サーフェス アーティストとは
ゲーム業界に多く見られるサーフェス アーティストは、環境内のあらゆるサーフェスの見た目や質感を定義する役割を担います。マテリアルやテクスチャを使用して、オブジェクトのサーフェスがどのようにライティングに反応、作用するかを表現します。サーフェス アーティストの職務は、アートとテクノロジーの組み合わせが中心となります。サーフェス アーティストは、ペイントやスカルプトに秀でているだけでなく、リアルタイム プロジェクトの技術面やワークフローに精通している必要があります。サーフェス アーティストは、次の分野を得意とします。
- テクスチャ
- マテリアル

Paragon のキャラクター Crunch のサーフェス マテリアルのバリエーション
テクスチャ
リアルで正確なリアルタイム テクスチャを環境内で作り出すために、サーフェス アーティストは、3D スカルプト ソフトウェア、ペイント ソフトウェア、ハイ ポリゴンからロー ポリゴンへのベイク処理を行うソフトウェアについてよく理解している必要があります。プロジェクトに取り組む際には、サーフェス アーティストが、3D モデラーやゲーム デザイナーに加えて、アート ディレクターやコンセプト アーティストとも緊密に連携をとり、アートやスタイルの方向性を一致させることが不可欠です。一般に次のようなスキルが求められます。- スケッチや絵画の優れたスキル
- 詳細な 3D イメージと 2D イメージのスカルプトとペイントの能力
- 高解像度のメッシュからテクスチャをベイクした経験
- タイリングと 0 から 1 の範囲へのテクスチャ マッピングのために UV レイアウトを作成する能力
マテリアル
サーフェス アーティストは、効率の高いリアルタイム マテリアルを作成する方法をよく理解している必要があります。サーフェス アーティストの重要な役割の 1 つは、リード、アート チーム、アート ディレクターと連携して、質が高く複雑でリアルなマテリアルを開発することです。また、サーフェス アーティストは環境やキャラクターのアーティストとも連携して、マテリアルの質を高め、テクニカル アーティストが高度なシェーダーを開発できるよう導きます。マテリアルに関してサーフェス アーティストに求められるスキルは次のとおりです。- 組織独自のシェーダー エディタを使用して新しいマテリアルを生成するスキル
- マテリアル内のエレメントとして使用するためにジオメトリをモデル化し、スカルプトする能力
- スタジオ全体のマテリアル ライブラリを管理、維持、開発する能力
- マテリアルのパイプラインと物理ベースのレンダリング (PBR) ワークフローをデザイン、実装、維持するスキル

Paragon のキャラクター Crunch のサーフェス マテリアルのバリエーション
サーフェス アーティストへの需要が高まっている理由
サーフェスは、環境を見渡したときに初めて目に入ってくるものです。3D 環境におけるサーフェスがライトに対してどのように反応し、その世界観においてマテリアルがどのように存在するかを表現することは、サーフェス アーティストの役割です。「サーフェス マテリアルにより、スケール、合成、トーン、ストーリーを強化できます。サーフェス アーティストはチームに欠かせないメンバーであり、リアリティと没入感を融合させます。サーフェス アーティストがいなければ、私たちの世界は平面的で無味乾燥なものになるでしょう」- Epic Games、パイプライン デベロッパー、Brad Smith
サーフェスの処理によって環境の全体的な見た目が決まります。サーフェスの処理が不適切だった場合、シーンに支障をきたすのですぐにわかります。広範囲でモデルに問題がある場合、過度に平面的になるか、マテリアルがライティングに適切に反応しません。
サーフェス アーティストが求められている業界
ゲーム
サーフェス アーティストは、ゲーム スタジオのチームの中心的なメンバーです。サーフェス アーティストのスキルや責任の一部を、マテリアル アーティスト、テクスチャ アーティスト、シェーダー アーティストが担うこともあります。サーフェス アーティストは、環境全体を担当する場合や個別のキャラクターを担当する場合があります。場合によっては、シーン内のすべてのオブジェクトに対してライトが作用するスタイルと方法の両方を表現する責任があります。
大規模なスタジオでは、サーフェス アーティストがキャラクター、環境、マテリアル、テクスチャを担当します。小規模なゲーム スタジオでは、キャラクターのモデラーも、サーフェス アーティストのスキルや特性の一部を持っていることを期待されます。ゲーム スタジオでは一般に、サーフェス アーティストはテクスチャに主眼を置き、マテリアルはすべてアーティストが定義します。これに対して、建築ビジュアライゼーションでは、サーフェス アーティストはほとんどのコンテンツをインポートします。
「リアリティーを追求するとき、サーフェスでシーンの成否が決まります」- Epic Games、テクニカル アーティスト、Harrison Moore
メディアとエンターテイメント
サーフェスの処理は非常に専門的な職種であるため、映画業界では一般に、それを専門とする部署があります。作業は通常はスキャンと手作業の組み合わせです。サーフェス アーティストが、編集できないマテリアルをインポートすることも一般的です。
画像提供:Zafari - メディアとエンターテイメント
建築
サーフェスの処理は、建築ビジュアライゼーションにおいても、忠実度を実現するために重要な役割を果たします。ゲーム開発や大規模なチームでは、この職種は一般に「サーフェス アーティスト」と呼ばれますが、建築業界では「ビジュアライゼーション スペシャリスト」がこうしたワークフローを習得することが期待されます。建築で使用されているマテリアルの見た目をフォトリアルに表現する必要があるため、求められるスキルは同じです。建築ビジュアライゼーションでは一般に、ビジュアライゼーション スペシャリスト (つまりサーフェス アーティスト) は、すでに物理的に定義されているコンテンツ (measured materials/計測済みマテリアル) を調達します。このため、物理的に正確なライト (通常は IES プロファイルに基づく) に対するマテリアルの反応のほうに関心が向きます。このワークフローでは、サーフェス アーティストはフォトグラメトリー、つまり写真からサーフェスの細部を導き出す手法に主眼を置くことになります。

