2019年6月5日
Epic の CTO、Kim Libreri が語るバーチャル プロダクション、デジタル ヒューマン、Epic Games の今後の展望

今回のポッドキャストでは、fxguide の Mike Seymour 氏が Libreri から話を聞きました。Libreri はバーチャル プロダクション技術の多くの先駆者となりました。それらの技術は今、どのように VFX パイプラインを変えているのでしょうか。また、A Boy and His Kite、Hellblade: Senua’s Sacrifice、MEETMIKE、Siren、新しい Chaos のデモなどの特別プロジェクトで、Libreri のチームがどのように Unreal Engine のテクノロジーを進化させ、その可能性を広げていったかについてと、Real-Time Live! の重要性についても話をしています。最後に、Epic Games とリアルタイム テクノロジーの今後の展望について聞いています。
下からポッドキャストをお聞きいただくか、読み進めて概要をご覧ください。
Libreri は Epic に移る前、Lucasfilm で映画とゲームのテクノロジーを融合させる可能性を探りながら、画期的な Star Wars 1313 のデモに取り組んでいました。この作品を Seymour 氏は「リリースされなかった最高のゲーム」と評価しています。
「昔ながらのビデオ ゲーム、単方向のエンターテイメント、インタラクティブな VR エクスペリエンスなど、さまざまな形のエンターテイメントを制作する方法が、リアルタイム テクノロジーによって変わるだろうと考えていました」と Libreri は述べています。「さまざまな新しいアイデアが集まって、おもしろい効果が生まれていました。コンピューター グラフィックスにインタラクティブ性が加わると、驚くような新しいことが可能でした」
Libreri は、リアルタイム再生だけではなく、インタラクティブの側面が、バーチャル プロダクションにおけるゲーム エンジン テクノロジーの活用をおもしろくしていると説明し、カーチェイスの例を挙げています。事前につくったストーリーボードやアニマティックに従うのではなく、車のシミュレーションを用意し、ハンドルやジョイスティックで実際に運転し、即興でアクションを取り入れ、それを実際のカメラで再現できます。
「現実の世界と同じような、自然発生的で試験的な側面を取り戻すことができます。従来のように前もって計画した視覚効果とは違います」と Libreri は述べています。また、バーチャル プロダクションのメリットとして、キャラクター、プロップ、環境、撮影のシナリオをプロセスの早期に確認できる点を挙げています。「イテレーションの時間を確保できます。また、20 年間にわたり存在した、現実から離れた、抽象化されたプロセスはなくなります。これが、私が最も期待している点の 1 つです。演出家や映画制作者のプロセスがイマーシブになってきています」

Libreri が Epic に加わってから取り組んできた数々のプロジェクトでは、Unreal Engine テクノロジーのさらなる進化を目指してきました。最初のプロジェクトは、2015 年に公開された A Boy and His Kite (略称 Kite) でした。そのオープン ワールドのコンセプトと、自然なキャラクター アニメーション スタイルは、その当時 FPS ゲームで知られていた Epic がそれまで制作していたものと大きく異なりました。その後、3Lateral (現在は Epic Games の傘下) と協力して、インタラクティブなデジタル ヒューマンに取り組み、2016 年には Hellblade: Senua’s Sacrifice、2017 年には MEETMIKE、GDC 2018 で Siren を発表し、Kite からわずか 2 年半で大きな進歩を遂げたことを実証しました。

Libreri とそのチームは、The Mill と合同で制作した The Human Race、リアルタイム レイ トレーシングのデモ Reflections、Unreal Engine の新しい物理エンジン Chaos にも取り組んできました。
こうした特別プロジェクトの成果からの影響もあり、Unreal Engine は進化して、自動車のレンダリング用の新しいマテリアル システム、組み込みの合成モジュール Composure、ライブ パフォーマンスを記録してタイムラインで編集できるシーケンス レコーダー、リアルタイム レイ トレーシングが追加されました。物理エンジン Chaos は、次期バージョンの Unreal Engine 4.23 でリリース予定です。

シーケンス レコーダーとその他の Unreal Engine テクノロジー コンポーネント、たとえば iPhone X 向けの ARKit のサポートや、肌、髪、目のシェーダーの機能強化は、Kite and Lightning による Bebylon プロジェクトで重要な役割を果たしました。このプロジェクトは SIGGRAPH 2018 の Real-Time Live! で、皮肉にも Epic のエントリー作品 Reflections を破り、リアルタイム グラフィックスとインタラクティビティの最優秀賞を受賞しました。2015 年に A Boy and His Kite、2016 年に Hellblade: Senua’s Sacrifice、2017 年に The Human Race で受賞経験もある Libreri は、Kite and Lightning の共同創業者 Cory Strassburger 氏に敗れたことを潔く受け入れています。

「Cory は Unreal Engine の最新バージョンを使ってこれだけのことを成し遂げたのですから、当社が Real-Time Live! で負けたのも納得がいきます」と述べています。「Real-Time Live! は、リアルタイム エンターテイメントの限界に挑もうとする人々にとって、いい刺激になっています」
それでは、Epic の今後の展望はどうなっているのでしょうか。Libreri は、物理システムを自動車やキャラクターまで拡張し、ゲーム開発者や映画会社がデジタル ヒューマンを取り入れやすくし、またレイ トレーシングやライティングをさらに進化させていくつもりであると述べています。
「リアルタイム レンダリングが今後 10 年以内に映画と同じ品質まで到達することは避けられません」と Libreri は言います。「今後もこれまでの成果をもとに新たな可能性を探っていくつもりです」
今回ご紹介した Kim Libreri へのインタビューは、ポッドキャスト シリーズ Visual Disruptors の 1 エピソードです。バーチャル プロダクションのハブで、ポッドキャスト、ビデオ、記事、展望にアクセスしてください。