
ジラフとアンニカ は atlier mimina がPlayStation 4、Nintendo Switch、PC(Steam)向けに開発している3Dアクションアドベンチャー&リズムゲームです。Unreal Engine 4による3Dグラフィックでシームレスに表現されたスピカ島と、コミックテイストで描かれる2Dの演出シーンが融合して生み出される、プレイヤーをあたたかな気持ちへと誘うような可愛らしい世界観が本作の魅力です。
Epic MegaGrants の前身であるUnreal Dev Grants を受賞するなど様々なメディア・イベントにて注目される中、2020年2月18日にPC版がSteamにてリリースされました。猫耳少女のアンニカが 不思議な島「スピカ島」を冒険!
少年「ジラフ」に星のかけらを探しの依頼を受けたアンニカは
島に隠された多くの謎を解いていきます。
美しいグラフィックとコミック風に 表現でされた優く懐かしい世界観の
ハートフルアドベンチャー+リズムアクションゲーム!
ジラフとアンニカ 公式サイト より
Steam:ジラフとアンニカ
今回は atlier mimina の 斉藤 敦士 / 紙パレットさん ( @kamipallet ) に、 ジラフとアンニカ を 制作する上でUnreal Engine 4やマーケットプレイスをどのように活用したのかなどお話を伺いました。 本日はお時間をいただきありがとうございます。そして、PC版のリリースおめでとうございます。早速ですが、ジラフとアンニカ を制作する中で役に立ったUnreal Engine 4の機能についてお話いただけますでしょうか?
やはり Blueprint はとても役に立ちました。ジラフとアンニカの開発には様々な方が携わっていますが、Unrael Engine 4を使って作業するのは基本的に私一人でした。そのため、ノードを使ってアルゴリズムを実装できるBlueprintは非エンジニアである私にとって非常に助かりました。最終的には、ローディング画面の実装はActionRPGサンプルから移植したC++コードを使いましたが、それ以外の99%の部分はBlueprintで実装することができました。複雑なシステムを実装する際はマーケットプレイスで販売されているアセットを参考にしました。たとえば、会話ダイアログの実装は Blueprint Dialogues を参考にしています。
また、Blueprintのおかげで実装に費やす時間を短縮することができたので、レベルデザインやアート部分に時間を掛けることができたことも大きなメリットでした。アーティスト一人でこの規模のゲームを作れたのはBlueprintのおかげだと思います。

Blueprintを使う上で注意したことはありますか?
半年後の自分でも分かるように常に整頓するように気をつけました。Blueprintはプログラムの流れが見た目で分かるので、私のようなアーティストにはとっつきやすいです。しかし、油断していると線がごちゃごちゃして非常に分かりづらくなります。そこでノードを整理したりコメントを付けることを大事にしました。おかげで実装だけでなくデバッグも効率よく行うことができました。

アート面についてもお話を伺えればと思います。ジラフとアンニカは基本一人で開発していたとは思えないほど物量が大きいインディーゲームかと思います。どのようにして実現しましたか?
オリジナリティを重視しつつも、リリースするために工数短縮、効率化も重視しています。実は画面上に映るものの多くがマーケットプレイスで購入したアセットなんです。この画像の場合、中央の家と顔出し看板以外はマーケットプレイスのものです。たとえば、地面や草木には Landscape Auto Material、空には Ultra Dynamic Sky を使用しています。

また、マーケットプレイスを使いつつも自分の色を出すことにはこだわりました。具体的には、岩などの特徴のないものにはマーケットプレイスのアセットでも違和感がないのでレゴブロックのように使っています。その一方、こだわりを入れたいところに関してはオリジナルのアセットにしています。
キャラクターに関しては独自性を強く出したかったので、全てオリジナルで作成しました。また、ランドマークになるユニークな建物の灯台、アトリエ、おばけ画廊等は力を入れたかったので中村 基典さんに高品質なモデルを制作して頂きました。

マーケットプレイスを活用する上で困ったことや注意すべき点はありましたか?
マーケットプレイスの製品は基本的には高品質なのですが、購入したアセットをそのまま使えず手直しする必要がしばしばありました。ちょっとした小物が50,000ポリゴンと過剰だったのでLODを調整したり、Substanceを使ってマテリアルを作り直したりしました。また、外側はあるけど内側がない建物のアセットがあり、間取りを合わせる事がどうしてもできず、外と中の違いに気付かれないようにフェードで誤魔化すなどしたこともありました。
また、マーケットプレイスのアセットは海外のニーズが反映されており、そのまま使うと表現したい世界観とは少し異なってしまうことも多かったですそこで、UE4のカラーグレーディング機能 を使って望んだ色彩になるように調整しました。個人的にはカラーグレーディングの機能はとてもオススメです。、地味ではありますが、マーケットプレイスの異なった世界観を、望んだイメージにまとめ上げるのに非常に役立ちました。


ジラフとアンニカ は 音ゲーパート、漫画パートもとても印象的です。それぞれどのように実装しましたか?まずは音ゲーパートからお話いただけますでしょうか。
ジラフとアンニカではBGMの再生とチャートの編集・制御にFMODを使っています。以前はSequencer上で行っていましたが、チャートとBGMのズレが1, 2フレームほど発生する問題があったためFMODに移行しました。
まずは、画像のようにFMOD上でマーカを打ちこんでチャートを作成します。波形が2つあるのは、音を流すタイミングとマーカ用のデータを流し始めるタイミングをずらすことで音ゲーが成立させるためです。

そして、音ゲーパート中はFMODからBlueprintのOnTimeLineMarkerイベントがチャート通りに呼ばれるので、その引数のマーカ名を元にヒットマーカーを生成しています。

また、ヒットマーカーの軌跡などの演出部分や難易度制御などのシステム部分に関しては、Sequencerと専用に用意したActor BP上で実装しています。各調整パラメータをレベル上で編集できるように公開することで各難易度ごとの細かい調整を可能にしています。


漫画パートに関してはどのようにして実装したのでしょうか?
まずはCLIP STUDIOを使って漫画を書きます。このとき、Unrael Engine 4でレンダリングした画像に対して更に彩度上げたものを漫画の背景に使用しています。

そして、漫画の完成後はコマごとにバラバラにして3D空間に配置します。UMGを使用しなかった理由は、Sequencerを使った方がカメラ演出が簡単な上に自由度が高かったからです。ただし、そのままですとポストプロセスの影響を受けて色味などが変わってしまうため、トーンマッパー は切っています。
コマの配置後はSequencer上でカメラの移動を制御したり、Event Trackでポーズ処理を実装しています。また、選択肢によって分岐する場面ではその選択肢ごとにジャンプするフレーム数を設定しています。ちなみに、はじめてジラフと会うシーンでは昼と夜とで表示する背景を分けています。

カメラ演出や条件に応じた演出の切り替えなど、新しい漫画の見せ方のように感じます。
最後になりましたが、何か伝えたいことはありますか?
4年前にUE4を1から勉強しながらコツコツ制作してきましたが、ようやく発売することができました!愛情込めて作り込みましたので、是非この世界を体験して頂けると嬉しいです!
ジラフとアンニカはStaemにて好評発売中です!PS4とSwitch版も開発中です。よろしくお願いいたします!
本日はお時間をいただきありがとうございました。ジラフとアンニカ について詳しく知るにはどこを見ればいいですか?
詳細については、www.giraffeandannika.com/ でご覧いただけます。また、ソーシャル メディアのチャンネルとしては、Twitter があります。