2020年4月16日
サイバーコネクトツーがドラゴンボールZ ユニバースを3Dで忠実に再現
サイバーコネクトツーがどのようにゲームの美しいルックを作り上げたのかを知るために、ディレクターの木本一輝氏と、バンダイナムコ エンターテインメントのプロデューサーの原良輔氏に話をうかがいました。セルシェーディングスタイルを確立するまえに様々なビジュアルを試したことや、シリーズの象徴的なキャラクタをどのように再現したか、効率的にコスチュームを作るために頭部と胴体を分離した話などについて説明します。またゲームの 3D ワールドを肉付けするためにアニメだけではなく原作も活用したこと、サイバーコネクトツーのアートワークフローについても触れます。 ドラゴンボールZ KAKAROT は鮮やかで、セルシェード風のスタイルです。このルックに決めるまで、様々な実験が必要でしたか?
サイバーコネクトツー ディレクター 木本一輝氏:現在のビジュアルスタイルに決定するまで様々なアートスタイルを試しました。初期には、アートブックやカラー原稿などにある水彩スタイルをテストしました。最終的には、原作のスタイルにできる限り近づけるために、このスタイルとアニメ風の方向を組み合わせることにしました。例えば、キャラクタの影の光との境目の両方に軽いグラデーションを適用しています。そして色のぼかしの表現も実装しています。また、アニメスタイルの見た目にするために、セルシェーダーも取り入れています。このゲームでのユニークな見た目を実現するために実験しました。
キャラクタモデルは素晴らしいです。アニメの象徴的なキャラクタを忠実に 3D で再現しています。これらのモデルはどのように作り上げたのですか?
バンダイナムコエンターテインメント プロデューサー 原良輔氏:原作の悟空の成長段階と変化について、一貫してゲームに取り入れ正確に再現するということに取り組みました。例えば、悟空は様々な強敵と戦う中でより強くなります。時には服装が変わります。そして超サイヤ人のように新たな形態も獲得します。もちろん、悟飯やベジータなどにもシリーズ内で幅広い服装の変化があります。こうした内容を正確に保つことが大きな目標の一つでした。
木本氏:このために、チームはすべての服装スタイルのために大量にユニークなアセットを制作する必要がありました。ここで、頭と身体のモデルを分離しました。UE4 で組み合わせることで、制作パイプラインを高速化、効率化することができました。
ドラゴンボールZ KAKAROTの背景はアニメでの背景と非常に似通っています。ゲームで背景を再現するためにどのようなアプローチを取りましたか?
原氏:ゲームを主にアニメをベースとしてデザインされていますが、マンガも参考にするようにしました。例えば、ゲーム内のワールドマップは原作に登場する非常に詳細な情報を元にしています。
木本氏:広いワールドを飛び回る時に、アニメのように色数を限ってしまうと、平凡でフラットに見えてしまいます。そのため、テクスチャに関しては少しリアル寄りにしました。これで画面内の情報量が増えます。
ドラゴンボールZ KAKAROT は火や電気、爆発など幅広いビジュアルエフェクトを使っています。素晴らしいビジュアルエフェクトはどのように実現しましたか?
木本氏:シネマティクスで使われている闘気のアートディレクションは手描きマテリアルが元になっています。トライ・アンド・エラー段階では、中心から外に鋭く放出されるパーティクルも試しました。ただ、結局のところ求めていたクオリティに達しなかったので、手描きマテリアルをリファレンスにすることにしました。
ゲーム内のエフェクトについては主に3ds Max を使用しました。FumeFX や RayFire といったプラグインを使用して作成しました。
ドラゴンボールZ KAKAROT の必殺技やカットシーンは印象的です。どのようにアニメーションに命を吹き込んだのですか?
木本氏:すべてが丁寧に作られています。影もハイライトもドラゴンボールの世界に合わせています。3D モデルの影をただそのまま実装すると、ドラゴンボールユニバースの正確なイメージを掴むことができません。デザインのすべてについて詳細な調整を行いました。キャラクタをデザインするときに、影、ハイライト、色を、アニメとできる限り近い見た目になるように調整しました。さらに、ポストエフェクトでコントラスト、パラフィン、グラデーションフィルタを調整してビジュアルを向上しています。
アニメからそのまま抜き出したかのような印象的なシーンがあります。ゲームでの見た目のほうがさらに良いというファンもいます。シーンの再現についてどのようにアプローチしましたか?
木本氏:ドラゴンボールは世界中のファンに世代を超えて愛されているので、ファンが長年覚えているような有名シーンを再現する際には、非常に細かい詳細まで気を配るようにしました。キャラクタの表情からドラゴンボールのシーンまで、アニメとマンガを参考にしながらゲームで注意深く再現しました。複雑なアニメ表現をゲームに取り入れられるというサイバーコネクトツーの強みによって、物語に親しんだファンにとっても、ドラゴンボールの世界にはじめて触れるユーザーにとっても心惹かれる体験を作り出せたのではないかと思います。
これはサイバーコネクトツーにとって初の Unreal Engine 4 作品です。エンジンの変化についてチームはどのように感じましたか?
木本氏:ASURA'S WRATH の開発で Unreal Engine 3 を使用したのですが、ドラゴンボールZ KAKAROT がチームにとって初の UE4 使用作品になりました。新しいバージョンの Unreal では、多くの機能が大幅に改善していました。開発プロセスはより洗練され、シンプルになりました。またこのエンジンを使用したいと考えています。
アートのワークフローについて説明していただけますか?
木本氏:これまでアーティストのワークフロー飲めんでは大きな変化はありませんでした。まず、リードディレクターからアートの方向性と、ゲームに実装する必要があるコンテンツについて指示を受けます。アートチームは各セクションについて必要な作業と、必要条件を明確にします。アートチームのワークフローの最終段階では、リードディレクターからの承認を得ることになります。
チームが気に入っている Unreal Engine のアートツールや、役に立った機能などはありますか?
木本氏:チームはゲーム内ストーリーで起こるイベントを作成するためにブループリントを頻繁に使用しました。強力で、プログラマの助けなしに自由にイベントを作り出すことができました。またシネマティクスのランドスケープとフォリッジではシーケンサーを使用しました。
数多くのキャラクタが画面上を飛び回るセミオープンワールドですが、パフォーマンスのチェックは大変でしたか?
木本氏:メモリ使用量を削減し、ロード時間を最小限にすることがチームにとっての課題になりました。読み込んでおくべきファイルのサイズが大きいものだったのでメモリに大きな負担がかかりました。大規模な背景によるものです。この問題に取り組むために、すべてのファイルの最適化と全体のファイル順序についての単純化を行いました。こうしたメモリ問題への取り組みは難しいものです。常にアセットの更新履歴をチェックすることでも対応しました。
これはサイバーコネクトツーのはじめてのドラゴンボール作品でした。鳥山明氏の伝説的なキャラクタやユニバースの 3D での再現はどのようなものでしたか?
木本氏:悟空は自由に空を飛び回ることができます。ほぼすべてのことができるような超人的な力があるので、直感的にコントロールできるようにすることが大きな課題でした。他にも数多くの課題がありました。ただ、チームの力を合わせることで、悟空でいる、ということを体験できる世界を作り上げることができたのです。私達が作り上げた世界を飛び回り、戦い、探検して楽しんでいただければうれしく思います。