2015年1月19日

Immersive Design Studio社における、ゲーム制作を超えたUE4の活用法

作成 Kora Van den Bulcke

私達は文化的な企業イベントのためのカスタムメイドの没入型仮想環境(Immersive Environments)にフォーカスしたモントリオールにあるデザインスタジオです。今秋のUnreal Engine 4の発売をずっと楽しみにしていて、発売以後、すべてのプロジェクトで使っています。この記事では、私達の会社Immersive Design Studiosについて少しだけ紹介し、建築の没入型インスタレーションへのゲームエンジンの使い方、Unreal Engine 4を使った最近のケーススタディとして豪華な不動産業界のクライアントの例、さらに将来のエンジンの利用計画を紹介していきます。

私達のストーリー

私達は大きなアートや建築を基盤とする会社として、2000年に生まれ故郷のベルギーで起業しました。当時は、プロジェクト単位で専門家を集めたアーティスト集団として活動しました。2000年にはドイツでの展覧会用の建築模型を制作しました。そこでは、訪問者に建物の縮尺模型をウォークスルーをするような印象を与えようとしました。そのためにオリジナルな方法として、壁を囲んで投影するレンダリングイメージをゲームエンジンを使おうとしました。急いでゲーム制作の専門家を見つけ、2週間の間一緒にウォークスルーするようなレンダリングを開発しました。展覧会が始まると来場者は皆実際の物理的な建築モデル以上に私達の使ったゲーム技術の虜になりました。利用者は前もってレンダリングされたビデオではなく、建築モデル内のあちこちへ誘ってくれることを好みました。私達にとってのターニングポイントは、ゲームエンジンが建築や没入型のデザインにおいて、巨大な潜在能力を持っていることに気づいたことでした。

文化的なインキュベータでデジタルアートの展示スペースでもあるSociété des Arts Technologiques (SAT)がオープンした頃、私達はモントリオールで開発プロジェクトを始めました。一緒に開発する許諾を取得して、仮想と現実の環境の共通の基盤についてのアイデアを思い巡らせました。これが私達にとってのゲームエンジンを使う最初の大きな委任契約でした。その頃はゲームエンジンとしてQuakeを使っていました。プログラマ達とチームを組んで、ニーズに合うようにエンジンのオープンソースコードの修正を始めました。

ゲームでないアプリケーションにゲームエンジンを使うことは一般的ではありませんでしたので、後になってみればおかしいと思えるような前もってわかっているような問題もいくつかありました。例えば、一人称視点シューティングゲームに元々あった銃を隠したり取り除いたりました。熱狂的なペースでエンジンを修正したり、暴力的な要素を取り除くことに挑戦しました。しかし、私達のニーズに合ったコードにし続けていくうちに、次第にインスタレーション・アートにより合った環境を構築することができました。

(Realtime Unreal - Musée d’art contemporain de Montréalでのインスタレーション, 2011.
(Realtime Unreal - Musée d’art contemporain de Montréalでのインスタレーション, 2011.)

仮想的な建築空間に拡張現実(AR)を使った実際の建物を置くプロジェクトの後、アメリカの有名な美術館の許諾を獲得して、ニューヨークのMuseum of the Moving ImageとExperimental Media and Performance Art Centerのために美術館のための没入型インスタレーションを制作しました。これらのプロジェクトを通して、ドイツ銀行などの美術館への投資家や出資者と会うようになりました。彼らは私達の仕事に非常に興味を持ち、大きな年次会議で使う上で、とてつもなく大きな潜在能力があることを見つけました。ドイツ銀行は私達の最初のフォーチューン500にランキングされているクライアントで、没入型の巨大な規模の企業イベント制作の世界への扉を開いてくれました。

