画像提供:Ebb Software

Unreal Engine の活用によって Scorn で実現された、ディストピアのシュールレアリスムとバイオメカニカルで不気味な世界

Brian Crecente
Ebb Software は、他にはないビデオ ゲームを作ることを唯一の目的とし、高いモチベーションを持つ人々が集まって 2013 年に創立されました。創立後まもなく、小規模なチームによって独特の雰囲気を持つファーストパーソン ホラー アドベンチャー ゲーム、Scorn が制作され、これは同社のフラッグシップ プロジェクトとなりました。
Kickstarter でのクラウド ファンディングの失敗と成功を経験し、スタジオの爆発的な成長を経て、Unity から Unreal Engine への大きな移行を行った Ebb Software は、他にはないビデオ ゲームを作るという冒険を 8 年かけて成し遂げました。

Ebb Software CEO 兼クリエイティブ ディレクターである Ljubomir Peklar 氏は、これまでのスタジオの歩みについて、課題だらけでも前進するしかない道のりだったと振り返ります。また、その中での経験は、チームがフラッグシップ ゲームである Scorn を制作する能力を獲得するために欠かせないものだったと語っています。そして Scorn は Epic MegaGrant も獲得することになりました。

芸術家ズジスワフ・ベクシンスキーによるディストピアのシュールレアリスムと、H.R. ギーガーによるバイオメカニカルで不気味な世界を融合させた Scorn は、Unreal Engine によって構築された、奇妙な体験を実現するサバイバル ホラー アドベンチャー ゲームです。また、そのテーマやアイデアについては、芸術的な影響と一体になって生み出されたものと Peklar 氏は説明します。

当初はテクノロジーを偏重する世界をテーマにしたゲームとして開発されましたが、その後さらにベクシンスキーとギーガーによるホラー要素が多数加わり、これらがうまく調和する形で融合されました。最近のインタビューにおいて、同スタジオの歩み、初期の開発において Unreal Engine に移行する意思決定について、また、ゲームの設計と仕組みが自然に融合し、一体感を生み出すことができた経緯について Peklar 氏が語りました。
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Ebb Software は、「他にはないビデオ ゲームを作ること」を目的として 2013 年に創立されたそうですね。その意味について説明していただけるでしょうか?また、他のスタジオが制作したゲームに対して、具体的にどのようにタイトルを差別化したいと考えているのでしょうか?

Ljubomir Peklar 氏 (Ebb Software CEO 兼 Scorn クリエイティブ ディレクター):
これはマーケティングのためのスローガンですが、この言葉には真実が含まれています。ゲームはインタラクティブな媒体であるため、インタラクティビティを重視するという考え方を表すものです。これは非常に難しいことでもあり、品質の面で成果に差を生む考え方でもあります。一見すると解決可能に思えても、それほど簡単ではない問題もあります。ほとんどのゲームは、ほかの媒体で活用されるテクニックに頼って制作されますが、その多くは映画であり、それには多数の理由があります。
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Scorn は当初、2014 年に発表されましたが、Kickstarter (クラウド ファンディング) が成立しませんでした。その後の Kickstarter は成功し、現在は Xbox Series X|S および PC でのリリースがこの秋に予定されています。開発の延期によってチームやゲーム自体にどのような影響があったかを教えていただけますか?

Peklar 氏:
当時の私たちにとっては、このような方法が唯一実現可能なものでした。必要に迫られて行ったことばかりです。時間的なところにのみ着目すると、開発は極めて長期にわたって延期されたように思えるでしょう。しかし、2014 年当初は、ゲーム制作に取り組む人材が全部で 6 人しかいなかったのです。それが 2018 年には 60 人のメンバーを抱えるチームとなり、制作に習熟し、スタジオの基礎を作るために多大な投資を行ってきました。ゲームのほとんどの部分は、この時点までに完全に作り直していました。これほど早い段階で、人々に投資したいと思っていただけたことは本当に幸運なことでした。

Unreal Engine で Scorn を開発しようと思った理由をお聞かせください。

Peklar 氏:
このプロジェクトの開始時には Unity を利用していましたが、当時 Unity は 32 ビットのアプリケーションでした。最初のレベルをインポートしたところ、単純にエンジンでそのレベルを適切に処理できませんでした。そのため、数か月後に Unreal Engine 4 がリリースされると、同じレベルを Unreal にインポートしたのです。すべてが非常にスムーズになったので、それ以降 Unity に戻ることはありませんでした。
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Scorn は、明らかに H. R. ギーガーの作品や、バイオメカニカルな肉体が登場するホラー映像の影響を受けていますね。その影響がゲームのビジュアル面のみにとどまらず、ゲーム プレイのメカニックやストーリーにまで影響を及ぼすようになったのはどのような経緯だったのでしょうか?

Peklar 氏:
これは話としてはほぼ逆で、最初にテーマとアイデアがあって、それがアート スタイルに影響を及ぼしています。このような分野で取り組むことになれば、ギーガーの芸術は Scorn に近いトピックやテーマを扱っているため、そこに踏み込むのは自然なことでした。

他のアーティストや作品で、ゲームの芸術面に影響を与えたものはありますか?

Peklar 氏:
芸術面で言えば、ズジスワフ・ベクシンスキーについても大いに言及すべき部分があると気づくかもしれません。彼の退廃的な構図の描き方は、ほかに並ぶものがありません。

ゲームのビジュアル面が持つ強い芸術性を表現するために、どのようなアプローチでプレイのメカニックを設計しましたか?

