アンリアル・エンジンによってもたらされる多大な利便性は、AAA レベルのゲーム・スタジオやインディー系ゲーム開発者からすでに高く評価されていますが、アンリアル・エンジンの有益性はゲーム制作に限定されるものではありません。
House of Moves は、ロス・アンジェルスにあるモーション・キャプチャおよびアニメーション制作の会社であり、ここ数年来トップクラスに位置します。House of Moves の仕事は、『Gears of War 3』、『Gears of War: Judgment』、『Gears of War: Judgment』、『コール オブ デューティ ブラックオプス 1 & 2』、『ヘイロー:リーチ』、『Dead Space 2 & 3』といった多数の大ヒット作ゲームの中ばかりではなく、『トロン』や『SUPER8』といった本格的な映画の中でも見ることができます。
House of Moves がアンリアル・エンジンを使用して<br/>制作したLevoreact のテレビ・コマーシャルからのフレーム。<br/>House of Moves は、アンリアルを使用して背景すらも作っ<br/>ています (マット・ペインティングではありません)。
House of Moves がアンリアル・エンジンを使用して制作したLevoreact のテレビ・コマーシャルのフレーム。House of Moves は、背景もアンリアルを使用して作っています (マット・ペインティングではありません)。
数年前、ごく短い期間で、大規模かつ高解像度の、放送品質のプロジェクトを制作する仕事が House of Moves に持ちかけられました。その時 House of Moves は、UDK について調べてみました。
House of Moves でクリエイティブ・ディレクターを務める Peter Krygowski 氏は、その時のことを次のように話してくれました。「エンジンを選ぶという段になると、アンリアル・エンジン 3 が最適の選択肢でした。UDK は無料でダウンロードでき、コミュニティとドキュメントも広範囲をカバーしていて頼りになります。最も重要なことは、このソフトウェアがユーザーフレンドリーであるということです。簡単に習得することができました」
しかも単に使い勝手が良いだけではありませんでした。House of Moves はアンリアル・エンジン 3 (UE3) を使用することによって、非常に柔軟に、生産パイプラインのさまざまな段階で変更を素早く加えることができたのです。そのため、イテレーションの速度はアップし、思いついたことをただちに試すことができるようになり、生産効率とクオリティの療法が大幅に向上しました。
House of Moves は、独自なやり方で UE3 をカスタマイズすることができました。たとえば、House of Moves には、Vicon の Blade 2 ソフトウェア上に作った内部ツールがありますが、パイプラインの始まりで、モーション・キャプチャのプロセスのために、このツールをアンリアルをリンクさせるためのソフトウェアを書くことができました。これによって、モーション・キャプチャー・アクターはアンリアルが生成する環境の中をリアルタイムに動くことができるようなりました。そのおかげで、ディレクターは、容易にプリビズ (プレビジュアライゼーション。視覚的なプロトタイピングの一種) を調整することができるようになりました。たとえば、カメラアングルやライティング、エフェクトなどを即座に変更することができるようになったのです。
House of Moves は、パイプラインの最後で、UE3 のクロックを任意のフレーム・レートに固定するコードを書くことによって、映像をフレーム・アキュレートにすることができました。これは、完全に同期したショットの複数のパスを作成するために欠かせません。また、この同期はリップシンクに不可欠であるばかりではなく、ディレクターが前景と背景のエレメントを調整したり、アルファ・チャンネルをともなう再生をしたり、さまざまなカラーパレットと色補正を実験したり、各種エフェクトを試すためにも欠かせません。このようにして、創造的実験のためのイテレーションを高速化できるようになりました。
このように UE3 は、プロジェクトのニーズに合わせてカスタマイズすることができましたが、アンリアル・キズメットやアンリアル・コンテンツ・ブラウザといった UDK に含まれている多数のツールセットについても、使い方を簡単に覚えて仕事に利用できるため、House of Moves は気に入ってくれました。House of Moves のリード・アンリアル技術者を務める Adam Lipens 氏は、次のように語ってくれています。「ツールセットに関して言えば、UDK には、使いやすくスムーズなシステムが各種そろっています。そのため、生産効率とクオリティは大いに向上します」。House of Moves は、特に、コンテンツ・ブラウザとキズメットを評価してくれました。コンテンツ・ブラウザは、アセットを整理して検索しやすくしてくれます。キズメットは、デザイナーとアーティストがプログラマーに頼らなくてもプログラミング上の変更を実装できるようにしてくれます。たとえば、キャラクターの行動によってトリガーされる動的な天候エフェクトの作製などが考えられます。「キズメットを使うと、非常に分かりやすい形でアートと機能を作ることができます」と Adam 氏は述べています。
House of Moves は、アンリアル・エンジンを使った大規模なプロジェクトを計画しています。事業開発マネージャーの Jimmy Corvan 氏は次のように語っています。「アンリアルのパイプラインを通じてレンダリングされるアニメーション・コンテンツを今後さらにリリースする予定です。このパイプラインは、従来のアニメーション・パイプラインに比較すると、かなりの資源節約になることが分かりました。ですから、これからも間違いなくアンリアル・エンジンを利用して完全にアニメート化された作品を開発、公開していくことになるでしょう」