Electronic Arts 社所有の開発会社 BioWare では、大好評のベストセラー「Mass Effect」の続編の制作にあたり、さらに熱中度の高い SF ロールプレイング アクション ゲームを開発するために、Epic Games の Unreal Engine 3 ベースの技術に着目しました。2010年のビッグ タイトルとして、既に多くの期待が寄せられていたこのゲームの開発には、150 名以上ものスタッフが関わりました。前作で UE3 を使用した経験を持つ Mass Effect 2 の主任プロデューサー Casey Hudson 氏は、この新作では、開発チームが技術面とプレイ面の両方におけるすべての側面を進化させることができた、と語ります。
「Mass Effect の総合フレームワークを Unreal のエンジンに統合して開発したゲームの完成後、最終的なパフォーマンス メモリ使用量を検証し、Mass Effect 2 ではそれを参考にしました」と Hudson 氏は語ります。「1 作目ではこれを行う機会がありませんでしたが、これは、コンテンツ開発の改善に役立ちました。それと同時に、多くの時間をかけていた効率の悪いタスクを特定することもできました。そこで、CPU 使用量を増やすのではなく、Scaleform で準備段階などを検証し、それに応じてコードを書き直しました。しかし、一般的なゲーム開発で見られるような無駄な作業や時間を発見して驚くようなことは、ほとんどありませんでした」
Mass Effect 2 で Hudson 氏のチームは、リアルさにもこだわりました。1 作目の光源処理モデルについて Hudson 氏は、「非常に洗練されていてディテールも優れていましたが、Mass Effect ではそのコストに見合うものではありませんでした」と語り、 光源処理によってマテリアルが平面的になってしまうことが多く、せっかく作った物をその意図の通りにプレイヤーに楽しんでもらうことができなかった、と説明しています。今回の続編で開発チームは、プレイヤー周囲の光の状態を問わず、光源処理マネージャーが、コントラストが高く説得力のある光源処理を実行し、マテリアルを最高の状態で表現できる方法を開発しました。これらすべてのディテールが追加されても、Mass Effect 2 は高いフレーム レートで実行でき、前作より詳細なテクスチャと高い解像度、多くのマテリアル情報が実現しています。
開発チームは、UE3 のツールセットを徹底的に活用し、Matinee と Kismet を駆使して Mass Effect 2 のプレイ環境を改善した、と Hudson 氏は述べます。
「Matinee は、デジタル環境での演技や会話などに関して当社が開発した多数の独自技術と高度に統合されているため、当社の会話システムと連携の取れた当社独自のシステムとツールが確立しました」と Hudson 氏は語ります。「当社のライターが会話エディタに会話を書き込み、ゲーム内でキャラクタと会話する際は、Matinee との組み合わせによって、それが、最終的なゲームで見られるようなさまざまな方法で演出されます。アクションに対する反応、敵キャラクタの AI 処理、各種キャラクタの反応や移動などのスクリプティングには、Kismet を活用しました」
Mass Effect 2 の開発においても BioWare のプログラマーは、Unreal Developer Network を通じて Epic やほかのゲーム開発者たちとコミュニケーションを取りましたが、初めて使用するこの技術に関する詳細情報を収集する必要があった 1 作目では、これに多くの時間を費やしました。
「このエンジンを初めて利用する人にとっては、UDN はとても有益なサービスだと思います」と Hudson 氏は語ります。「他者が開発したエンジンを使用する際に最も大きな課題となるのは、その使用方法、そしてベストな使用方法を理解することです。Mass Effect ではこのエンジンを活用しましたが、スタッフは常に Epic とコミュニケーションを取っていました」
BioWare は、Mass Effect の 3 作目となる大迫力の SF 三人称視点シューティング ゲームを開発するため、UE3 を選択しました。
「これははじめから Unreal での開発に適したゲームでしたが、Mass Effect 2 ではさらに一歩踏み出して、Unreal の能力を最大限に引き出したコンテンツの作成に努力しました」と Hudson 氏は語ります。「Mass Effect では、中間レベルにおいて多くを手製で作成しましたが、Mass Effect 2 では、多数の部品を作成して最後に組み合わせるという Epic の手法を大幅に取り入れました。多少の違いはありますが、パフォーマンス重視のゲームにおいては容易に導入可能な手法です。しかしひとつのチームが、異なる手法と技術を完全に習得するには、やはり時間もかかります」
大幅に最適化されフレーム レートが向上した Mass Effect 2 では、「細かいところに見られる多くの革新」を実感することになるでしょう。Hudson 氏は、カメラの精度が向上し、戦闘でのボディーなどへの照準精度が高まった、と述べています。
「ターゲットを狙って当てる能力からスキル成長機能が部分的に排除されています。そのため、攻撃したときのダメージや特殊能力のパワー レベルなどは上昇しますが、武器を発砲する際は、武器の精度に依存することになります」と Hudson 氏は語ります。「プレイヤーは訓練を受けた兵士となってプレイするため、ターゲットに照準を合わせることができれば攻撃は命中します。これによって武器の精度を実感でき、攻撃もより一層効果的なものになります。この攻撃精度、滑らかなフレーム レート、高度なカメラ ワークと照準機能によって、局所的なダメージを与えることが可能になっています。敵も、頭部など、攻撃を受けた場所によって異なるリアクションを見せます。これによってゲームに正確さと深みが加わるだけでなく、弾薬の制限も手伝って、戦闘での全体的な緊張感が演出されます。弾薬のひとつひとつが大きな意味を持つことになるのです」
UE3 を活用して完成した Mass Effect 2 は、全身の毛が逆立つような緊迫した RPG アクション ゲームに仕上がっています。BioWare が、UE3 技術を使用して時間をかけて開発したこの作品は、グラフィックもプレイ環境も前作を凌ぐ完成度となっています。数年後にリリース予定の Mass Effect 3 には、今作をさらに凌ぐすばらしいグラフィックやプレイ環境が期待されます。