没入感とインタラクションが融合した VR、『Gnomes & Goblins』
2016-9-12

没入感とインタラクションが融合した VR、『Gnomes & Goblins』

作成 Daniel Kayser

多くの人々にとってファンタジーの楽しみは、想像力を働かせることにあります。キャラクターや特定の要因が自分が想像するものと同じだと感じることで現実から逃避し、物語の世界とつながります。でもキャラクター側がつながりを求めてきたらどうでしょう?もしも、こうしたファンタジーの世界が自分が実際に体験した記憶のように感じられたら?自分の想像力と本当の意味でインタラクションできたらどうでしょう?

仮想現実の登場によって、クリエイティブなストーリーテラーが作り上げたかつてない新しい美しい世界にオーディエンスを没入させることができるようになりました。こうした世界とそこに棲むクリーチャーは、リニア ストーリーテリングに最適の要素です。これがリアルタイム インタラクティビティと結びつくと真にユニークなものが生まれます。

こうした VR 体験のひとつが、VR の可能性に関心を惹きつけることを目指しています。それは、『Gnomes & Goblins』 という最近リリースされたインタラクティブ体験です。これはゲームでもなく、映画でもありません。どう受け止めるかは実際に体験した人次第です。それがクリエイターの意図するところでもあるのですが。

UE4 を使って制作された 『Gnomes & Goblins』 に関する情報をさらに得るために、Wevr のクリエイティブ ディレクターである Jake Rowell 氏 (以下、インタビューでは略して JR ) にお話を伺いました。以下で、プロジェクトの始まり、野心的なクリエイティブ面の目標、可能性がつまったこのシリーズの将来について語ってくださいました。

『Gnomes & Goblins』 のコンセプトはどのように生まれましたか?

JR: 実をいうと面白いことがいくつかあったんです。1 年程前に思いがけず Wevr オフイスに立ち寄ったことからすべてが始まりました。Jon Favreau がアニメーション ディレクターの Andy Jones と、映画 『The Jungle Book』 の仕事をしていた時のことです。Andy は彼に Wevr のオフィスに行って、私が監督した作品、『Blu:Whale Encounter』 を見てくると言ったんです。VR に興味があった Jon は付いていってもいいかと尋ねたのです。我々が 『Blu:Whale Encounter』 で行った内容に対して Jon は大きく共感したようです。翌朝、4 時に起床し、VR 用のキャラクターとワールドを描き始めたことからそれがわかります。まもなく、Jon と Wevr との間でプロジェクトで協力するという話が始まりました。わずか 1 ヶ月で、Jon のクリエイティブ ディレクターとして契約し、彼の 『Gnomes & Goblins』 に対するビジョンを実現する支援をすることになりました。

『Gnomes & Goblins』 のプレビューで実際に体験できる内容についてお話いただけますか?

JR:オーディエンスが最初に気付くのは、没入感のある快適な VR 環境です。Jon は、ゴブリンの森を親しみのわく場所にしたいと考えました。皆さんの想像力が導く恐怖や不快感のない夢の世界のような場所です。我々は明晰夢 (夢の中で夢だと自覚する夢)、魔法のような瞬間、ストーリーブック的感覚のアイデアについて、またこうした瞬間をどのように VR でとらえるかについて長い時間話し合いをしました。

森の大きさ、葉っぱがちょうどよい音で適切に揺れるなど、プレイヤーから見てしっくりとする雰囲気を醸し出します。まるで夢の中にいるかのような感覚です。

これ以外に重点を置いた領域として、VR 空間で意味がある方法でキャラクターとつながる機能があります。人の場合と同じように、キャラクターとの最初のつながりは目です。AI の基本となるものはヘッドセットとコントローラーへのアイコンタクトとアイトラッキングです。相手が自分の空間内にいれば、プレイヤーの頭と手をトラッキングします。プレイヤーがオブジェクトをつかむと、キャラクターがそれを見つめます。こうしたことに意味があります。彼に向かって移動すると、後ずさりします。プレイヤーが後ずさりすると、キャラクターがプレイヤーを信頼していれば向かってきてくれます。その一方で、キャラクターの目はプレイヤーの頭と手につながっています。関係作りの始まり、個人的な愛着を生み出して、プレイヤーがまた会いたいと思ってプレイしてくれるようなものを作りたかったのです。

このプレビューにあるようにキャラクターと個人的な関係を確立することが体験の重要な部分ですよね。AI の観点から言って、このプレビューのリアリティの高さを実現するのは難しいことでしたか?

