2019年5月6日

Microsoft Build: Epic Games、HoloLens 2 のためにアポロ11号の月面着陸ミッションを Unreal Engine 4 で再現

作成 Dana Cowley

(付記) アポロ11号のデモは、Microsoft Build の壇上で実演することになっていたものです。しかし、予期しない技術上の問題が現場で発生したために、ライブによるこのショーケースは延期になりました。私たちは、本日壇上でアポロ11号の経験をお見せすることはできませんでしたが、HoloLens 2 を使って、これまでなら不可能であったまったく新しいやり方で物語を知り共有する可能性について皆様にお知らせできることに感激しています。

エンターテイメント、ビジュアライゼーション、デザイン、製造、教育などさまざまな分野にまたがる創造的なコミュニティは、Unreal Engine が HoloLens 2 をネイティブにサポートすることを心待ちにしています (Epic は、5月末までにこのサポートを公開することを正式発表しています)。Microsoft Build にあたり Unreal Engine チームは、アポロ11号月面着陸成功 50 周年を記念して、同ミッションのインタラクティブなビジュアライゼーションの発表を行いました。

ILM でチーフ クリエイティブ オフィサーを務める John Knoll 氏と、宇宙歴史学者にして A Man on the Moon の著者である Andrew Chaikin 氏が、マルチユーザーによる HoloLens 2 のデモを実施しました。これは、極めて精細なディテールを凝らして 1969年の歴史的偉業を再現したものです。このデモをご覧になると、将来、スマートフォンを使ってメールをチェックするのと同じくらい簡単に、ヘッドセットを使ってハイクオリティな 3D コンテンツを操作できるコンピューティング時代の到来が垣間見えるはずです。
ILM でチーフ クリエイティブ オフィサーを務める John Knoll 氏と『A Man on the Moon』を著した宇宙歴史学者の Andrew Chaikin 氏 (5月5日のリハーサルにて)

アポロ11号の月面着陸ミッションにはさまざまな要素が絡んでいます。しかし、迫真のデモを見ることにより、それらを俯瞰的に理解することができます。たとえば、発射そのものや、打ち上げロケットの Saturn V の精巧なモデル、月面着陸船の細部にいたるまでの再現、ミッションのデータと映像から再構成されたアームストロング船長の月面での第一歩など、さまざまな局面を目の当たりに体験することができます。ぜひとも注目すべき部分は、他の表現方法ではこれほどのディテールをともなって伝えることが不可能な Saturn V の 3 段ロケット切り離しの部分と、「フォルムは機能に従う」を体現しているイーグル着陸船のデザイン、そしてその着陸船が月面に降下する際のスリリングな場面です。

「HoloLens のもつパワーと Azure のもつパワーを組み合わせると、私たちのパートナーは変革を巻き起こすことが可能なソリューションを実現できます。自動車業界、製造業、建築、医療など多岐にわたる分野で活躍する私たちの顧客は、3D コンテンツを高精度かつ高詳細をともなって表現しなければなりません」と話すのはマイクロソフトでクラウドおよび AI グループのテクニカルフェローを務める Alex Kipman 氏です。「Epic は、ハイポリゴンによるコンテンツを欠落させることなく直接 HoloLens に流し込む方法を示してくれました。Unreal Engine によって HoloLens 2 は限りないディテールをもつホログラムを表示できるようになったのです。これは、エッジ コンピュートとレンダリングだけで実現できることを遥かに超えています。」
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デモで表示されているビジュアルは、ネットワークに接続されている PC に置かれた Unreal Engine 4.22 を使って、Azure Spatial Anchors を利用している 2 台の HoloLens 2 デバイスにワイヤレスで流し込まれています。それによって、Knoll と Chaikin は同じ体験をすることができるようになります。この様子からは、フォトリアルなソーシャル MR の経験がもつ可能性が垣間見えます。なぜなら、2 人のプレゼンテーターが同じ環境で協力しながら、同じホログラムを同じ空間で操作しつつ、簡単でシームレスなコミュニケーションが展開されているのですから。ただし、実際は非常に複雑なことが行われているのです。

また、HoloLens 2 には、直感的なインタラクションが可能であるという長所があります。デモでは、この長所が利用されています。ユーザーは、自然に頭や手を動かし、目の前にあるホログラムを触ったり操作したりできます。たとえば、両手を合わせてから押し出すようにして離すと、Saturn V ロケットの段が分離して個別のユニットとなる様子を見ることができます。
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最後になりますが、Unreal Engine 4 は Holographic Remoting をサポートしています。そのため、ハイエンド PC によるグラフィックスを HoloLens デバイスに流し込むことが可能になります。Apollo 11 のデモでも、物理ベースのレンダリング環境で 1500万という圧倒的多数のポリゴンが使われ、同時に、完全に動的なライティングとシャドウ、マルチレイヤーのマテリアル、ボリュームメトリック エフェクトが利用されていたのです。