July 6, 2016

オックスフォード図書館のシーン制作

作成 Aiko Shinohara

80lvという海外のデジタルアーティストを特集したサイトで、日本人アーティストの篠原愛子さんがUE4を使って製作されたシーンが特集されていましたので、本ブログでも取り扱わせていただくことになりました。

元の記事はこちらになります。

自己紹介

私は専門学校で1年間CGを学び、それからゲーム業界で10年ほど働いています。初めは制作プロダクションで外注として様々な仕事を5年間ほどおこないました。クライアントの企業に出向し、開発の中で制作する機会も多くあり、Street Fighter 4, Bayonetta, Vanquish, final fantasy 零式(PSP版)などの背景を制作しました。その後サイバーコネクトツー、プラチナゲームズに入社し、ScaleBoundの開発初期段階に参加しました。今はフリーランスとして働いています。

サイバーコネクトツーとプラチナゲームズでは、背景アーティストでありながら、マネジメントや技術検証を行うことがおおく、ほとんど制作を行っていませんでした。しかし、開発の中でワークフローやパイプラインを構築する立場にいたので、これまでの知識を生かして自分の作品を作りたいと思いました。

図書館の背景について

私は会社で働いていた間にポートフォリオとして公開できる作品を作ることができなかったので、開発を通して得た知識を使って自分のアートワークを作成したいと作品の制作を開始しました。

制作の一番の目的はポートフォリオとして出せるものを作るということです。


また、SubstanceDesigner&Painterを使った最新のワークフローを自分の中で確立させることも目的としました。

アート的な部分で自分のスキルに自信がなかったので、友人であるコンセプトアーティストのYap Kun Rongに協力をお願いしました。彼とはプラチナゲームズで同じプロジェクトで働いていたので、彼をとても信頼していました。
彼は快くこの依頼を受けてくれたので、一緒にどのようなものを制作していくか考えました。


 題材を決めるときに重要視したのが完成できる題材を選ぶことです。彼にコンセプトアートを描いてもらい作成することも考えましたが、オリジナルデザインより実在するものをベースに作成してく方が難易度は高くありません。彼には必要なものがあれば描いてもらうようにし、それ以外は写真をベースにイメージを固めていくことにしました。

シーンのモックについて話してください。なんのソフトを使用しましたか?シーンの要素を作成するのにどのようなアプローチをとりましたか?

図書館のシーンのレンダリングはUE4,
モデリングはMayaとZbrush,
テクスチャはSubstanceをメインで使用し、デザインなどを作成するときにPhotoshopを時々使用しています。

 まずこの図書館のシーンはベースとなるイメージの写真があります。

これはBodleian Libraries University of Oxfordの写真です。この写真を見たときにこの雰囲気をベースに制作しようと決めました。他にも様々な図書館の画像を集め、装飾や構造などを考えながらイメージをさらに固めていきました。

 集めた資料を参考にMayaでホワイトボックスを作成していきました。モジュラーアセットを作成し、Maya上で配置して空間を制作していきます。この段階ではあまり細かくモジュラーアセットを分けずに柱、床、本棚程度の機能的な単位で分けて作成し、インスタンスで配置していきます。Mayaで組んだメッシュすべてを一つのFBXで書き出し、UE4へインポートしてから軽くライティングを当てて空間のサイズが妥当かどうか、ヒューマンスケールに対して適正かどうかの判断をしました。

Mayaで作成したホワイトボックス

 

少し調整したら問題ないことが分かったので、パーツ事にUE4にインポートし、同様の空間をUE4で組んでいきました。この段階で配置しやすい単位にモジュラーアセットをさらに調整していきます。

 そこからシーンに必要なプロップのブロックアウトを作成しさらにイメージを固めていきます。題材として図書館と決めていましたが、細かい時代設定などはまだ固まっていませんでした。モックがある程度出来上がった段階でYapと話し合い、このシーンは1950年代ごろに設定することにしました。この設定を決めたことで照明や机の上に配置してある小物などは焦点を絞って資料を探すことができました。

UE4でのホワイトボックス

 

