リアルタイム アニメーションが The Jolliest Elf にマジックをもたらす

北極のライアン・シークレストこと Mr.Jingles は、毎年オーディション番組の司会を務め、サンタクロースの助手であるエルフとトナカイのなかから、最も優れた才能を発掘しています。今年スポットライトを浴びることになったのは、サンタクロースのトナカイの群れのなかで最も小柄な Lil’ Rey でした。

こういった設定の The Jolliest Elf は、オリジナル脚本による 5 分間の短編アニメーションです。先月の感謝祭シーズンに、YouTube、Amazon Prime、Amazon Kids+ で初公開されました。

制作したのはイマーシブなメディアを扱うスタジオ TRICK 3D で、Epic MegaGrants の支援を受けています。Lil’ Rey のエピソードは、全 12 話からなるクリスマス スペシャル シリーズ アニメーション短編のパイロット版です。各話で新しい参加者が登場し、その物語とパフォーマンスが紹介されます。

視聴者が投票し、クリスマス直前に実施されるグランドフィナーレで勝者が発表されます。2021 年第 2 四半期にコンテスト全体が制作され、2021 年のホリデーシーズンでの公開を目指しています。

 
 
この番組は、TRICK 3D のライター兼ディレクター、Chad Eikhoff 氏の発案によるものです。Eikhoff 氏がエルフを題材とするのは、これが初めてではありません。以前にも、今では定番となったホリデーシーズンの作品、The Elf on the Shelf: An Elf’s Story を手がけたことがあります。

今回、Eikhoff 氏のチームは、Unreal Engine、Apple の iPhone による 3D フェイシャル キャプチャ、慣性式モーション キャプチャ、キーフレーム アニメーション、NVIDIA の最新の RTX によるレイ トレーシングを活用したリアルタイムの物理、ライティング、レンダリングを組み合わせて使用しました。

その結果できあがったリアルタイム アニメーション ワークフローは、高速で、柔軟性が高く、自由なものでした。Eikhoff 氏は次のように述べています。「このアプローチにはとても満足しています。私はアニメーターを支援することを重視していて、アニメーションのプロセスを新しいものにするにあたっては、アニメーターのビジョンをより速く、より明確に実現することに力を注いでいます」
Image courtesy of TRICK 3D

リアルタイム テクノロジーによる超高速のアニメーション制作

TRICK 3D は、2017 年に VR エクスペリエンス Zayden’s Wish を Make-A-Wish America のために制作して以来、Unreal Engine を試し続けてきました。

TRICK 3D はその後、リアルタイム アニメーション パイプラインへの移行プランを練ってきました。このように、コストの低減、タイムラインの短縮、クリエイティブの選択肢の拡大のために Unreal Engine のテクノロジーを利用するスタジオは増加しつつあります。

The Jolliest Elf で新しいリアルタイム パイプラインに全面的に移行した TRICK 3D のチームは、コンセプトについてどのように理解してもらうかという課題にすぐ直面しました。「この番組を売り込むときの問題点の 1 つに、Unreal Engine でしか使えない機能に大きく依存しているということがあります。アニメーションによるコンテスト型のリアリティ ショーというコンセプトをスケジュール通りに実現するために、リアルタイムの処理とアニメーションの技術が必要でした。また、これまでなかったようなものなので、イメージしてもらうことも困難でした」と Eikhoff 氏は述べています。
Image courtesy of TRICK 3D
そこで役に立ったのが Epic MegaGrants です。Epic MegaGrants は Epic による資金援助で、Unreal Engine を使って作られたクリエイティブで注目に値する革新的なプロジェクト、またはオープンソースの 3D グラフィックス エコシステムを強化するプロジェクトを対象とします。MegaGrants によって、TRICK 3D はパイロット版のエピソードを作成し、その高品質なビジュアルを示すとともに、エピソードを信じ難いほど短期間で制作可能であると実証することができました。

リアルタイム テクノロジーは、厳しいスケジュールで作品を完成させるためにチームにとって不可欠でした。数時間から数日で完成品をエクスポートする必要がありました。従来はレンダリングと合成をすべて完了するために数週間かかることもありました。Eikhoff 氏は次のように述べています。「Unreal によって、最終的なビジュアルの開発をセットアップし、完成品のためにアニメーションを加える作業を非常に迅速に行えるようになりました。Unreal を使うことで、レンダリングと合成は基本的に必要なくなりました。ディレクターとして、『ショット』ではなく『世界』のコンテキストで作業を行えるようになりました」
Image courtesy of TRICK 3D

iPhone によるフェイシャル キャプチャ

このプロジェクトでは、Unreal Engine の最先端のリアルタイム機能がいくつも利用されました。「来年に完全なシリーズとしてこの番組を作る準備として、強化されたアニメーション パイプラインが十分なものであることを実証する必要がありました。そのなかには、モバイルでのモーション キャプチャと iPhone によるフェイシャル キャプチャが含まれていました」と Eikhoff 氏は述べています。

パイプラインを欠点がなく高速かつ効率的なものにするために、チームは iPhone で Unreal の Live Link Face アプリを使い、それをモデルのブレンド シェイプに適用するカスタムの Maya スクリプトを作成しました。「プロセスはとてもシンプルなものになったので、すばらしい才能の持ち主である 9 歳のラッパー、Mac Sauce は、父親の車の後部座席でパフォーマンスをキャプチャできました」と Eikhoff 氏は述べています。

カンザスシティの 9 歳のラッパー、Macyn “Mac Sauce” McMillian が、若いトナカイ MC Lil’ Rey の声を演じています。

 