これらのアプリケーションのすべてにゲームエンジンを利用しました。私達のビジョンは、ゲームエンジンの強力なツールと組み合わせ、公共空間と結合することで、集団的な経験を創造することです。ゲームエンジンを私達のアートと建築の要素と組み合わせることにより、仮想世界と現実世界をシームレスでビジュアルに結びつけることができます。それは文字通り、いろいろな可能性を拡張することになります。

私達がUnreal Engine 4を選んだ理由

私達はエンジンとしてQuake 3を2000年から今年の初め頃まで使ってきました。Quakeはうまく使えていましたが、その能力を最大に使い切っていました。Unityも試してみましましたが、満足できるものではありませんでした。Quake 4はソースコードを手に入れるためには、とても高価になってしまいました。そこで、新しいエンジンに目を向けることにしました。しかし、どれも高価か使いこなすのが容易でないか、オープンソース過ぎて安定していないかのどれかでした。

Unreal Engine 4が発売された時、その問題は解決しました。比較にならないほどアーティスティックなレンダリング品質と利便性の高さを持っていました。他のエンジンと比較しても、より簡単に作業ができると思いました。とても小さなチームのためのスケーラブルなものですから、100人も必要ありません。また私達のニーズに合わせてソースコードを直接触れるというのも魅力的でした。技術的に強力な面と美学的な面との両面でそれは私達に理想的なものでした。

ケーススタディ - 豪華な不動産販売センター

没入型不動産販売センター (Unreal Engine 4で制作中)  - ベッドルーム

没入型不動産販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - リビングルーム

没入型不動産販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - ベッドルーム2
没入型不動産販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - インテリアビュー

委任契約

今年の初め、没入型不動産販売センターの委任契約の獲得に成功しました。それは2016年に完成予定の世界で最も高い住宅用タワーマンションです。クライアントは建物の洗練された様子を反映した独特な販売環境を欲しがっていました。それはデベロッパー単位での潜在的な購入者が、記憶に残るようなある種の経験をすることができるようなものでした。プロジェクトへのアート的なアプローチを望んでいた不動産デベロッパー達は私達のポートフォリオを見て感動しました。特に美術館での仕事には興味をもったようでした。

没入型販売センターのウォークスルーデモ (制作中)
ゴール

私達は最初から単にモデルハウスを訪れる以上の完全に利用者中心で予備的な経験ができるものを目指しています。没入型販売センターでは、利用者はあたかも実生活での将来の家に近づくものとして訪れるところから始まります。住宅タワーマンションに向けてドライブウェーをドライブして、仮想の受付に挨拶されます。そして、ここからツアーが始まります。利用者は行く場所を選択して、大きな部屋の80階のフロアへ行ったり、10階の小さな部屋をチェックしたり、庭を散歩したり、バスケットコートに行ったり、時には温泉で過ごすこともできます。すべての経験は、高度でリアルな品質のレンダリングにより、活き活きとしていて驚くほどに生活そのもののです。そこに実際にいるように感じ、信じられないくらい素敵な景色や豪華に仕上げられた部屋の中を見ることができます。それぞれの空間で拡張現実の透明のレイヤーを追加してありますので、訪れた人は台所を別の仕上げに変更したり、別の家具を並べたりすることもできます。また高解像度のプレイバック機能も組み込んでありますので、体験の中にビデオコンテンツを融合させたり、リビングルームでライブのApple TVで遊んだりできます。モデルルームに対して、制作した没入型販売センターは個人的な訪問についても、建物が建つ前に様々なタイプの部屋と環境を見せたり、売ったりできる柔軟性があるものになっています。

没入型販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - 投影環境
没入型販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - エクステリアビュー

Unreal Engine 4の利用

委任契約の仕事を開始するに当たり、初めはどのエンジンを使うべきかわかりませんでした。私達はQuake 3とUnityを使ってみましたが、どちらも私達のニーズに合っていないと思いました。デジタルな建築モデリングとしては3ds Maxがよく使われていますが、アプリケーションは限定的ですし、とても遅いです。そこで、うまく使えるかもしれないという期待を込めてUnreal Engine 4のリリースを待っていました。最後の数ヶ月で私達の目的に合った理想的なエンジンであることがわかったのは大きな喜びとなりました。

