Image courtesy of Kanata Lab

34EVERLAST はコンポーザーの深いゲーム開発への道のりを示します

Mike Williams
大上祥平氏は Kanata Lab の創設者であり代表です。大上氏は 10 年以上作曲をメインに活動してきました。3 年前より Unreal Engine を用いてゲーム開発を始めました。
34EVERLAST はミュージック ビデオに命が吹き込まれたように感じます。主人公がランドスケープを引き裂くとき、カラフルなネオンの列がほとばしります。ヒーローが巨大な機械獣と戦うと、ハラハラするオペラのようなサウンドトラックと同期して、街全体が砕け崩れます。34EVERLAST の世界は 3 つの平行世界の間が交わる所に存在し、プレイヤーはその世界を救わなければなりません。ゲームには 30 種類のエンディングが用意され、何度も繰り返しプレイできてわずか 10 分で完了できます。

動作しているところを見れば、34EVERLASTKanata Lab のコンポーザー大上祥平氏によって開発されたことに納得するでしょう。大上氏は 2020 年にミュージシャンから初のデベロッパーに転身し、Unreal Engine を使用して体験を制作しています。彼の最初の作品は、Indie Game Incubator の目にとまるのに十分で、Epic MegaGrant を獲得しました。34EVERLAST は現在開発中で、今後 PC、PS4、PS5、Xbox Series X でリリースされる予定です。

大上氏に、音楽からゲーム開発への転身、34EVERLAST は何にインスピレーションを得たのか、Unreal Engine によって初めてのゲーム開発がどのように楽しくなったかについて伺いました。
 

Kanata Lab について教えてください。

Kanata Lab 代表の大上氏:
Vocaloid を用いた楽曲制作サークルとして約 10 年前に設立されました。3 年前からゲーム開発を始め、現在に至ります。

以前は作曲を中心に活動されていたとのことですが、どのような経緯でゲーム開発に携わるようになったのでしょうか。

大上氏:
もともと私はゲームのサウンドトラックが好きで制作する楽曲もそれを意識したものが多くありました。2020 年に「次のアルバムでは”架空のゲーム”のためのサウンドトラックを制作しよう」と考えて作曲を進めていたのですが、 どうせならアルバムに”自分の曲が流れる簡単なゲーム”を特典として同封しようと考えたのが ゲーム開発を始めたきっかけです。

34EVERLAST はどのような作品ですか?

大上氏:
「働く大人のための超濃縮エンターテインメント」をコンセプトに掲げた、 ”働く大人の忙しい毎日にちょうど良いサイズで寄り添い、大きな達成感と感動を与えてくれる”ゲームです。

1 プレイは短いのですがプレイヤー自身の発見や選択によって様々な変化を見せるレベルデザインやゲームシステムが、遊ぶ度に新たな驚きを与えてくれます。

またボスとの戦闘パートでは手に汗握る骨太の高速戦闘がメインとなりますが、アクションゲームが苦手な方でもボスを撃破できる仕掛けを多数用意しています。
Image courtesy of Kanata Lab
34EVERLAST を制作しようと思ったきっかけは何ですか?

大上氏:
小さいころからゲームに親しんでいたのですが、社会人になり毎日仕事に追われ AAA タイトルのような大きな作品をプレイしクリアまで辿り着くことが困難となりました。楽しみにしていた大作ゲームも買うだけ買って開封しない、起動してもすぐ止めてしまう、クリアまで続かないといったことが増え、 そんな消化不良のゲームがどんどん積み上がっていくことが悩みでした。

そこで、せっかくゲーム開発を始めるなら自分のように忙しく働く社会人でも「やりたいと思えるゲーム」、「クリアまでたどり着き達成感を味わえるゲーム」を作ろうと思い、 34EVERLAST の開発を始めました。

宣伝用資料によりますと、34EVERLAST は最短 10 分でクリア可能なゲームだと説明されています。この意義と、チームがこのデザインをどのようにイテレーションして作り上げたのか教えてください。

大上氏:
現在、私たちの周囲は楽しい事で溢れています、 しかし残念ながらそれらを楽しめる時間は限られています。

小さな隙間時間を様々なエンターテイメントが奪い合う中、私のゲームを選択してもらうには従来のゲームから大きく形を変えるべきだと考えました。そこで最短 10 分でクリアという目標を設定し、その中で充実感を高めていこうと結論付けました。34EVERLAST の目指す「コンパクトな AAA 風ゲーム」には大きな可能性があると考えています。

と色々とそれらしいことを言っていますが私自身がそのようなゲームをやりたかったのが一番の理由です。
Image courtesy of Kanata Lab
34EVERLAST による影響はありますか?

