2016-8-14

セガ・ゲームジャムでUE4の機能を活かした2タイトルが登場

作成 小野 憲史

経歴もスキルもまちまちな参加者が即席のチームを作り、同じテーマにもとづいて数十時間でゲームを開発する「ゲームジャム」。

そこで欠かせない存在が、Unreal Engine (UE) 4をはじめとしたゲームエンジンやミドルウェアです。

2016年7月16日から17日まで、約34時間で開催された「セガ・ゲームジャム」でもUE4を使用した2チームが参戦。

「美少女」をテーマに、ゾンビをカメラで撃退するアクションゲームと、HTC Viveを使用したVRゲームが作られました。

セガ・ゲームジャムはその名の通り、セガグループの有志によって2011年より開催されているゲームジャムで、今回で9回目を迎えます。業務ではなく「課外活動」という位置づけで、いわば大人のクラブ活動。

もっとも、普段顔を合わせることのない他企業・他部門のクリエイターとチームを組んだり、普段の業務から離れて自由にゲームを開発したりといった経験を通して、社内活性化やモチベーションアップにも繋がっているといいます。

今回の参加者はセガグループ各社や、グループ傘下のアトラスからの希望者、さらには来春の内定者2名などを含めた全39名。

当初は十数名からスタートした本ゲームジャムも、回数を重ねるごとに規模が拡大し、過去には非開発業務(総務など)からの参加もみられたほど。

開会式では参加者の投票とくじ引きという二段階選抜で、開発テーマが「美少女」に決定。8チームに分かれて開発がスタートし、クオリティの高いユニークなゲームが続々と完成しました。

チームメンバーのスキルが平均化するように、ゲームジャムでは申込み時に職種や希望などを各自が申請し、運営スタッフがそれを元にチーム編成を行うスタイルが主流です。今回も参加者の希望により、UE4を用いる特別チーム「カメ子さんチーム」が編成されました。また、HTC ViveによるVRゲーム開発専門チーム「チームVR紳士」も別途編成され、こちらも参加者の希望から、UE4が使用されることになりました。

カメラのフラッシュでゾンビを撃退する『Girls & Zombies』

「カメ子さん」チームが開発した『Girls & Zombies』は、周囲から迫り来るゾンビなどを、カメラのフラッシュを炊いて撃退しつつ、ヒロインをゴール地点まで誘導する一人称視点のアクションゲームです。ゾンビにはUE4のサンプルアセットでおなじみのロボットキャラクターを使用。ヒロインの3Dモデルには、アニメ『Hi☆sCoool! セハガール』で、過去に配布されたMMDモデル(ドリームキャスト)が使用されています。

ゲームを始めると少女が自動的に撮影会場の室内プールを移動し、出口に向かって歩き始めます。これに追いすがろうとするのが無数のゾンビたち。ゾンビは光に弱く、フラッシュを浴びせると倒せるものの、撮影枚数に限りがあります。また、出口からはカメコ(カメラ小僧)が登場し、少女の行く手を遮ります。プレイヤーは少女を撮影すると撮影枚数が増える不思議なカメラとレフ板を駆使して、ゾンビやカメコを撃退しつつ、出口へと誘導することになります。

本プロジェクトでチームリーダーをつとめたのは、セガ・ゲームジャムの運営スタッフの一人でもある、セガ・インタラクティブの石畑義文氏。『電脳戦機バーチャロン』など、さまざまな人気タイトルの開発を手がけたベテランエンジニアです。もっともゲーム業界をとりまく急速な変化にともない、数年前からゲームエンジンについても勉強を開始。今回もUE4の学習を深める上で良いタイミングと捉え、本チームに参加したと語りました。

「美少女」というキーワードから、撮影会というアイディアが生まれ、撮影することで幽霊のようなものから美少女を助けるという具合に発想を展開。石畑氏もUE4で、キャラクターのモーション制作に初挑戦しました。もっとも、チーム全体がUE4のビギナーだったこともあり、ゲームメカニクスの実装だけで予想以上に時間が費やされることに。特に複数のモーションをランダムで発生させる際のやり方が詰め切れず、心残りな結果になったと言います。

もっとも、一度覚えてしまえばBlueprintでロジックを組むのは、エンジニアの視点からみても、それほど問題がないことがわかったという石畑氏。「ノードベースなので他人に目で見て伝えやすく、お互いに教え合うのにも適しているように感じました」(石畑氏)。特にUE4のエディタ機能の一つである「サブレベル」を活用することで、アーティストとの共同作業が楽に進められた点が良かったと振り返ります。

またUE4で起こりがちなのがマージ問題。実際、過去のゲームジャムでもLevelBlueprintをチームメンバーで共有した結果、終盤で全体が巻き戻ってしまい、大変な目にあったといいます。そこで今回はメンバー間で、できるだけBlueprintを編集しないように注意して作業が進められました。「特にLevelBlueprintには手をつけないようにした上で、個々人のLevelを使用して作業を進め、本番用に配置するだけに留めました」(石畑氏)。