JR:これは多様な開発分野にまたがるチームの努力の成果です。Andy Jones (アニメーション ディレクター)、 Mauricio Hoffman (リード アニメーター)、および Chris Christensen (リード A.I. エンジニア) は、アニメーションの作業とどのようにレイヤーするかについて多くのイタレーションを行いました。こうしたアニメーションを動かし、キャラクターがプレイヤーの動きにどのように反応するかを操作するコードに多くのサイクルを費やしました。John Bernhelm (リード デザイナー) もこの開発で重要な役割を果たしました。多様な感情の状態を作り出し、不安、幸福、悲しみを自然に表現しました。例えば、プレイヤーが賢明なアプローチをすれば報酬を与えたいと考えました。プレイヤーが、堂々と立ったり、あまりに早く動くとキャラクターは不安げになります。VR 空間で適切なバランスを見つけるためには、こうした部分の注意深い微調整と多くのプレイ テストが必要でした。

『Gnomes & Goblins』の設定は美しいだけでなく、没入感も得られますね。すぐに現在のプロジェクトのアート スタイルに落ち着きましたか?

JR:Jon と私は多くの時間を費やして 『Gnomes & Goblins』 のビジョンと彼がビジュアル的に成し遂げたいことについて語りあいました。映画、アニメーション、ゲーム、美術からインスピレーションを得て、彼のワールドのイメージにつながる手がかりを模索しました。従来のディズニー映画や任天堂のゲームでは、早い段階で正しい方向に導く案内役が何回も出てきます。白黒映画や、撮影監督がストーリーに合う特定の外観や雰囲気を作り出すために様々なセットをどのようにライティングするかについても話し合いました。

そこからコンセプトのフェーズに進み、Jon に様々なビジュアル面でのアイデアを伝えて、全員が納得いくビジュアル表現に絞り込んでいくことができるかを検討しました。彼はノームとゴブリンの素晴らしいスケッチを木炭で描きました。我々はインスピレーションを得るためにこのスケッチを何回も眺めたものです。何回かイタレーションと話し合いを重ねた結果、色彩面では古典的なディズニー アニメーションにして、ライティングとマテリアルの面ではクレイメーション (粘土人形を使ったアニメーション映画) のルック アンド フィールにするというアイデアがまとまりました。この 2 つを組み合わせることで、自分たちのワールドとそこに棲むゴブリンの外観が決まりました。

ビジュアル表現を決めて主要コンセプトが承認されたので、作品の CG の作業を開始しました。これは少々困難な道のりでした。インタラクティブ作品のほとんどは、見た目がくっきりしていたり、不透明なサーフェスだからです。従って、90 FPS で実行しながら、適切にバランスのとれた柔軟なトーンにするのが課題でした。リード アーティストの Nghia Lam がクレイメーションの基礎に基づくマテリアルを構築して、メタル、苔、フレネル エフェクトなどで必要な機能を補いました。グラフィックス プログラマーの Julian Kantor は複数レベルで実行するカスタム マテリアル関数で素晴らしい仕事をしました。こうしたことでライティングの見た目を調整し、複数レベルのプロパティの相互処理を実現し、夜間と日中のシーンで個別にパラメーターを設定できました。チーム全員が協力して一丸となってワールドを作り上げました。

発表内容から考えると今回のプレビューは実際の作品のほんの一部を紹介したにすぎないのは明らかです。今後 『Gnomes & Goblins』のコンテンツに加わる領域や登場キャラクターについてお話いただけますか?

