できるだけモジュール型にすることが役立ちました。シーンではタイル処理可能なマテリアルを多用し、その一部をインスタンス化して、エンジン内で簡単に調整できるようにしました。
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また、モジュール型の一連のアセットを作成したことで、セットへの小道具の配置がやりやすくなり、さほど手間をかけなくても、環境を人がいるような感じにすることができました。
 
ワークフローについては、小さなタスクを先に片付けてから、大きなタスクに移るほうがやりやすいとわかりました。小さなタスクに取り組むなかで 1 つか 2 つのことを学ぶことがよくあり、大きなタスクでその学びを活かすことができました。
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このシーンのライティングをどのように作成したか、詳しく教えていただけますか?
 
Eilan 氏:シーンのライティングは、最も時間がかかったタスクの 1 つです。日中の陽がよく当たる環境を作り、影になっているエリアとのコントラストをはっきりさせて、しかし影になっているところも見えるようにしたいと考えていました。指向性固定ライトを使い、目的に合わせて暖かく見える色温度にしました。金属の屋根や、メインの建物の中ほどにあるステンド グラスなど、反射やハイライトのいい効果を出したいところには、スポット ライトと矩形ライトを追加しました。金属の屋根からの反射をさらに強調するために、反射キャプチャを 2 つ配置して、輝度を高めの 1.5 に設定しました。
 
スカイライトについては、HDR 画像を取り込んで編集し、Intensity のスケールを少し高めの 1.2 にして、ライトの色をとても淡い黄色にしました。
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いくつかの暗い隅にはロウソクを置き、シンプルなパーティクル エミッタを利用しました。シーン全体でライトの色は暖かくなっています。コントラストを加え、未来的な感じを出すために、街灯、列車の線路の橋脚、橋の下にあるテレポーターにはフロー マップを使って青いマテリアルを追加しました。
 
色、ライト、影が目立つようするために LUT を作成しました。これにより、シーンのルックを自分が目指していたものに近付けることができ、全体が活気に満ちたものになりました。
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開発において一番難しかったことは何ですか?どうやってその問題を解決しましたか?
 
Eilan 氏:課題はいくつかあり、そこから多くを学ぶことができました。面白かったのは、線路の橋脚の下にあるテレポーターです。カメラを通じてそのエリアを見ていると、何かが足りない気がしたので、その隅をどうするか考えることにしましたシーンにはもっと未来的な要素が欲しいと思っていたので、テレポーターのモデルを作成しました。より正確に言えば、この世界にテレポーターがあったとしたらどのようなものになるかを想像しました。
 
それから、その構造物に未来的な要素があることを視覚的に示すために、パーティクル エミッタを床に加え、ガラスのマテリアルのエミッシブ チャンネルの値を少し高くしました。
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中庭をどうするかということも課題でした。ここに焦点を置きたいと考えていましたが、ここにあったとしてシーンに馴染み、自然に見えるものは何か決めるのは難しく、レイアウトへのアプローチも難しいことがわかりました。中庭は元のコンセプトにはなかった場所なので、自分でコンセプトを考える必要がありました。周囲の人にアイデアやフィードバックを求めてから、バルコニーの隅に祭壇を置くことにして、階段から祭壇へと誘導するようなレイアウトで小道具を配置しました。
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現在の知識を持ってこのプロジェクトを始めるとしたら、どの部分について違ったやり方を選ぶと思いますか?
 
Eilan 氏:いくつかあります。すべてがエンジン内で動作するようになるまでにかかる時間はずっと短くなると思います。技術的なスキルが大幅に向上しているので、このプロジェクトを作成したときに比べれば、アセットの作成にかかる時間は短くなるでしょう。あとは、最初からすべてを Unreal 内で整理するでしょう。コンテンツ ブラウザで適切なフォルダ内にすべてを置き、ワールド アウトライナーもフォルダを使って整頓しておきます。
 
これから Unreal を使い始める学生の方々のために、何かヒントをいただけますか?
 