容易な利便性、レンダリングの品質、有機的なエフェクトをシームレスに制作できることが、私達を新しいエンジンへの採用に踏み切らせました。Unrealのビジュアルコーディング言語であるBlueprint機能は特に有用で、ソースコードに深く手をいれることなく、インタラクティブでビジュアルな機能とプロトタイプをプログラムすることができます。すると技術系のアーティストは、より独立して作業ができるようになり、例えば、Blueprintシステムを使ったこのプロジェクトでは、住宅タワーマンションの外で、木々を抜けて風が吹くようなエフェクト、リアルな噴水や利用者が空間を通り抜けるようなリアクションのトリガーなどの制作ができました。

クライアントの最初の印象

このプロジェクトの最初の見せられるものは、実際にあるアパートのリアルなモデルでした。クライアントは同じ都市にあるわけではありませんでしたので、最初のスクリーンショットを見せるのに私達は神経質になっていました。なぜなら完全にリアルな品質の仕事が彼らを惹きつけることができるかどうかを恐れたからです。そこで代わりに短いデモを送ることにしました。すると、クライアントはテーブルの実生活のような映り込みや鏡の実時間での映り込みなど、そのリアルさを即座に気に入ってくれました。そして、私達が本当に高級なツールを使って先端の実験的な環境を制作していること、そしてそれがまた販売の結果につながるだろうということを理解するようになりました。

2015年のローンチに向けて

Panorama View
没入型販売センター (Unreal Engine 4で制作中) - 投影環境

販売センターは2015年に開く予定になっています。プロジェクトを大規模な局面スクリーン上への最終的なインスタレーションに適用する段階になっています。GPUベースで専有する画像処理ソフトウエアであるCanvasを使って、フレームの遅延なしで、シームレスにゲームエンジンの中に包み込み、混合できるよう、Unreal Engineの技術と統合するようにしています。

未来のアプリケーション: Unreal と Canvas

モントリオールでの2014年のNHLのプレーオフ期間中の試合前のショーにおける、GPUで画像処理するソフトウエアであるCanvasの利用
モントリオールでの2014年のNHLのプレーオフ期間中の試合前のショーにおける、GPUで画像処理するソフトウエアであるCanvasの利用

昨年はホッケー場での試合前のショーで氷の上に3Dプロジェクションを制作するためのCanvasソフトウエアを開発していました。それは現在で最も解像度の高い6Kの解像度で最も大きな投影面の一つです。私達はこれを数ヶ月の間にインタラクティブな試合前コンテンツとしてUnrealを使ってよりステップアップできればと思っています。ホッケー選手の追跡技術を使って、スケーティングしている背後に仮想的な炎を置いたり、移動すると氷が割れるイリュージョンを作ったりするような印象的でインタラクティブな投影など、想像力さえあれば可能性は無限にあります。そのような大きな投影面については、世界中の競技場でUnrealとCanvasを使うことで、そこにはとても大きな可能性が生まれます。

結論

数年間、私達は実在するエンジンを私達のニーズに合う仕様に合わせることで結果を出してきました。別の産業でも同じようにやってみることをお勧めします。Unrealをゲームを超えて、建築やエンターテイメント、教育シミュレーションなどに使うことには多くの可能性があるとを信じています。

エピック・ゲームズ社のチームと一緒に仕事ができたことを、とても嬉しく思っています。11月のモントリオール国際ゲームサミット(MIGS)において、私達の美しい街をお見せできたことは素晴らしいことでした。またいつかコラボレーションできる機会を楽しみにしています。  

Immersive Design Studios社と共に時代に乗り遅れないようにしましょう。ここをチェックしてしてみてください。 Blog, LinkedIn or get in touch!