ホワイトボックスの段階ではディテールがあまりなく全体の情報密度のバランスがわかりにくかったので、グレイボックスの段階でメッシュにディテールを追加して全体の密度を上げていきました。柱やアーチ部分に凹凸が入ることで、そこに影が落ちるようになります。これでこのシーンの印象がよくなり、完成のイメージが見えてくるようになりました。

 全体の雰囲気がこれで固まったと思ったのでアセットの制作を開始しました。

グレイボックスの状態

 このときに私は一つ失敗をしていました。グレイボックスの段階でメッシュにもう少し正確なテクスチャの色を割り当てておくべきだったと今は思います。画像を見てわかるようにほとんどのメッシュに茶色を割り当てていましたが、実際に作成したテクスチャの色はもっとダークです。UE4のライティングはBaseColorの色が大きく影響します。BaseColorが明るければ間接光の影響でシーンは明るく、暗ければシーンも暗くなります。私は早く制作がしたかったのでこの工程を適当にすましてしまいました。

その結果、テクスチャが入っていったときにシーンの印象が変わっていきました。グレイボックスの段階でもう少し正確なテクスチャの色を割り当てておく、もしくはSubstancePainterなどを使って簡易でもテクスチャを割り当てておくということをしておく方が安心して制作を進めることができます。また、より早い段階で完成の印象を確認することができるので必要な手順であったと思っています。


どのように3Dモデルを作成しましたか?いくつの要素を作らなければならなかったですか?どのようにアセットらを最適化したのですか?

種類を増やせばそれだけ雰囲気づくりをすることができますが、必要以上に制作をすることは避けたかったので必要な要素を洗い出すために特定の構図を決めて、それに合わせて必要なものを作成することにしました。

グレイボックスからある程度制作が進むと足りない要素が見えてきます。そこで完成に向けて必要な要素の洗い出しを行うことにしました。

この2枚の画像は洗い出しを行う数日前と後のショットです。

簡単に実装でき、絵を完成に近づける要素を先に追加しました(例えば金色の文字や、本をすべて本棚に入れる、天井に緑色のパネルを追加するなど)。それでも足りないものを追加のアセットとして制作しています。また、DirectionalLightの向きも少し調整しました。この一連の作業はYapと一緒にお互いに意見を言いながら行いました。彼からのアドバイスは非常に的確で、構図に合わせて絵のポイントとなるものを指示してくれました。

上:調整作業前の状態 下:調整作業後


次に動画用のカメラワークを決め、カメラに合わせてアセットの配置を行いました。
カメラからのアングルのみクオリティを上げていくことに専念することができるため、すべてを作りこむ必要はなくなりました。

このシーンはゲームとして作成していたものではないのでシーン全体を軽量化するような最適化はほとんど行いませんでしたが、効率的に制作できるように心がけていました。

マテリアルはマスターマテリアルを作成し、ほとんどのアセットで使用しています。
リフレクションに変化を与えるためにノーマルマップに雲模様のゆがみを追加したこと以外変わったことは何もしていません。

使用したマスターマテリアルの処理

図書館なので書籍が大量に配置されているわけですが、本棚に配置されている本のメッシュデータは2種類のみです。本のデザインと色をマテリアルで変更できるようになっており、これでバリエーションがあるように見せています。

作成した本を配置するBlueprint

私はBlueprintを組む経験が浅く、作成するのに時間はかかりましたが、配置する作業コストは非常に少なく、簡単に様々なパターンで配置することが可能になりました。

 ブループリント内ではInstanced Staticmeshを使用することでシーン内のドローコールを抑えることができ、エディタでの操作が重くなるという問題もなく大量の本を配置することができました。

ランダム感を出すために本の厚さ、配置の位置などがランダムになるようにしています。

 本で使用しているマテリアルにメッシュの位置情報などから色のバリエーションを作成する処理を組んでいたので、ブループリントからパラメータをいじれるようにし、色のバリエーションをコントロールできるようにしています。これにより本の色だけではなく、1冊ごとの色の違い、本のデザインの切り替えが行えるようになっています。


アセットについて

シーンを見てわかると思いますが、この図書館の中に複雑な構造を持つアセットはありません。そのため、ほとんどのアセットのハイモデルはMayaで完結することができました。細かいディテールはすべてSubstanceで追加することができるのでハイモデルは形状を制作するだけで済みました。 Maya