チームのメンバーや外部の人材が、場所を問わず、自宅からでもモーション キャプチャ スーツやフェイシャル キャプチャ テクノロジーを使えるようになったことで、まったく新しい形の映像制作が可能になりました。Eikhoff 氏は次のように述べています。「具体的には 2 つのことが可能になりました。まず、アニメーションで個々の表現をより速く作れるようになりました。次に、より広範囲でアクセスしやすい形でのコラボレーションが可能になりました」

「説明しましょう。1 つ目の点については、私かアニメーターがモーション キャプチャ スーツを着て、iPhone を使ってキャプチャし、アイデアを練ると、ソフトウェアのコントローラだけを使う場合よりもずっと速く仕事が進みます。2 つ目の点については、声を取り込んでコラボレーションするために同様のツールを提供できます。そしてその相手は、ソフトウェアやハードウェアの専門家である必要はありません。Lil’ Rey のパフォーマンスは、遠く離れた場所にいる 9 歳の女の子が、父親の iPhone でキャプチャしたものです」

ほかにも、Unreal Engine のリアルタイム レイ トレーシングファーのためのグルーム システム、実写のコンテスト番組を模したカメラ システムをセットアップするためのシーケンサーを使いました。Eikhoff 氏は次のように述べています。「特に気に入ったのはシーケンサーです。3 次元のビデオ エディターのようなもので、似たものをほかには知りません。この作品は本当に Unreal なしでは作成できませんでした。セット、キャラクター、アニメーション、ファー、視覚効果まで、番組のすべてが、ラップトップの Unreal から出力されたプロジェクト ファイルに含まれています」
Image courtesy of TRICK 3D
チームでは、Maya でモデルを作成し、アニメーションを適用してから、Alembic ファイルをエクスポートして Unreal Engine に取り込みました。いったんモデルとキャラクターのアニメーションを Unreal Engine に取り込んでからは、すべてが Unreal Engine 内にあり続けました。「最後に Premiere にエクスポートしていくつか簡単な編集を行いましたが、追加の合成や色補正は行っていません。The Jolliest Elf の映像としてご覧いただくのは、Unreal から出力されたままのものです」と Eikhoff 氏は述べています。
 

柔軟なワークフローのためのリアルタイム テクノロジー

TRICK 3D は、リアルタイム テクノロジーをアニメーション ワークフローの根幹としたことで、高い柔軟性を手に入れました。「アニメーションは融通の利かないプロセスで、ストーリーに結び付くクリエイティブの大半は、最終的なフレームを目にする前に固定する必要があります。リアルタイム テクノロジーのおかげで、私はクリエイターとして判断の結果をずっと速く確認できるようになりました。また、アーティストは、各自の作業が全体にどう当てはまるのか、イテレーションを重ねるプロセスの一部として確認できるようになりました」と Eikhoff 氏は述べています。

映画業界やテレビ業界の多くのスタジオと同様に、今年の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、TRICK 3D はチームのコラボレーションのあり方を見直す必要に迫られました。The Jolliest Elf の制作は、COVID-19 の影響がちょうど生じ始めたころに開始されましたが、TRICK 3D はリアルタイム ワークフローによって難局を乗り切ることができました。「少しやり方を変えて、バーチャル スタジオという考え方を全面的に取り入れることにしました」と Eikhoff 氏は述べています。 

TRICK 3D はすべてのサーバー インフラストラクチャをクラウドに移行し、Unreal Engine のソース コントロールを活用しました。これによって、チームは世界中から簡単にファイルを共有できました。Eikhoff 氏は次のように述べています。「Unreal のおかげで、チームが同じプロジェクトについて作業を進め、すべての変更を 1 つのマスター プロジェクトに毎日適用することができました。チームの成果が定期的に 1 か所に集まってくるのを見ると力付けられました」
Image courtesy of TRICK 3D
リモートでのコラボレーションを可能にするセットアップを手に入れた TRICK 3D は、ロックダウンの影響で自宅から働くことを強いられていたアニメーターを集めることができました。そして、The Jolliest Elf のアニメーション スーパーバイザー、Tony Plett 氏 (ジュラシック・ワールドリロ・アンド・スティッチ) と、クリエイティブ プロデューサー Art David 氏 (マトリックスサイン) が参加することになりました。TRICK 3D のスタジオ責任者、Stacy Shade 氏は次のように述べています。「新型コロナウイルスの影響で、普段であれば参加してもらえなかったであろうベテランを何人か招いて、この作品のために時間を割いてもらうことができました」

COVID-19 が遠い記憶となっても、TRICK 3D は Unreal Engine で経験したリモート作業の機能を活用し続けることになるでしょう。Eikhoff 氏は次のように述べています。「TRICK 3D を創業したとき、バーチャル スタジオを用意して世界中のアーティストと柔軟に協力して働くということを考えていました。The Jolliest Elf のために Unreal を使って構築したパイプラインはそれを現実とするものです。チームが特定の機会で実際に集まるのはすばらしいことでしょう。しかし、新しいバーチャル スタジオのセットアップは拡張性と効率にとても優れていて、ただ本当に楽しいものです!」
Image courtesy of TRICK 3D
The Jolliest Elf で試した新しいリアルタイム アニメーション パイプラインは、TRICK 3D にとっては始まりに過ぎません。TRICK 3D は、Unreal Engine の機能を活用する複数のアニメーション番組の制作を予定しています。

世界中から人材を集められるようになったので、Eikhoff 氏は新しい人々の参加を心待ちにしています。「このパイプラインによって、幅広いコラボレーションが可能になりました。才能あるクリエイターとつながる機会をいつも求めています。ご連絡をお待ちしています」

TRICK 3D と仕事をすることにご関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。 

    Unreal Engine を今すぐ入手しましょう!

    世界で最もオープンで高度な制作プラットフォームを入手しましょう
    Unreal Engine はそのままでフル機能と完全なソースコードアクセスを提供し制作準備ができています。