アンリアルエンジンは元々ゲーム開発の分野において評価を得てきましたが、それ以来、多種多様なデジタルな試みの心強い味方でもあると証明してきました。この一端がカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、Zoic Studios' が見せたライブ パフォーマンスと VFX を融合です。
「Zoic Studios」は、米国・カルバーシティとカナダ・バンクーバーにオフィスを持つ視覚エフェクトを専門とする会社。その仕事ぶりは、映画 (「リミットレス」、「The Grey 凍える太陽」、「プレミアム・ラッシュ」)や音楽 PV (Imagine Dragons - 「It's Time」)、テレビ (「Arrow/アロー」、「フォーリング スカイズ」) など多岐にわたるメディアで見ることができます。ですがカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルから請けた仕事は、アンリアルエンジン 4 を使ったまったく異なるスタイルのプロジェクトだったのでした。
Zoic Studios の目標は、クリエイティブ ディレクター Juan Woodbury 氏のコンセプトに基づき、美麗な炎ときらめく氷、そして完全に人間の動きによってリアルタイム制御されたキメラを、二階建てのビルほどの画面で動かすことでした。
プロジェクトは他にない困難があったものの、それについてクリエイティブ テクニカル ディレクター Paulus Bannick さんはこう話します。「アンリアルエンジン 4 のプログラム実行の早さのおかげで、プロジェクトにかかった時間はほんの少しで済みました。ブループリント システムを活用することで、私たちがキャラクター作成の途中で直面したさまざまな問題に対し、色々なアプローチを使ったプロトタイプを用意することができたんです」
アンリアルエンジン 4 のカスタマイズ可能な柔軟性がこのプロジェクトを実現できた原動力の一つでした。Zoic Studios は、ダンサーが身に着けている XSens MVN スーツからワイヤレスで送信されるモーション キャプチャ データを、キメラのアニメーションへと変換し、特定のジェスチャーで驚異のパーティクル エフェクトを発する、という作業を全てリアルタイムで行わなければならなかったのです。
ですが制作チームは、彼らが別プロジェクトのプロトタイプとして開発したソフトウェアに解決策を見出すことができました。そこからカスタム アニメーション グラフノードを出力するプラグインを楽に作成し、さらにはアンリアルエンジン 4 の汎用性の高いプラグイン システムのおかげでショーの直前でもコードやブループリントを見直すことができました。
「フェスティバルの出席者の皆さんから発せられる反応は見てて驚きましたよ」と Bannick さんは言います。「毎晩 20 分間のセッションを 3 回行ったのですが、ダンサーが初めて出て行くと、キャラクターが彼女の動作を真似始めると、みんなの視線は画面一点なんです。多くの人はこれがどういう仕組みなのか不思議なようで、こんな物を見たのは初めてだったのは明らかでした」
Bannink さんは、レンダリング品質こそがアンリアルエンジン 4 のもっとも大きな特徴であると指摘しました。「私たちが扱っていた「氷」や「炎」などのコンセプトは、それぞれでリアルタイムな環境で動作させるには大量のプロセスが必要となるんです。でもアンリアルエンジン 4 のレンダリング品質と速さは、必要なエフェクトを作成しつつも毎秒 30 フレームのフレームレートを維持する上で必要不可欠でした」
エフェクト満載のパフォーマンスの見た目と滑らかさの多くは、アンリアルエンジン 4 搭載の VFX エディタ「カスケード」によるものでした。カスケードは GPU ベースの低コスト システムで数百万ものパーティクルをシミュレートできるだけでなく、スタイル化したエフェクトにベクター フィールドやライト放出、物理演算などを加える統合型ソリューションになっています。
「このプロジェクトのためのビジュアルで、カスケードが大きな役割を果たしてくれました」と Bannick さん。「炎から凍った煙から氷の結晶まで、パーティクル エフェクトに頼っていた所が大きかったですからね。カスケードのベクター フィールド機能はぴったりの見た目を得るためには不可欠でした。特に「炎のキメラ」のキャラクターがそうですね。キャラクターは常時画面上にいるので、ダンサーがごく繊細な動きをしていう中でも炎を動かし続けるためには、ベクター フィールドを活用していました」
もちろん、どのパフォーマンスにもちょっとした躓きはつきもの。アンリアルエンジン 4 の視覚スクリプト ツール「ブループリント」は、元々デザイナーにコード作成の必要なく、素早く簡単に利用可能なコンテンツをビルドするため道具なのですが、Zoic Studios はライブ カメラ制御に問題が発生したとき、この機能説明を文字通り実践することとなりました。
「最初のセッションが終わった後、構成の中で制御が 1 レベル欠けていることに気づいたんです。次のセッションの開始まで 1 時間ほどだったので、私はエディターを開き、ダンサーがステージに戻ってくるまでにブループリントに制御を 1 つ追加し、構成をテストして、ゲームの新たなバージョンをパッケージ化できたんです。それも周囲で大量の音と光とパーティーの混沌が巻き起こってる中でです。私にしてみれば、これはアンリアルエンジン 4 の開発プラットフォームとしての強さのこれ以上に無い証明だと思います」
アンリアルエンジン 4 を使ってみた体験についてお聞きしてみると、Bannink さんはこう言われました。「今後のプロジェクトでは間違いなくアンリアルエンジン 4 を使っていくつもりですし、今のところ、その潜在能力のほんの表面しか使えていない気がしますよ」
Zoic Studios のさらに詳しい情報については、http://www.zoicstudios.com/ と彼らのツイッターアカウント「@ZoicStudios」からフォローできます。