『Wakamarina Valley, New Zealand』『No Straight Roads』『Project Witchstone』の開発者たちが考えていること

Stu Horvath
「アンリアルが大活躍」の新たなまとめを掲載します!Unwinnable で私たちは、引き続いて、デベロッパーたちの個人的な話を発掘してきました。Unreal Engine による興味深いプロジェクトの背景にある挑戦とインスピレーションについて調べてきたのです。今回は、戸外での散策、ロックと EDM (エレクトロニック ダンス ミュージック) の戦い、テーブルトップ ロールプレイング ゲームの自由度をビデオゲームに導入するタイトルに関わるお話を紹介します。
画像協力: Matt Newell 氏

森の中での長い散歩

Matt Newell 氏は、環境デザイナーとして、3 本のゆったりとした、フォトリアルな探索経験を制作しました。その作品は、『Wakamarina Valley, NZ』、『Mýrdalssandur, Iceland』、『Explore Fushimi Inari』です。私は彼にインタビューして、どのようにしてこのような環境を作るのかとか、長い散歩の意義や風変わりな新たな場所による魔法について尋ねてみました。
 
「現実の空間の再現性はある程度確保されているものの、作品はむしろ記憶による解釈の産物であり、物理的に一対一対応するように再現されているものではありません」と Newell 氏は言います。「記憶による影響を描画するということは、何らかのユニークな要素を追加して、リアルな経験を表わすということを意味します。たいていは、音楽や色といった形態で表現することになります。」

これらのゲームには写真撮影の仕組みが含まれているため、さらにメタ的な感覚がこれに加わります。「写真は、その場所場所を経験して記憶に留めておく場合に非常に重要なものです」と Newell 氏は言います。「だから私は、写真をゲームの仕組みとして加えたのです。私が現実世界の土地を探索するときに好んでとる方法がかなり反映されています。ただし、新たな場所を歩き回る場合、しばらくカメラを置くことも大切ですね。」

あるいは、これまで訪づれたことのない場所。Newell 氏はアイスランドに行ったことがありません。Mýrdalssandur は、Quixel Megascans ライブラリに所蔵されているアセットに触発され、Google で見つかった写真を参考に制作されたものなのです。それにもかかわらず、Newell 氏が手掛けた他のプロジェクトと同じように、依然として記憶による制作の雰囲気が醸し出されています。あるいは、夢の中の場所とも言えます。
画像協力: Metronomik

『No Straight Roads: Rock Will Never Die』

Metronomik 制作による『No Straight Roads』は、音楽がフィーチャーされた新たなアドベンチャーゲームです。二人組のガレージバンドが街に繰り出し、EDM を好む悪の組織から街を取り戻そうとします。スタジオの共同設立者である Daim Dziauddin 氏が語ってくれたのは、リズムベースではない音楽ゲームを制作するときの問題についてです。さらには、音楽がどのようにして人々を結びつけるか、そして、好きなバンドのリフ (特徴的な反復的フレーズ) についても話してくれました。
 
ゲームを見るとすぐに、ロックと EDM に敵対的な関係があるはずだ、と分かるかもしれません。そのとおりです。『No Straight Roads』に登場する悪者は EDM を好んでいます。そのため、ゲームは EDM で満ちています。

「EDM が嫌いだからゲームの敵役にしたのではありません」と Dziauddin 氏は言います。「むしろ、このジャンルの音楽は大好きです。だからこそ、ゲームのテーマに据えるとクールじゃないかと考えたのです。」これは、もっともなことです。EDM が嫌いなのに、『No Straight Roads』のようなゲームを作るならば、悲惨なことになったでしょう。『No Straight Roads』では、敵役は音楽ではありません。組織なのです。

物事をバイナリに落とし込み、あらゆるものを戦いと見なし、現在のビート人気はギターの犠牲のもと出現したものであり、ロックは死んだと考えるのは安易です。実際は、音楽は常に変化しているということなのです。確かに、かつて中心に位置していたギターは、スポットライトから外れるようになりました (同じことがバイオリンやピアノ、ハープシコードにも起きました。何世紀にもわたって)。しかし、ほぼあらゆるミュージシャンのライブであっても、最低一人のギタリストを擁するバンドに支えられているのが常です。また、重度のメタル志向の人たちでもラナ デル レイを聴きます。つまり、真実は、音楽にまっすぐな道などないということです。悪者とは、人気の音楽と行動の規範を押し付けようとする人のことなのです。

「ファンの間で競争が生じたとしても、悪意とは無縁であってほしいと思います」と Dziauddin 氏は語ります。「相違というものは、喜ぶべきものであって、敵対するべきものではありません。」
画像協力: Spearhead Games

『Project Witchstone: The World is Yours』

テーブルトップ RPG (TTRPG) の世界では、70年代後半以降、ビデオゲームの可能性が認められてきました。コンピュータは、機構的なものを処理するのに非常に優れていますが、テーブルトップがもつナラティブの自由度に伍することはこれまでありませんでした。しかし、このことも Spearhead Games の『Project Witchstone』が登場したことにより変わるかもしれません。このゲームでは、プレイヤーが行うあらゆる決断が予期せぬ結末を呼ぶ可能があります。
 
自由度は、昔ならコンピュータによって十分には提供されませんでした。TTRPG は、精神の中にある舞台で上演されるものです。まさに、どんなことでも起こり得ます。賢さも不条理も等しく楽しいもであり、空想の世界にさまざまな影響を与えます。一方、コンピュータは、人間の知性の集合から成る柔軟性と気まぐれにはかないません。TTRP のシステムをお手本にした初期のビデオゲームは、リニアであり、事前に台本が書かれたものでした。『Dragon Age』や『The Witcher』といったゲームのビジュアルは確かに見事なものでしたが、ナラティブについてはまだ太刀打ちできるものではなかったと言ってよいでしょう。選択して結果を得るという錯覚が、限られた分岐ナラティブによって構成されていたのです。この様相を間もなく変えるかもしれないのが、モントリオールのスタジオ Spearhead Games です。

「私たちは、テーブルトップのゲームを進行させるゲームマスターの感覚を、プレイヤーのために追い求めています」と Tam 氏は言います。「たとえば、AI のゲームマスターによって、キャラクターは、プレイヤーを捉えて亡き同胞の敵を取ることができます。つまり、AI のゲームマスターは、プレイヤーが殺したキャラクターに同胞がいるということがわかっていて、そのプレイヤーを安全に攻撃できる瞬間を待ち、その同胞とプレイヤーを対峙されることになります。そのプレイヤーが反撃するか、説得して衝突を回避するのかにかかわらず、プレイヤーの決定とシナリオの結末が記録され、将来の結果に寄与する条件として使われることになります。プレイヤーの入力を記録し続けるシステムを使って、それに対応するさまざまな規模の結末を出力できることになります。NPC が戦闘に飛び込んでプレイヤーを助けるとか、組織が暗殺者を送り込んでプレイヤーを殺害するとか、事前に決定されていることは何もありません。あらゆることが、プレイヤーの行動から生じるのです。」
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