大上氏:
影響を受けたゲーム作品は沢山ありますが、代表的な作品ですと戦闘システムはニーアシリーズダークソウルシリーズメタルギアライジングなどの影響を受け、ゲームコンセプトは PlayStation 2 のガングレイヴに影響を受けました。

また絵作りにおいては映画からの影響が濃く、ザックスナイダー監督やクリストファーノーラン監督の作品からとても大きな影響を受けています。「ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーズカット」「インセプション」といった作品からの影響は特に強いです。

ワールドやレベルデザインへのアプローチについて教えてください。

大上氏:
私は映画が大好きです。「短い時間でリッチな体験」という点でも映画と本作は似ていると考えています。そう言った理由から私の大好きな映画的な演出やカメラワーク、絵作りをレベルデザインに多数取り入れています。

また映画の物語構成と同じようにステージを 3 幕構成とプロットポイントを意識したデザインにすることでゲームプレイに緩急を生み、興味と興奮を持続的に与えるよう工夫しています。

このゲームは直感的な操作で爽快なアクションを提供すると述べられています。このゲームの戦闘システムをどのように設計したのか、お聞かせください。

大上氏:
まず最初に複雑な戦闘システムですと長いチュートリアルを用いてシステムを説明をする必要があり、「短時間で楽しめる」という34EVERLAST のコンセプトと合わないと考えました。そこで極力簡単な操作、少ない情報量でプレイできるように戦闘システムを設計しました。(ちなみに私はいつも説明書を読まずチュートリアルも飛ばしてゲームをしています…)

次に既存のアクションゲームと同じようなボタン配置にすることで、ある程度アクションゲームをプレイしたことのあるプレイヤーであればすぐに操作を理解できるようにしています。そして”爽快なアクション”を達成するため高速で派手な戦闘を意識しつつ、戦闘リズムを損ねてしまう”ボスとの距離を詰める大きな時間”を解決するためワープ攻撃を実装しました。これによって高速移動をしながらもボスとの距離を一瞬で詰めることができ、激しい戦闘状態を保ち続けることに成功しました。
Image courtesy of Kanata Lab
34EVERLAST では時間の使い方も重要な要素です。プレイヤーは時間を遅くして攻撃したり、かわしたりすることができますが、その代償として各ワールドに残された時間全体が減少してしまいます。このシステムのコンセプトはどこから得たのですか?

大上氏:
「リスクを払って時間の流れに干渉する」というストーリー上で、最も重要なコンセプトをゲームプレイに落とし込むために実装しました。

一般的なゲームでの時間操作系の能力 (バレットタイムなど) はプレイヤーを含めた全ての時間の流れに影響しますが、 34EVERLAST ではプレイヤーだけはその能力から除外され通常通りのスピードで移動、攻撃することが可能です。この非常に強力で危険な能力をどのように使うかという駆け引きは、ゲームプレイとストーリーどちらに対しても緊張感と葛藤を与える役割を果たしています。

ある世界で雨を降らせると、別の世界の砂漠が森になるというように、ある世界でプレイヤーが行う行動が、他の世界の行き先に影響を与えるという、ユニークなアクションパズルシステムを採用しています。その仕組みと、これがアクション ゲームプレイをどのように強化するのか教えてください。

大上氏:
このゲームは 3 つの平行世界が舞台となっており、それらが折り重なるようにして存在しています。それぞれの世界は全く異なる景観をしていますが根元の部分では密接に繋がっており、それはストーリーを理解する点において非常に重要な要素となっています。アクションパズルはこの重要な設定をゲームプレイに落とし込み、プレイヤーに伝えるために実装しました。

ステージ内にはプレイヤーのアクションによって形態を変えたり、経過時間によって状態が変化するアクターが多数配置されており、 それら全てに”他世界に影響を及ぼすスイッチ”のような役割を与えることで複雑に絡み合った 3 つの平行世界を表現しています。

また短いゲームプレイを繰り返すゲームデザインにおいてはプレイヤーの「飽き」が天敵となります。そこでプレイヤーの「発見」や「選択」によってゲーム内の景色を次々と変化させ「プレイヤーの期待に応えてくれる環境」を用意することにより没入感や興味の維持を強化することを狙っています。
Image courtesy of Kanata Lab
30 種類のエンディングの可能性がある中で、真のエンディングは 1 つです。その真のエンディングを目指すプレイヤーを潜在的に導くために、ゲームをどのように設計されましたか?