Eilan 氏:私からあげられる一番のヒントは、怖がらないでください、ということです。多くの可能性や選択肢があるエンジンを使い始めるのは気がひけるかもしれませんが、一度に 1 つのことに集中していくといいでしょう。エンジンのどこかを選び、その点について探り、質問をして、慣れていくうちに、多くを学ぶことができます。

一緒に学んでいた人たちが作ったもののなかに、自分がいいと思ったり、興味を持ったりしたものがあったら、どうやって作ったのか尋ねました。また、オンラインで誰でも無料で利用できるすばらしいチュートリアルがたくさんあります。公式の Unreal Engine のドキュメントを利用することもお勧めします。馴染みのない新しいことに取り組む際、深く理解するためにとても役立ちました。
 
学校を出た現在、何をしていらっしゃるのですか?その仕事に就くために、どのプロジェクトまたはスキルが役立ちましたか?
 
Eilan 氏:現在は Ember Lab の環境アーティストとなり、Kena:Bridge of Spirits の仕事をしています。3 人のチーム メンバーと、リードを務める Julian Vermeulen とともに働いています。

私は主に環境のアセット作成を担当し、その最初から最後までを行っています。また、コリジョン、アセットの最適化、バグ修正も担当しています。

働き始めたとき本当に役に立ったのは、Unreal Engine、テクスチャ パッケージ、アセットの最適化に慣れていたことでした。働きながらも多くのことを学んでいますが、個人的なプロジェクトを完成させていなかったら、働き始めたときほどの知識は持っていなかったでしょう。
 

どういった経緯で Ember Lab で働くことになったのですか?

Eilan 氏:驚くような経緯です。Think Tank での良い友人が、私の名前を Ember Lab のチーム メンバーに伝え、そのメンバーが私のポートフォリオをリードに送ってくれました。それからまもなく連絡があり、私はすぐにチームに加わることになりました。

私はゲーム開発の経験がありませんでしたが、働き始めるために十分な知識があるとポートフォリオで示すことができたのだと思います。プロジェクトでは、スキルを示すために、ハード サーフェス モデリングとオーガニック スカルプティングの両方を意図的に見せ、また、多様なマテリアルとテクスチャを使いました。この機会を、このような形で得られたことを嬉しく思っています。これはつながりの重要性を示していると思います。クラスの友人であっても、つながりは大切だということです。
Image courtesy of Ember Labs
Ember Lab の環境アーティストにとっての普通の 1 日がどのようなものか教えていただけますか?

Eilan 氏:Ember Lab での 1 日は、普通は目下のタスクに取りかかることから始まります。2 週間ごとにスプリントの計画を受け取り、優先度が高いタスクと低いタスクに分類します。(スカルプトやテクスチャの作成など) タスクの各部分が終わったら、リードにスクリーンショットを送ります。リードが承認すれば次の段階に進み、修正点があればその指示を受けます。バグの修正についても概ね同じです。優先度が高い順に仕事を進めていきます。
卒業が迫っている学生の方々に向けて、業界でのキャリアを始めることについてのアドバイスはありますか?

Eilan 氏:卒業を控えている、あるいはプロジェクトを完成させようとしている学生の方々への私からのアドバイスは、焦らないでください、ということです。自分では終わったと思った時点でも、フィードバックを求め続けるようにしてください。最終的な仕上げはとても重要です。業界の人々に見られるところでもあります。ライティングやビデオ編集にあと一手間をかけられるかどうかが、チャンスをものにできるかどうかの分かれ道となる可能性があります。プロジェクトのあらゆる部分を堂々と見せられるようになるまで作業を続けましょう。
 
現在の役割から、将来的にはどのような方向を目指していますか?

Eilan 氏:次は、環境アーティストとしての仕事を続けてスキルを伸ばしたいと考えています。私は知識やアイデアを共有するのが好きなすばらしい人たちと一緒にクリエイティブな環境で働くことが大好きです。いずれはアート ディレクターになりたいとも考えています。それまでにやってみたい個人的なプロジェクトのアイデアがいくつかあります。前回個人的なプロジェクトに取り組んだときはとてもいい時間を過ごすことができたので、またやってみたいと思います。

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