JR:Jon は、この VR ワールドに関して非常に詳細かつ広範なビジョンを持っています。あいにく、将来の設定や登場キャラクターについて詳しくお話できません。このプレビューではゴブリンを披露しています。ですから、将来、ノームとその王国が登場することをお話しても差し支えないと思います。

『Gnomes & Goblins』 のプレビューは無料でリリースされましたよね。なぜこうしたルートをたどることが重要であったのか、またどのようなゲームの購買層を想定しているのでしょうか?

JR:『Gnomes & Goblins』 のプレビューが無料リリースされたのは、Jon を始め、Wevr、そして開発チーム全員がそれが重要だと感じたからです。VR というメディアは始まったばかりで、試してもらいながら、このメディアを一歩先に進めることが重要なのです。同じく無料の『Blu:Whale Encounter』 が VR の世界を知ってもらううえで大きな役割を果たしました。『Gnomes & Goblins』 のプレビューによって、 VR の未来を垣間見るきっかけになればと思います。

『Gnomes & Goblins』 のクリエイティブ面に息を吹き込む上で UE4 はどのように役立ちましたか?

JR:プロジェクトの早い段階でリード アーティストの Nghia Lam、リード A.I エンジニアの Chris Christensen と、VR とルーム スケールの開発で直面する課題について話し合いました。使用しうる様々なオプションについて多くの議論を重ねた後で、アンリアル エンジンを選んだ最大の要因は、ツールセットの豊富さや制作を通して継続的に編集する機能があることでした。時間の経過に伴い作品全体の見た目を改善しながら、進化しつつ方向転換することもできました。

多くの作品と同様に、何も入っていないレベルから初めて、個々の機能に多くのテスト マップをビルドしました。機能がオンラインになるにつれて、これらを徐々にメイン シーンに統合していきました。ブループリント システムも大きなメリットがありました。機能 / システムを迅速にビルドし、テストできるため、高速かつ柔軟なやりかたで統合することができました。Swarm ツールを使うと、シングル プロセッサーの所要時間に比べてライトマップのレンダリング時間を大幅に短縮することができました。Nghia がこうしたタスクの多くを実行し、アンリアル エンジンに対する知識と使用経験を活かしてビジュアル面での取り組みを主導する素晴らしい仕事をしました。

開発を通してアンリアル エンジンで特に役立った部分はありましたか?

JR:もちろんです。完成作品のビジョンとクオリティを実現するうえでアンリアル エンジンは多くの分野で威力を発揮しました。これをうまくお伝えするために、何名かのスタッフにアンリアル エンジンの評価と制作中に楽しく活用した様々な使用例を話してもらうことにしました。

Chris Christensen (リード A.I エンジニア): 
Animation ブループリント システムは非常に良いと思いました。アニメーション レイヤーを簡単にイタレーションできるからです。Animation ブループリントのプレビュー モードもデバッグで非常に役立ちます。

Nghia Lam (リード アーティスト):
私のお気に入りの機能はマテリアル エディタとそのインスタンス化プロセスです。これによって新しい機能を記述し、ワークフローを妨げずにチームの他のメンバーにプッシュすることができます。まるで魔法のように毎週全員に向けて新しい機能をスポーンすることができます。従来のスタジオでは、ツール リクエストを出して、プログラマー チームがその機能を検討し、それが計画したエンジン開発に適したものかどうかを問い合わせて、作ってもらうのを待たなければなりませんでした。アンリアル エンジンを使うと、たった数名で、これまでなら数か月を要するような作業をわずか数日、場合によっては数時間で仕上げることができます。
 