工業デザイン
工業デザインにおけるサーフェスの処理は、より写真ベースであり、写真をスキャンすることが多くなります。この業界では、サーフェス アーティストはサーフェスの写真を撮影してからそれを再現します。工業デザインでは、不要なものが写っていない、詳細で明確なサーフェスの写真を使うため、ペイントよりも、反射、メタル、ベースカラーの作成が重視されます。

画像提供:Porsche - 自動車デザイン
サーフェス アーティストに必要なスキル
必要条件
- アートを見る目
- 彫刻術や色彩理論の基礎知識
- ライトとサーフェスの相互作用を熟知し、一般的なシェーディング モデルと同様のものを作る能力
- 人間の視覚や 3D プロジェクションの理解
- カメラについて、またレンズが光をどのように取り込み、画像を記録するかに関する知識
- PBR レンダリングとマテリアル/ライトの作用の知識
- テクスチャのペイントに関連するイメージ カラー スペースの理解
- 現実世界の色をゲームの世界に適応させる能力
- 独自のマテリアル作成システムを習得する能力
専門スキル
- 写真技術
- 絵画
- フォトグラメトリー
- アート ディレクション
- 色彩理論
- ライティング
- 線形代数
- Adobe Photoshop
- Maya
- Substance Designer と Substance Painter
- ZBrush
- シェーダー作成スキル (HLSL、GLSL、CGFX)
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チーム プレイ
サーフェス アーティストは、その職務を積極的に果たし、大規模なチーム環境でうまく働ける必要があります。環境に求められる見た目を実現するために、通常は、コンピューター グラフィックス、モデリング、アートなど複数のチームにわたり、コミュニケーションとコラボレーションを行うことになります。また、ゲームには、多くの場合で時間の制約や期日があることにも注意が必要です。サーフェス アーティストは、スケジュールに従い、プレッシャーの下でも落ち着いて効率的に作業できる必要があります。スタジオのプロダクションやパイプラインに関する手順や要件を尊重することが重要です。
サーフェス アーティストとして昇進すると、チーム内のほかのアーティストの士気を高め、指導し、支えることが不可欠になります。また、ほかのチーム メンバーが利用できるように、高品質マテリアルのライブラリを維持することも重要です。ライブラリが整備されていれば、リアルタイム マテリアルが必要になってもパイプラインに影響が生じなくなります。また、ほかのアーティストがこうしたツールを使用して作業を改善できます。チーム メンバーが協力して、ライブラリでアセットを共有し、パイプラインを改善できます。
サーフェス アーティストのキャリア パス
新人レベル
サーフェス アーティストのキャリア パスには、新人レベルのポジションと上級レベルのポジションがあります。新人レベルのサーフェス アーティストは、スカルプトや既存のマテリアルへのサーフェスの追加、あるいは基本的なテクスチャの作成を担当します。新人レベルの業務では通常、事前に定義されたマテリアルが渡されます。
緑色の大理石のマテリアル開発
上級レベル
上級レベルのサーフェス アーティストは、マテリアルとライティングの動作を作成、定義します。マテリアルをさらに制作する必要が生じた場合は、下位レベルのサーフェス アーティストに引き継ぎ、複製を依頼します。上級またはリード サーフェス アーティストは、ワークフローを改善する新しいツールの調査や開発の責任も担います。一部のゲーム スタジオでは、サーフェス アーティストは、特定のマテリアルだけを使用することが求められています。Epic では、ツールキットのあらゆる部分を使って自由な創作が可能になっています。
高度なサーフェスの処理と Proceduralism
業界では「Proceduralism」と呼ばれる新たなトレンドが生まれています。これは、新しいツールを使ってテクスチャやシェーダーの効率性を管理する手法です。Proceduralism を取り入れる場合、新しいテクスチャ ツールやテクニックを調査し、より効率的で視覚的に魅力的な環境を作り出す責任があります。また、マテリアルのライブラリを使ってゲーム環境のテクスチャを作成する必要もあります。Proceduralism を取り入れた職務に就くには、Substance Designer に精通していて、ベンチマーク マテリアルを作成し、効果的、効率的なワークフローを開発して、アート チーム全体の機能、スピード、品質を高めている必要があります。また、独自のマテリアル作成システムを習得できる能力が必要です。この分野を専門とするサーフェス アーティストは需要が高くなっています。プロシージャルベースのサーフェス アーティストに求められるスキルは、オブジェクト指向であること、几帳面であること、アセットの管理を得意とすること、ワークフローを作成、変更するプロセスの定義に熟練していることです。プロシージャルベースのサーフェス アーティストの仕事に就くには、サーフェス アートの深い理解が必要です。Proceduralism は多くの場合、テクスチャの作成と重なります。

