Electronic Arts の Los Angeles スタジオ (EALA) は、長い開発期間を経て、第二次世界大戦を舞台にした、大人気のシューティング シリーズをリリースしました。Steven Spielberg が映画 Saving Private Ryan の撮影後にアイデアを提供した、オリジナルの Medal of Honor は、1999年にリリースされています。次世代ゲーム機 (Xbox 360 と PlayStation 3) で初となるこの最新版 Medal of Honor Airborneは、2007年に発売されました。
PC 版もリリースされたこのゲームの開発にあたって EALA では、Epic Games の Unreal Engine 3 の技術を採用することを決定しました。EALA の技術ディレクターを務める Mark Dochtermann 氏によると、利用する技術の変更はかなり大きな課題だったようです。
「ゲームは、フィクション、デザイン、技術で成り立っています。それぞれの要素がお互いを形作っているため、突然そのバランスが崩れると、機能しなくなってしまう部分が発生します。Airborne の開発に UE3 の採用を決定した時は、それまでの想定の多くを見直す必要があるということはわかっていました。しかし幸いなことに、この ゲーム開発ツール と技術のおかげでゲームが実現し、最終的には、3 要素をバランスよく調節してすばらしいゲームが完成しました。UE3 が、優れた FPS に長年使用されてきた技術をベースに構成されているという事実は、これが、当社のクリエイティブなビジョンにとってパーフェクトな牽引役となることを意味しています」と Dochtermann 氏は語ります。
Medal of Honor の最新版は、ネプチューン作戦、ハスキー作戦、マーケット ガーデン作戦など、第二次世界大戦中の主要な空挺部隊ミッションをベースとしています。このゲームがほかの戦争ゲームと異なるのは、レベル内の好きな地点にパラシュートで降下できるという点です。人々が密集した複数レベルの環境では、屋根の上に降下して眼下のドイツ兵を狙撃する、ほかの隊員と市街地の外周で落ち合って潜入するなど、ミッションを達成するための手段としてさまざまな可能性が開けてきます。
「文字通り、飛行機から飛び降り、好きな場所に降下し、敵と交戦するなど、UE3 と次世代ゲーム機のおかげで、Airborne は、そのポテンシャルを発揮したゲームに仕上がりました」と Dochtermann 氏は述べます。「コアとなるコンセプトに沿ってゲームをデザインするというのはとても難しいことですが、UE3 の短時間のサイクルと処理能力、そして 次世代ゲーム機 のおかげで、このデザインの目標を達成することができました」
Dochtermann 氏は、ゲームの開発時、オープンなサンドボックスをプレイヤーに与えるという決定は、FPS ゲームに関するチームの解釈の基盤を揺るがすことになりました。
「数年間という長い期間を経て依存するようになっていたスクリプティングや従来の直線的なテクニックは、無用の長物と化しました」と Dochtermann 氏は語ります。「シングルプレイヤー、マルチプレイヤー共に、垂直の拡がりは驚くほど当然のプレイ モードとなっており、FPS ファンにとっても歓迎すべき追加要素でした。当社のデザイナーとグラフィック担当者は、従来のような地上や屋内だけではなく、屋上や塔、およびその他さまざまな面をプレイ可能なスペースとして考えるようになりました。これによって、各レベルのデザインに新しい躍動感が生まれました。全体的に見て Airborne は、これまでで最も再プレイの価値があるゲームになったと思います。これは、2 回連続してまったく同じプレイ内容になることは絶対にないからです」
Dochtermann 氏は、このゲームで実現した最大の成果は、ユーザーが今までに見たことのないような、初のオープン型 FPS ゲーム環境だと語ります。また、これは技術とデザインのすばらしいコラボレーションの賜物だ、と付け加えます。
Dochtermann 氏は、「UE3 を使用することによって、当初は予定していなかったような新たな可能性と技術に気づくことができました。しかしもちろん、ゲームのコアとなる部分に対する道筋や焦点がブレることはありませんでした。UE3 は、当社にとって、FPS の世界で新たな領域を冒険するための優れた基盤となりました。そして、Medal of Honor の進化に貢献し続けるでしょう」と話しています。
このゲームの主人公 Boyd Travers は架空の人物ですが、第 82 空挺師団、ミッション、都市、武器、ドイツ人についてはすべて、開発チームが各新作ゲームのために数年間かけて行った歴史的な調査の結果をベースとしています。
実際にゲームの最終レベルには、これまでゲームに登場したことのないドイツ軍の高射砲塔 (Flakturm) と、厳重な防備が施された要塞が登場します。
「Airborne はそのほとんどが、第二次大戦で行われた実際の空挺部隊ミッションをベースとしています」と Dochtermann 氏は説明します。「UE3 のような技術的支援がなければ、このような歴史的な出来事をゲーム化することはできなかったでしょう。Epic は、最新のグラフィック ボード、物理ライブラリ、ゲーム機の能力を最大限に引き出すための技術を継続的に進化させています。しかしなによりも重要なのは、ツールセットという、Unreal の優れた技術を活用する方法を決して見失わないという点です。Unreal は常に、開発者が、ビデオ ゲーム開発において最も重要な側面であるゲーム制作に集中することのできる、ユーザー フレンドリーなプラットフォームであり続けています」
チームは開発中にエンジンを変更したため、第二次大戦シューティングの制作には Unreal Development Networkが非常に役立った、と Dochtermann 氏は語ります。
「UDN は、開発者が、アイデアの共有、問題の報告、効率改善などに利用できる有益なリソースです。Airborne の開発期間中、このネットワークに参加したことによって大きな恩恵を受けることができました。当社のエンジニアに対しては、このお返しとして、可能な限り修正パッチやアップデートなどを UDN に投稿するよう指示しています」と Dochtermann 氏は述べています。
UE3 を使用する開発者が実感している利点のひとつに、この技術のコンソール間相互運用性があります。EA では、複数のプラットフォームに対応するゲームを開発していますが、EALA などの開発スタジオでは、対象となる各コンソールにとってベストなゲームを制作しなければなりません。
Dochtermann 氏は、「ゲーム機が本当の意味で PC に追いつくことは絶対ありませんが、シミュレーションやグラフィックの処理においては、大きな進歩を見せることがあります。しかし一方で、PC が長期間それと同じレベルに留まっていることもありません。UE3 は、対象プラットフォームのすべてで優れた性能を発揮するように設計されていますが、それと同時に将来も見据えています。このため Unreal の技術は、現在のコンソール サイクルを超えたところでも、その性能を発揮し続けるでしょう」と指摘しています。
EALA では、このベストセラー戦争シリーズの継続的な開発を計画しています。次回作では、この技術を駆使してシューティング ゲームをさらに進化させるアイデアと共に、開発の最初から UE3 が活用されることになるでしょう。