大上氏:
プレイヤーを真のエンディングへ導くためには「魅力的なストーリー」を先が気になるよう「断片的に伝える」ことが重要だと考え、 その 2 つを達成できるようにゲーム全体を設計しています。また各ルートのエンディング後にはストーリー解読や新たなクリアルートへのヒントとなるような報酬を得ることが出来ます。さらに現在自分がどのようなルートをたどっているのか、分岐点はどこだったのかなどを確認できるフローチャートを実装する予定です。

Kanata Lab が持つ音楽的なバックグラウンドが 34EVERLAST の開発に及ぼした独特な点はありましたか?

大上氏:
ゲームを構成する要素の中で音楽は非常に重要なポジションにあるのですが、主にアクションゲームでは脇役に徹することが多いと感じています。楽曲制作を中心に活動してきた私にとってはその状況を何とかしたいという思いが強くありました。

そこで 34EVERLAST では音楽を主役に据えた「操作できるミュージックビデオ」というコンセプトの元、楽曲に合わせたレベルデザインや演出をたくさん実装しています。

本作の主題歌 34EVERLAST は、コンポーザーの Levereve 氏と NieR ReplicantNieR:Automata の楽曲を歌ったボーカリストの Emi Evans 氏が制作しています。Levereve 氏は 34EVERLAST の残りの音楽も担当しています。ミュージシャンとして、ご自身のゲームの音楽で他の人とのコラボレーションはどうでしたか?」

大上氏:
Levereve 氏の代表である JP 氏とは音楽制作をしていた頃から仲良くしてもらっていて、一緒にアルバムも制作しました。当初 34EVERLAST の楽曲は全て私が制作する予定だったのですが、ゲーム開発で時間が無くなってしまい、 今回は私が一番尊敬し信用している Levereve 氏に依頼させていただきました。

Levereve 氏の作る楽曲はいつも私の期待を上回るので とても満足しています。また Emi Evans 氏にも素晴らしい歌唱をしていただき本当に感謝しています。SCARLET MOON の皆さんにはとても丁寧に対応していただき、 ぜひまた依頼させていただきたいと考えています。

まだまだ未発表の楽曲があるのですが、 自分の創造した世界が他のアーティスト達によってより輝きを増すことにとても大きな興奮を感じています。
Image courtesy of Kanata Lab
34EVERLAST が Epic MegaGrant を受賞したのはどのような意味がありましたか?

大上氏:
まさか自分が受賞できるとは思ってもいなかったのでとても嬉しく、同時に大きな自信を得ることが出来ました。またそれ以上に 34EVERLAST をより良くして完成させなければならないという責任感が生まれました。がんばります!

34EVERLAST に Unreal Engine が適していたのはなぜですか?

大上氏:
実はゲーム開発を始めた当時、私には全くプログラミング経験がありませんでした。そんな私にとって視覚的にプログラミングが出来るブループリントという素晴らしい特徴を持つ Unreal Engine はまさに最高、最適なゲームエンジンでした。また開発初期の段階でも Unreal Engine の美しいグラフィックをすぐに実感することが出来ました。そのおかげでとても楽しく開発を続けられた点も適していたと思います。

34EVERLAST は、非常に鮮やかな VFX が特徴です。これには Niagara を活用されましたか?

大上氏:
ありがとうございます。はい。Unreal Engine マーケットプレイスで販売されているアセットを購入し自分のゲームに合うように調整して使用したり、チュートリアルを参考にしてゼロから制作し実装しています。Niagara にはとてもお世話になっています。
Image courtesy of Kanata Lab
新しいソロ デベロッパーとして、Unreal Engine のツールまたは機能で気に入ったものはありましたか?

大上氏:
前述しましたがやはりブループリントが一番気に入っています。プレイ中も今どこをプログラムが走っているか視覚的に確認でき、 まるで”ブループリント”というゲームで遊んでいるような感覚でゲーム開発が出来ています。とても楽しいです。

34EVERLAST について詳しく知るには、どこを見ればいいですか?

大上氏:
私の Twitter には最新ニュースや開発の進捗過程などの情報が随時アップされています。同様に YouTube公式ホームページにも動画や情報をアップしていきますのでご覧いただければと思います。

今年から来年にかけて大きな発表が沢山ありますのでぜひ楽しみにしていただければと思います! ありがとうございました!

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