真の美少女を探し出してすくい上げる『美少女すくい』

一方、「美少女」というキーワードから、「美少女とスイカ割り」というアイディアを経て、「美少女を対象とした金魚すくい」、すなわち『美少女すくい』を開発したのが「チームVR紳士」。ビーチに出現する幻の美少女の中から「真の美少女」を見つけ出し、2分間という制限時間内でポイントを稼ぐのがゲームの目的です。前述の通りHTC Vive専用ゲームなので、ゲームを始めると四方八方から美少女が押し寄せてくるという、夢のパラダイス空間が体験できます。

真の美少女を見分けるには、美少女の声に耳を澄ませることが必用です。コントローラのAボタンを押して耳元に移動すると、3Dサウンド機能によって、真の美少女がいる方角から声が聞こえます。これを手がかりに移動して真の美少女の近くに移動し、両手で抱きつくようにして持ち上げれば「すくい上げ」が実行できます。抱きつく感覚が皆無なのが難点ですが、VR空間内で大量の美少女に囲まれる体験は強烈で、開発チームも思わず「作って良かった!」ともらしていました。

合計9人という大規模チームとなった「チームVR紳士」。その中でも中核的な役割を担ったのが、セガゲームスの並木勇人氏とセガ・インタラクティブの正慶敦氏です。どちらも入社1年目の新人コンビながら、大学が同窓でゲームジャムやVRゲームの開発経験も豊富。今回も並木氏がUE4での開発経験があったことと、正慶氏がUE4でのチーム開発に挑戦したいという理由から、UE4ベースでの開発に決定しました。

「UE4とHTC Viveを接続して、ものの30分でHMD出力とモーションコントローラ入力ができました」と語る並木氏。HTC ViveのPCセットアップにクセがあって時間がかかったものの、開発自体はスムーズに進行したといいます。集団作業を円滑に進めるうえで、バージョン管理ツールのsubversionも使用。互いにBlueprintが衝突しないように、担当オブジェクトとコミットするタイミングをチームで話し合いつつ、作業が進められました。

むしろ本作で大変だったのがキャラクターのモーション作成です。本作でも美少女のキャラクターには『Hi☆sCoool! セハガール』のキャラクター、ドリームキャスト・セガサターン・メガドライブの各MMDモデルが使用されています。しかしボーンが複雑すぎて、そのままでは使用できないことがわかり、企画が暗礁に乗り上げる一幕も。これをチームメンバーの一人が、わずか1日で変換スクリプトを作成して解決したのです。日常業務で鍛えられた高い技術力が遺憾なく発揮されました。

またデスクトップ上で見ている映像と、HTC Vive内で体験する映像に違いが発生しやすい点も、課題の一つでした。中でもポイントとなったのがカメラの高さで、UE4のデフォルトの設定のままでは、視点が高くなりすぎたのです。結局、HTC Viveを被ったり、脱いだりしながら、細かい修正を続けざるを得ず、想像以上に疲労することに。こうした問題は実際に作ってみてはじめてわかるもので、それが得られただけでも収穫だったと語られました。「次回は何かしらスマートなやり方を見つけたいですね」(並木氏)

参加者それぞれがさまざまな収穫を得た

かたやゲーム開発のベテランながら、UE4は勉強中で、中途半端な作り込みに留まった石畑氏。かたやUE4とVR開発の経験は豊富だが、ゲームクリエイターとしては一年生で、チームのベテランエンジニアに助けられたという並木氏。特にゲームジャムでは制作時間が極めて限定されているため、ゲームエンジンやミドルウェアの使いこなしが鍵を握るケースが多く、時としてベテランとビギナーの立場が逆転する現象が見られます。

もっとも、ゲームジャムは業務と異なり、「前のめりな失敗が奨励される」場所でもあります。そのためベテランのゲームエンジニアにとっては、UE4での開発に慣れる最適な機会でしょう。またゲーム開発にはUE4の使いこなし以外に、さまざまな落とし穴が存在します。これらを時間内で解決するには、開発者の全人格的な「人間力」が問われることに。ビギナーが人間力を鍛える上でも、ゲームジャムは良い機会だと言えるでしょう。

特にUE4はプログラミングスキルに乏しいゲームデザイナーやアーティストでも、手軽にプロトタイプが作れるツールという側面があり、ゲームジャムに向いたゲームエンジンだといえます。もっとも、ゲームエンジンの選択や利用は結局のところ、おもしろいゲームを作るための手段でしかありません。開発で得られる知見も人によってさまざまです。UE4を使用したチームメンバーそれぞれにとって、さまざまな収穫があったゲームジャムだったといえそうです。

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セガ・ハード・ガールズ公式 HP:http://shg.sega.jp/
公式twitter:アソビン教授(セガ・ハード・ガールズ) @SHG_Official
TVアニメ『Hi☆sCoool! セハガール』公式HP:http://shg.sega.jp/anime.html
(C)SEGA /セハガガ学園理事会

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