2012年8月22日

アンリアル・エンジン 3 と Kinect が動かす『Fable: The Journey』

作成 John Gaudiosi

Lionhead Studios が Microsoft の Kinect for Xbox 360 を中核に据えて制作している『Fable』シリーズ最新作、『Fable: The Journey』は『Fable 3』から数年後の世界を舞台としたタイトルで、シリーズのファンにアルビオンの新たな一面を見せてくれます。

本作の主人公、旅商人ガブリエルはこれまでの『Fable』シリーズを陰ながら支えてきた預言者テレサに導きかれて英雄へと成長していきます。シリーズ最新作となる本作は アンリアル・エンジン 3(UE3) を用いて開発が進められていて、Kinect テクノロジーを余すことなく利用することを前提に発案されています。

「Kinect の採用により、プレイヤーをより深く世界に没入させられるようになりました。こと一部の操作において、 Kinect はボタンでは決して再現できない身体性を生み出せます」とは Lionhead Studios のリード レベル デザイナー Charlton Edwards の言です。

Lionhead Studios シニア スクリプターの Ben Brooks 氏によれば、本作でアンリアル・エンジン ゲーム ツール を採用したことにより従来の社内ツールでは不可能だった方法で開発が進められるようになり、同スタジオのレベル デザイン チームとゲームプレイ スクリプティング チーム (総勢 19 名) はこれまでの『Fable』シリーズ以上に綿密な連携をとれるようになったといいます。

Fable: The Journey

「レベル デザイン チームとゲームプレイ スクリプティング チームは、アンリアル・キズメットをゲーム世界製作のメイン ツールとしています。プロトタイプ作成の高速化も実現できましたし、ビジュアル インターフェイスのおかげで技術的なバックグラウンドを持たない人でもクエストを作れるようになりました。ツールが使いやすいことが、チームとしての自立性を大幅に強化してくれたのです」 (Brooks 氏)

Brooks 氏はまた、アンリアル・マチネ の存在がスタジオにとっての天啓であったと述べています。これまでのプロジェクトでカメラを配置する際には、カメラの位置情報と複数の方向ベクトルを記述し、スクリプトを使ってベクトル間を補間するという手間と時間のかかる作業を行う必要がありました。 それが今作ではマチネを使ってカットシーンを作成できるようになったため、シーンをより精密に作り込んで品質を向上させられるようになったのです。

また Edwards 氏は、レベル デザイン担当の 9 チームのうち、アンリアル・エンジン の使用経験があったのは 2、3 チームだけであったと明かしています。これまで使用したことのないチームの学習曲線はかなり緩やかなものだったそうです。

Fable: The Journey

「ここでの骨子は、例えて言えば、誰もボンネットを開けていじくり回し、最後にボンネットに頭をぶつけるようなことをしなくて良かったということです」 (Edwards 氏)

レベル デザイン チームにとっては、マチネとキズメットを活用してパズルや環境アニメーションをブロック アウトし、誰かに見せたいアイデアを実際に組んだり、新しいアイデアを試したりできたことが大きかった、と言います。アイデアが思いついたら興奮醒めやらぬ状態で紙に書きなぐって他人に見せる、などという行為が不要になったわけです。

「UE3 を導入する決め手となったのは、UE3 ツールの存在とイタレーションが可能な点でした。私は、コンテンツの作成担当者の顔に笑顔を取り戻したかったのです。彼らが自由にコンテンツを触れて改良できて、さらに必要なツールとサポートが揃っていると感じてもらえるように」とはLionhead Studios のテクニカル ディレクター、Marcus Lynn 氏のコメントです。

Fable: The Journey

Lynn 氏によると、UE3 の評価プロセスを開始する際にまず最小構成のチームを組んだそうですが、メンバーはほとんどの機能について予想通りの速度で初級レベルに達することができたといいます。また同スタジオではプロジェクトに新規加入するエンジニアにはまず、UE3 を使って面白いものを作る期間が 2 週間与えられることになっており、この取組みは上々の成果を挙げているといいます。

Lionhead ではこの他 アンリアル・ランドスケープ や Foliage (葉) エディタといった別途提供されるアンリアル・エンジン ・テクノロジー ツールも採用しており、メモリのオーバーヘッド削減やパフォーマンス改善に役立てています。

「このプロジェクトでは、欠落感やつぎはぎ感を感じさせない世界ができましたよ。行く先々に素晴らしい景色が広がり、真の意味でのスケール感があり、壮大な世界を踏破している感覚を生み出す世界が創り出せた、と自負しています」(Edwards 氏)

また、ゲームと Kinect を融合させる開発プロセスも順調に進みました。開発チームは Kinect の初期化と更新を適切な時期に行うよう徹底した上で、各インターフェイスをゲームプレイ/レベル スクリプターが UE3 上で戸惑うことなく扱える状態に保つよう細心の注意を払いました。

「アンリアル・デベロッパー・ネットワーク (UDN) は開発者と Epic の両者が抱える共通の問題を解決する上で大変重宝しましたし、フォーラムの過去ログや他の開発者が書き込んだ情報はちょっとした疑問の答えや解決策を探す上で非常に有用でした」(Lynn 氏)

タイトルの開発はまもなく完了ですが、開発チームは結果に満足しているようです。

「温もりあふれる世界ができたと思います。高フレームレートを維持しつつも映像のディテールで妥協しないよう、全力を尽くしましたよ」(Edwards 氏)

Lionhead Studios は 3 作続いた同スタジオの看板 RPG シリーズ『Fable』の続編を世に送り出すにあたり、これまでコンソール上で同シリーズが実現してきた革新性と Kinect テクノロジーの組み合わせを楽しんでもらえることを願っています。