カリフォルニア州サンフランシスコ発 – Marvel Ultimate Alliance の開発を担当した Raven Software 社のチームは、Unreal Engine 3 を使用した Singularity のプロトタイプをひと目見て魅了されてしまいました。彼らの作品 X-Men Origins: Wolverine (PC、Xbox 360、PlayStation 3) は、Hugh Jackman 主演の 20th Century Fox の映画の公開に合わせて5月1日にリリースされます。今年後半には Activision から Singularity のリリースが予定されていますが、同社が UE3 を使用したのはこのゲームが初めてでした。
「次世代ゲーム Marvel Ultimate Alliance の開発には苦労しましたが、Singularity を見たときは、『これはすごい、まさに私達が使いたい技術だ!』と思いました」と、X-Men Origins: Wolverine を担当した Raven Software 社のプロジェクト リーダー Dan Vondrak 氏は語ります。「最初は、三人称視点のシューティング ゲーム用のエンジンをどのようにしてアクション ゲーム用にするか、と悩みましたが、Marvel Ultimate Alliance の経験とそのコアとなる戦闘システムが役立ちました。これをすべて書き換えて Unreal に導入したところ、簡単に統合されました。必要なすべてを導入するまでに 6 か月かかりましたが、これは価値のある時間でした」
この新作アクション ゲームでは、Marvel の人気キャラクタ Wolverine をコントロールし、その能力や攻撃を駆使してコミックさながらのアクションを繰り広げます。このゲームは、映画公開よりずっと前に開発が始められていたのですが、Raven は、Fox そして Jackman と協力してその物語をゲーム化しました。しかしこのゲームには、コミックに登場する悪役、多彩なアクション、ゲーム独自の舞台設定が追加されており、オリジナル映画のストーリーを超えたインタラクティブなアドベンチャーに仕上がっています。
Vondrak 氏は、開発に UE3 を使用することによって、グラフィック担当者はほかのチームに先行して作業することができた、と語ります。このため、太陽の日差しが差し込む広大なジャングル、揺れ動く木々、水の揺らめきを表現することが可能になりました。
Vondrak 氏は、「彼らは、足元に立ち込める霧や、山頂に舞う雪などのディテールが加えられたアルカリ湖を制作しているようでした。Unreal を使用することによって、ゲームに深みを出すことができます。実際に、3 つの再生成レイヤーを持つ Wolverine モデルを作成することができました。骨格、筋肉、肌に加え、その上には衣服を着せていますが、これはすべて、Unreal のマテリアルとシェーダーを使用して可能になりました。そして、当社の優秀な技術担当者がさまざまな変更を加えて準備が整った Unreal は、さらにパワフルになりました」と語ります。
Vondrak 氏は、デザイナーは Matinee を活用し、オリジナルの場面や映画からの場面など、ゲーム用に大きな場面を各種作成したと話します。Matinee を使用することによって、チームは、移動するトラックや飛行するヘリコプターを含むアクション シーケンスを作成することができました。最終的なアニメーションはアニメーターによって制作されましたが、飛行中のヘリコプターに飛び乗る Wolverine のアクションなど、すべてを完璧な状態にするために Unreal が役立ちました。
Vondrak 氏は続けて、「Kismet の技術はとてもパワフルです。この技術を使ってこれまで Epic が Gears of War シリーズで実現してきたこと、そしてこの Wolverine を見れば、ジャンルを問わず、迫力ある戦いが共通していることがわかります。Kismet のおかげで、このような長いシーケンスをゲームに導入することができたため、非常に映画的な演出が可能になりました。Wolverine がヘリコプターからヘリコプターへとスカイダイビングしている場面などのシーンはすべて、当社のデザイナーが Kismet を使用して制作しました」と語ります。
Unreal の Matinee、Kismet、AI がすべて連動して完成した場面の例としては、Wolverine と、身長が 100 フィートもある Sentinel ロボットとの戦いが挙げられます。プレイヤーは、小さくもパワフルな Wolverine を操作して 3 本の爪でこのモンスターと戦いますが、その戦いは、最初は地上そして空中へと展開します。Vondrak 氏は、従来ではカット シーンとなるようなものも含め、すべてのシーケンスは Unreal のおかげでプレイ可能になったと述べています。
「Unreal Engine 3 は、とにかく利用価値が高いです」と、Wolverine を担当した Raven 社の上級技術アーティスト Doug Smith 氏は話します。「Wolverine の開発では、技術開発にあまり時間をかけずに、オリジナルに忠実な Wolverine ゲームを作る、というのが課題のひとつでした。Unreal のエンジンは、これを短時間で可能にする優れた基盤であり、成熟して完全に明確になったものを、実際にグラフィック担当者やデザイナーに渡す際の効果的な方法となりました。適切な方法で開発を行えば優れたグラフィックのゲームが完成することは理解していましたが、Unreal を使った作業はとても気に入りました。ほかの多くのチーム メンバーも、同じ考えだと思います」
Smith 氏は、Raven の Wolverine 開発チームは Unreal のシェーダーを最大限に活用していた、と語っています。Wolverine は、PS3、Xbox 360、PC に対応した成人向けゲームですが、このゲームのゴア システムは基本的にシェーダーです。
Smith 氏は、「Wolverine の内部には別のメッシュがありますが、銃弾で Wolverine の体に異なる形状の穴を開けて血を流させることができ、その傷口部分では肌の法線が押し出される様子を確認できます。滴る血液の境界部分では、法線が押し込まれるため、血液上にスペキュラのハイライトを見ることができます。その後、これらすべてがきれいに塞がりますが、この傷跡はすべてシェーダーになっています。このように、これは極めてパワフルですごい技術です」と語ります。
Raven では、チームのグラフィック担当者向けに、岩や樹木などの環境オブジェクトに誰でも雪を追加できる、雪のシェーダーを作成しました。このシェーダーでは、オブジェクトが環境内にどのように配置されているかを問わず、自動的に雪がオブジェクト上に正確に積もるようになっています。
Smith 氏は、「環境に配置するための丸太があったとしたら、それを配置した方法に応じて、雪が自動的に追加されます。これによって柔軟性が生まれ、グラフィック担当者は、正確なディテールを表現するためペイントややり直しに多くの時間を費やす心配をすることなく、非常にリアルで表現豊かな環境を思い通りに構築することができました」と述べます。
Raven は、プロジェクトを通じて Epic の Unreal Development Network を活用すると同時に、Singularity の開発チームが社内で行っていた作業も利用しました。
Smith 氏は、「彼らが当社の戦闘ノード システムをエンジンにインポートして取得できた専門技術は、すべての開発者にとって有益なものになったと思います。Sentinel の手の中に Wolverine がいる場面などのシーケンスには、複数のレイヤーのアニメーションが使用されていますが、ゲーム内の多数のアクション シーケンスすべてにおいて、当社の戦闘システムが確実に機能するようにする必要がありました。当社の技術担当者は、Epic に連絡してこのような変更をエンジンに追加するようリクエストしましたが、Epicの対応は素早く、すぐにこれが実現しました。もちろん、当社以外の開発者もこの恩恵を受けています」と語っています。
5月1日に、Activision から各種プラットフォーム対応の X-Men Origins: Wolverine がリリースされた際は、ゲーマーたちもこの恩恵を、そしてこのバーチャルな Wolverine に備わった、コミック同様の残忍さと強さを実感することになるでしょう。Unreal Engine 3 によって、これまでにないパワーでスーパーヒーローが大活躍します。