Jon Bernhelm (リード デザイナー):
デザイン面では、ブループリントと C++ コードとの間の密接な連携に大いに助けられました。多くの場合、ブループリントを使ってプロトタイピングしてから、コードで再実装します。あるいは、Chris がC++ クラスを作り、多くのパラメータや関数をブループリントに公開します。デザイナーとして、ブループリントの力を借りて C++ クラスを拡張し、構築するのは素晴らしいことでした。うまく機能するために、あとひとつ変数が必要な場合にプログラマーをてこずらせる必要がなくなりました。Chris はキャラクター向けに見事な Animation ブループリントを構築し、ノードや変数を公開しました。これでアニメーターは、レイヤー化された様々なアニメーションを実行しながら、キャラクターがどのように見えるかが正確にわかります。我々はこの機能を使って「感情ギャラリー」を作成しました。このギャラリーには様々に調整されたキャラクターのバージョンが並んでいます。レイヤー アニメーション セットが様々な感情の状態をどのように読み取るかを簡単にテストできるようにするためです。簡単に使用できるビルトインのスプライン システムからも大きな恩恵を受けました。インタラクティブな橋はスプライン メッシュです。これは再構築なしで配置や長さを簡単に微調整することができます。スプラインを利用して、キャラクターの動きのほとんどを制御しました。

Julian Kantor (ビジュアル エンジニア / アニメーター):
マテリアル システムには、私が特に便利だと思った機能がいくつかあります。いくつかのマテリアル関数を作り、複数のマテリアルでロジックのモジュール部分を再利用することができました。どのマテリアルからでもアクセス可能なグローバル変数を格納するマテリアル パラメータのコレクションもいろいろな状況で役立ちました。こうした機能を組み合わせて使用すると、非常にパワフルな挙動を実現できます。例えば、たったひとつのブループリント ノードで「風の強さ」を設定することができます。これを草、葉、枝、ろうそくの炎など多様なマテリアルに埋め込まれている複数のマテリアル関数の呼び出しに入力します。

『Gnomes & Goblins』は、従来の定義からすると映画でもないし、ビデオ ゲームでもないことは明らかですよね。どういったタイプの体験だとお考えですか?

JR:これは VR がコンテンツ クリエイターに発見と境界を見定める機会をあたえる新しいものです。主役はあなたであり、ワールドを探検し、その住人とインタラクションすることが体験です。個人的には、プレイしたり、見たものというよりは、あなたが生きてきた体験の記憶のようなものだと考えます。座って楽しむ映画のような受け身な体験でもなく、先に進むために一定のスキルセットが必要なゲームのようなものでもありません。エージェントを持ちワールドに存在しますが、ゴールは明確に述べられていません。誰もが独自の物語をつむぐ自由があります。John Bernhelm (リード デザイナー) は、正しいプレイ、誤ったプレイというものはなく、原因と結果という明確な要素がワールドにあると度々口にしていました。

注目を集めるゲームと映像分野で多様な役割を務めるご自身のキャリアを踏まえ、VR の魅力と将来の可能性についてお話いただけますか?

JR:私の考えでは、 VR とはアニメーションとビジュアル ストーリー テリングの最も良い部分を取り入れ、それをインタラクティブ開発とリアルタイム環境でのワールド構築と組み合わせるものです。VR というメディアの境界を押し広げ、オーディエンスを没入させる新しい方法を見つけることに関して適切に理解していることが重要です。『Blu:Whale Encounter』 と 『Gnomes & Goblins』 では、プレイするスケール (大小) とルームスケールのプレゼンスは重要な要素です。今年は VR 開発元年であり、可能性のほんの一部を実現したにすぎません。その未来と、AR の可能性がエンターテイメントと日常生活に及ぼしうることを考えると非常にワクワクします。

Jake、今日はありがとうございました!『Gnomes & Goblins』 を自分で体験するにはどうしたらいいですか? このプロジェクトに関するもっと詳しい情報はどこに行ったらわかりますか?

JR:我々のプロセスや、『Gnomes & Goblins』 制作中に直面した経験について喜んでお話しします。詳しい情報については、 Wevr のウェブサイト または Transport のウェブサイト をご覧ください。Steam や Viveport にも詳しい情報があります。

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