2018年10月31日

SpatialOS GDK が Unreal で利用可能になりました

作成 Paul Thomas

Unreal Engine 4 のための新たな SpatialOS Game Development Kit (GDK) が Improbable によってリリースされました。これにより、Unreal Engine 4 とともに SpatialOS プラットフォームを利用してマルチプレイヤー オンライン ゲームを作成、拡張できるようになりました。Unreal のためのこの SpatialOS GDK は、 Unreal Engine Marketplace から現在無料でダウンロード可能です。 

SpatialOS をまだよく知らない方のために説明すると、SpatialOS とは、単一サーバーによる制約を超越したゲームが作成できるプラットフォームです。従来のクライアント / サーバー型のアプローチでは実現不可能であった新たなゲームプレイを実装できるようになります。フルマネージドサービスとして、ゲームをグローバルにホスト、実行、拡張するために必要な処理をすべて実行できるため、制作側は面白さの追究に専念できます。

ということは、Unreal Engine を使ってマルチプレイヤー ゲームを作成する場合、この新たな Unreal 用 SpatialOS Game Development Kit を利用することによって、Unreal Engine のネットワーキング API を使いつつクライアント サーバー型アーキテクチャを分散型アーキテクチャに改変できることになります。さらに、ゲームは Improbable 社のグローバルなクラウド プラットフォームにホストできることになります。しかも、この方式は新たなゲームにも既存のゲームにも利用可能です。

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この新たな Unreal 用 SpatialOS GDK は本日 (注:2018年10月31日現在) リリースされました。SpatialOS と UE4 の本来のワークフローがシームレスに統合されることになり、Improbable の古い SDK は不要になります。
 
Unreal 用の SpatialOS GDK のプレスリリース版は、すでに、著名なゲーム デベロッパーたちによって使われています。Aaryn Flynn (BioWare の前ゼネラルマネージャー) は、Unreal Engine を使って Mass Effect 三部作のようなヒットを飛ばしてきました。現在は、北米地域の Improbable のゼネラルマネージャーとして、チームとともに Unreal Engine を使ってオリジナルのデモ的なゲーム コンテンツを制作しています。SpatialOS の他に類を見ない可能性を際立たせようとしているのです。

「デベロッパーというものは、自分たちの構想を実現可能にし、創造力を高めてくれるテクノロジーを望むものです」と Aaryn Flynn (BioWare の前ゼネラルマネージャー) は言います。「新たな SpatialOS GDK は Unreal Engine に内在する新たな可能性を解き放ちます。デベロッパーは、多数のゲームサーバーを連携させることによって、プレイヤーにとってはシームレスな一つのサーバーとして見えるように機能させることができます。」

「ゲームの構想をプロトタイプに落とし込み、イテレートを経てゲーム制作を成功させるためには、最高のツールが必要です」(Flynn 氏) 。「SpatialOS によってゲーム制作のあり方、ゲームのプレイのあり方は変わりつつあります。この GDK によって、既存のゲームと未来のゲームを開発するための道が切り開かれています。その道は、シンプルなマルチプレイヤーにも、野心的で壮大な作品にも通じる道です。」
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Improbable の努力により、慣れ親しんだ Unreal のセマンティクスを使って Unreal Server を互いに交信させ、単一サーバーによる計算パワー以上のものを手に入れることができるようになりました。より多くのプレイヤーとアクタ、ゲームプレイ システムをともなったゲームを制作できる扉が開かれたのです。

GDK で Improbable が特に注力したことは、Unreal Engine のユーザーが使い慣れたワークフローとネットワーキング API をそのまま維持することでした。新たに導入された、Unreal のネットワーキングを拡張するイディオムも UE4 的感覚に違わないものになりました。そのため、Unreal による即使用可能なネットワーキングの諸機能は GDK でも保持されます。たとえば、トランスフォームの同期、キャラクターの動きのコントローラー、クライアントサイドの予測機能などがそのまま使えます。さらに、使い慣れた Unreal Engine の開発ワークフローも変わらず有効です。Blueprint はそのまま機能し、GDK のイテレーション速度は標準の Unreal Engine と同等です。
 
SpatialOS GDK は新規プロジェクトにだけ役立つわけではありません。GDK は、トラブルなく移植できることに重点をおいて設計されているため、既存の Unreal Engine によるゲームを SpatialOS にデプロイすると、数ステップで動作させることができます。SpatialOS によるオンライン ゲームは、ホスティング、管理するのが容易になるとともに、ユーザーのフィードバックに基づいて素早く制限なく自在に成長させていくことが可能になります。
 
また、最初から SpatialOS で作成されたゲームなのか、移植されたゲームなのかにかかわらず、SpatialOS の高機能なメトリクスやログ、独自の World Inspector を利用して、ゲームのプロセスをライブで視覚化し、デバッグできます。
 
SpatialOS が備わっていれば、ゲームのマップは小規模な状態で開始し、プレイヤー数に応じて文字通り成長させていくことができます。内部的に必要となる演算パワーもそれにつれて SpatialOS が増強させていくことになります。このように技術的なインフラについて悩むことがないため、ゲームはアリーナシューティングからバトルロイヤル、オープンワールド MMO まで、少しだけ設計に注意してもらえばスムーズに移行させることが可能です。
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ゲームにはその種別に応じて固有のニーズがあります。ですから、必要な拡張を実現するには、レプリケーションの頻度と詳細度を微調整できることが非常に重要となります。
 
Josh Holmes (Midwinter Entertainment の共同設立者、Halo シリーズの前クリエイティブ ディレクター) は、Unreal Engine と SpatialOS を用いた「コーペティション」型シューティング ゲーム Scavengers の開発を率いています。
 
「Scavengers における私たちの目標は、さまざまな要素を結合して新しいタイプのゲーム体験を創出することにあります。たとえば、マップの拡張や、プレイヤー数、敵としての AI の数と高度化などを組み合わせていくのです。そのような目標をもった者にとっては、Unreal Engine と SpatialOS が必然の選択となります。Midwinter Entertainment は Improbable と強固なパートナーシップを結んでいるため、Unreal 用 SpatialOS GDK の開発について伝えることができます。GDK は、デベロッパーがどのようなタイプ、どのような規模のゲーム世界でも創造、サポートできるようにするという構想のもとに設計されています。なおかつ、Unreal Engine の馴染みのある操作性や使いやすさ、そのワークフローも損うことなく維持するという主旨も生かされています」(Holmes 氏)
 
Unreal GDK の技術面に関する詳細は、Improbable による SpatialOS のブログに訪れてください