生成されたプロシージャル ノイズ マスク

Paragon のキャラクター Crunch のサーフェス マテリアルのバリエーション
スタイルかフォトリアルか
サーフェス アーティストという職種に関心がある場合は、スタイルに沿ったプロジェクトに取り組むか (アニメーションのエンターテイメントをイメージしてください)、フォトリアルの道を進むかを選ぶことを推奨します。スタイルに沿ったプロジェクトはクリエイティブ面で自由なものになります。調整が提案される場合も、そのほとんどは明らかな間違いではなく、意見の違いによるものです。
フォトリアルを追求するプロジェクトでは、細部が注目されます。このタイプの職務では、プロジェクトを正確かつ完璧に表現するために多くの時間がかけられます。フォトリアルを目指すサーフェス アーティストにとっては、ペイントよりも写真の技術が重要になります。また、フォトリアル プロジェクトは、ゲーム業界以外にも多くの道への扉を開きます。

スタイルに沿ったキャラクターのマテリアルとライティング

フォトリアルなキャラクターのマテリアルとライティング
優れたサーフェス アーティストになる方法
サーフェス アーティストになりたいかどうか迷っているときは、アートを制作したいのか、それとも問題を解決し、ワークフローを定義したいのかを判断する必要があります。業界内では、テクスチャの作成はシンプルでアート性が高いものと認識されていますが、実際には高い技術力が求められます。優れたサーフェス アーティストになるには、クリエイティブ面と技術面の両方のスキルを習得する必要があります。プロフェッショナルからのヒント
- Substance Designer を習得し、高い需要が今後も続くと思われる Proceduralism を身につける。
- フォトグラメトリーを学び、フォトリアルなサーフェスの作業に役立てる。
その他のヒント
このキャリア、または Unreal Engine に関わるキャリア パスに関心をお持ちの場合は、質の高いアートやツールを反映したポートフォリオをまとめ、多くのマテリアル サンプルを用意することが重要です。サンプルには、ワークフロー、結果、シーンやアセットでの用途を含めるようにしましょう。サーフェス アーティストの適性チェック
✓ 物理学の概念をおもしろいと感じる
✓ 色彩理論をよく理解している
✓ 問題の解決策を予想し、見出せる能力がある
✓ 人間の視覚と 3D プロジェクションについてよく理解している
✓ シェーディングとフォームのスキルを持っている
✓ アートとテクノロジーのスキルを併せ持っている
✓ 絵画や写真を楽しいと感じる
✓ 細部を見分けるスキルを持っている
✓ 継続的に調整を加えることをいとわない
✓ 色彩理論をよく理解している
✓ 問題の解決策を予想し、見出せる能力がある
✓ 人間の視覚と 3D プロジェクションについてよく理解している
✓ シェーディングとフォームのスキルを持っている
✓ アートとテクノロジーのスキルを併せ持っている
✓ 絵画や写真を楽しいと感じる
✓ 細部を見分けるスキルを持っている
✓ 継続的に調整を加えることをいとわない
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