Peklar 氏:
それは、アートと同様です。ゲームのメカニックは、インタラクティブな形式で模索したいと思っていたテーマに基づいて制作しました。その方向性がいったん固まると、具体的なメカニックは有機的にできあがっていきました。

これまでにリリースされたビデオでは非常に不気味さがあるゲームが表現され、有機的な設計が特徴的です。また、光と影を活用したプレイが多く用いられています。このようなゲームの独特な設定を制作する上で、Unreal Engine はどのように役立ちましたか?

Peklar 氏:
どのようなエンジンも単なるツールにすぎません。最も重要なのはそれをどのように使うか、ということです。こうした有機的な形状に必要なポリゴン数を処理できたという点で、Unreal は確実に役立ちました。さまざまなライトパスがジオメトリとインタラクションし、隅々まで美しくライティングできました。
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武器のルック アンド フィールについては、どのように制作を進めましたか?ワールドや敵と同様に、武器も有機的な感じがします。

Peklar 氏:
アイデアを基にして、この世界を描いています。その上で、その世界の内部で動いているテクノロジーと同じものを、武器にも適用しました。このように構築すると、すべてが有機的にできあがっていきます。ゲーム内でそれらを作るプロセスに関して言えば、ゲーム内のあらゆる要素と同様に、設計プロセスはコンセプトから始まっています。Scorn でテクノロジーがどのように機能するかを検討し、次にそれを武器にどう適用できるかを検討したのです。実現したいことをコンセプト担当のアーティストと相談し、これを視覚的に描いて表現するという案に落ち着きました。このコンセプトが決定したら、3D チームで基本的なモデルを制作し、基本的なアニメーション リギングを作成し、ファーストパーソン視点での見え方について確認しました。これ以降は、当初のコンセプトが正確に反映されるまで調整を行っていきました。次のプロセスは、最も詳細なプロセスであるハイポリ モデリングです。それが完成すると、モデルはアニメーションおよび VFX チームに渡され、アセットの最終バージョンへと仕上げられました。

パズル、ゲート、エレベーターなどのインターフェース設計については、どのようにされたのですか?これらもやはり、非常に生き生きとしています。まるで生き物のようで、インタラクションするのが気持ち悪いくらいです。

Peklar 氏:
これは、武器と同様の原則に沿って制作しました。世界観を確立して構築した上で、その確立した原則をゲームのあらゆる要素に適用していったのです。Scorn は他とは非常に異なるスタイルを持ち、それがゲームのあらゆる要素に織り込まれています。そのため、パズルには同じ体験の続きが必要です。不快さの克服は、Scorn によってプレイヤーに植えつけられる本能的な精神的要素と言えます。迷路のような構造が自然にそのストーリーを伝え、プレイヤーが未知の世界を探索し、自らを取り巻く不気味な世界の理解を深めるように仕向けるのです。これこそが、ゲーム内のレベルやパズルにおいて私たちが狙っていたことです。
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ゲームのメイン キャラクターのデザインについて教えてください。肉体の増強や、生き延びて世界を探索するために肉体を増強する必要があった点などについては、肉体を通じて表現されたホラーのような強烈な印象がありますね。

Peklar 氏:
これは、テーマに沿って私たちの世界観を反映したものです。テクノロジーによって私たちは常に強化され、そのことに気づかないことさえ当たり前になっています。しかし、よく見てみると、テクノロジーによって増強されているものは至るところにあると気づくでしょう。また、将来はその傾向はさらに強くなります。同様の原理が、Scorn の世界にも当てはまります。こうした増強はこのゲームの社会にもありふれたものとなっています。

ゲームの見た目は圧倒的なものですが、そのダークなビジュアルに加えて、サウンド設計も同じくらい恐ろしく、魅力的なものになっています。ゲームのサウンド制作についてはどのように進められましたか?

Peklar 氏:
サウンドに関しては、ゲームのワールドを現実世界になるべく近づけようと決めていました。具体的には、チームで多数のフィールド レコーディングや実験を行い、幅広い有機的かつメカニカルなオーディオを制作しました。これによってゲーム内でプレイヤーが聞く、最終的なサウンドスケープが仕上がりました。
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Unreal Engine が克服するために役立った課題はありましたか?あった場合は、詳しく教えていただけますか?また、克服した方法について教えてください。

Peklar 氏:
Unreal は、3D ソフトウェアの背景知識があれば、簡単で直感的に利用できます。これにより、私たちは可能な限りの総力を挙げて、レベルの組み立てや装飾に取り組むことができました。広範囲に活用したのが Editor Utility Blueprint システムです。このシステムによって、チームのためにエディターが多数のカスタム ツールを作成しました。このツールはプロダクション プロセスの構築に役立ち、より多くのことをより短い時間で実現できました。マテリアル に始まり、大気エフェクト、ライティングなど、Scorn の世界の雰囲気を作り出すには多数の課題がありました。しかし、あらゆるシステムが連携し、簡単に操作に習熟できました。

Unreal Engine 5 で実現される新機能について、どのように考えられていますか?Unreal Engine のアップデートの具体的な要素で、利用してみたいものなどはあるでしょうか?

Peklar 氏:
Lumen は、最も画期的な機能だと感じています。ライトのベーキングを扱う必要がなくなれば、プロダクションのそれ以外のあらゆる部分で助かります。

お話を聞かせていただき、ありがとうございました。Ebb Software や Scorn についての詳細は、どこで確認できますか?

Peklar 氏:
Scorn の最新情報については、TwitterFacebookYouTube の各ソーシャル メディア チャンネルでご覧いただけます。

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