7.10.2018

Daedalic の『State of Mind』のストーリーとゲームプレイに対するユニークなアプローチ

作成 Daniel Kayser

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私たちの日常生活においてテクノロジーが果たす役割は大きくなるばかりで、そのことが、社会のあり方を劇的に変化させています。テクノロジーは、高度に最適化され誰にとっても有益なユートピアの実現に向けた人類の進歩において、中心的な役割を担っていると考える人もいるでしょう。一方で、テクノロジーへの過度な依存は、望ましくない未来、ひいては人類全体にとっての危機を招くかもしれないと考える人もいるでしょう。

これらの可能性については、社会全体の広い観点から語られるのが常です。しかし、Daedalic のチームは、これらの可能性が個人のレベルで私たちにどう影響するかについて、より強い関心を持っています。State of Mind では、プレイヤーは、ばらばらになった自身の存在をつなぎ合わせようとする主人公、Richard Nolan の目を通して、ディストピア的な未来を経験します。

State of Mind のビジュアル スタイルは特徴的で目を引くものですが、ストーリーとゲームプレイの面で、このユニークなエクスペリエンスを通じてプレイヤーは何ができるのかについては、開発期間を通じて謎に包まれていました。

先日、State of Mind の製作者、Daedalic の Martin Ganteföhr 氏に話を伺うことができました。State of Mind のストーリーとゲームプレイについて、また、このプロジェクトを実現させるうえでアンリアル エンジンが果たした役割について話を聞きました。
今日はありがとうございます、Martin さん。State of Mind の構想はとても興味深いものですね。ゲームのストーリーの概要と、チームがどこからインスピレーションを得たのかについて教えていただけますか?

はい。あまりネタバレにならない程度に。State of Mind は、トランスヒューマニズムがテーマのハイテク スリラー ゲームです。2048 年が舞台で、ベルリンに住む子持ちのジャーナリスト、Richard Nolan がストーリーの主人公です。ゲームの序盤で、Richard は大きな事故に遭い、悲惨な状況に陥ります。記憶に問題が生じ、妻と息子は行方不明になり、キャリアの危機を迎え、まさに失意の人、といった状態になります。しかし、それからまもなく明らかになるように、Richard のその状況は、単なる不運の結果ではありません。それは、彼に対して仕組まれていた運命だったのです。何か大きな、良からぬことが起きている、そう気付いた Richard は、ドラマチックな旅に出て、家族と自分を取り戻し、真実を見つけようとします。そのためには、自分に何が、なぜ起きたのかを明らかにしなければなりません。

インスピレーションの主な源泉となったのは、間違いなく、トランスヒューマニズムを支持するライターや思想家による理論と予測です。トランスヒューマニズムは、シリコン バレーのハイテク界隈では最も影響力のある信念体系となっていると言っていいでしょう。人工知能、ナノテク、バイオエンジニアリングの分野における指数関数的な発展への信頼に基づく、非常に現実逃避的でユートピア的なアイデアです。これは確かに魅力的な将来像であり、地球上で最も賢く、裕福で、影響力のある人々によって予測され、追求されています。しかし、何か誤った方向に進んでいくということはあるのでしょうか。それがこのゲームを突き動かす問いです。
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ゲームの舞台は 2048 年のベルリンですね。なぜベルリンにしたのですか? State of Mind の設定に影響する、ベルリンならではの何かがあるのですか?

ゲームの舞台は大都市にしたいと考えていました。テクノロジーと社会に関する将来の発展が最も大きな影響を持つのは大都市だと思うからです。現在でも、都市に暮らす人が増加する一方で、小さな集落や農村地域は見捨てられつつあります。ほとんどすべての国には、変化が迅速に生じ、テクノロジーがいち早く適応し、スタートアップ企業が破壊的な変化を早期に引き起こす、特定の大都市や地域があります。ドイツに住み、Daedalic でドイツのデベロッパー兼パブリッシャーとなっている私としては、身近にあるベルリンを選ぶのはごく自然なことでした。私たちはベルリンのことを知っているので、ベルリンで展開するストーリーを正確に語ることができます。また、こちらのほうが重要なことかもしれませんが、ベルリンはゲームの根底にあるテーマに対応する場所として、興味深いところです。ベルリンは分断された都市としての歴史を持ち、個人的なドラマや政治的なドラマが展開されてきました。ゲームの中では、主人公のストーリーは分断に関するものです(Richard 自身の分裂と、家庭の分断)。また、明らかに、ゲームの 2 つの世界は分断されています。

そういったわけで、ベルリンはさまざまな意味で完璧にフィットしました。

主人公の Richard Nolan について、また、ジャーナリストであり、ディストピア的な現実とデジタルのユートピアに引き裂かれた世界で生き延びようとする 1 人の人間でもある、Richard の目的について教えてください。

Richard の主な目的は、自分自身と生活を取り戻して 1 つにすることです。ゲームが始まった時点では、Richard の人生はばらばらになっています。その破片を集めて組み合わせるということが、彼の最大の望みです。その点では、Richard の職業は、個人的な旅路と密接につながっていると言えます。調査の結果得られた断片からストーリーを組み立て、全体像を明らかにして真実を見つけ出す。それは、Richard がジャーナリストとしてやっていたであろうことであり、プレイヤーがゲームを通じて Richard とともに取り組んでいくことでもあります。

もっと抽象的なレベルでは、人間として、ジャーナリストとしての Richard の危機は、彼を取り巻く世界を反映したものでもあると思います。「現実」という概念が解体されつつあり、代わりになる世界、代わりになる存在の形があるなかでは、「真実」を見つけ出すことはおろか、定義することすら難しくなっていくでしょう。
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State of Mind のアート スタイルは独特なすばらしいもので、ゲームをすぐ見分けられるようになっています。アート スタイルについては最初からこのアプローチをとっていたのですか? それとも作業を繰り返すなかでこのように発展していったのですか?

長い過程を経て今のようなアート スタイルにたどり着きました。いくつかのコンセプトを試し、多くのドラフトが破棄されました。ビジュアルが関与するプロジェクトでは、これはごく普通のことだと思います。当初から、State of Mind のビジュアルを極めて現実に近いものにしようとは考えていませんでした。「2048 年の世界はこうなる」と言いたいのではなく、このゲームでは、考えられる 1 つのシナリオを示しているのです。それを反映して、アート スタイルは、やや現実的、というものにしました。また、ゲームのストーリーは、何かを探しているキャラクターたちに関するものです。キャラクターたちは、疑問を抱えていて、自身の現実と仮想的なユートピアの間で引き裂かれています。キャラクターの外見が断片的であることは、シナリオにおける 2 つの世界の対立と、人々の内なる戦いを象徴しています。つまり、これは断片化と破片についてのゲームであり、欠けたところがあるビジュアルはそれを反映している、ということです。

ゲームプレイについて伺います。State of Mind では、プレイヤーは実際には何をするのですか?

それは簡単には説明できません。State of Mind はサイファイ スリラーです。ゲームプレイにはさまざまな要素がありますが、最も大きいのは、おそらく調査の要素です。プレイヤーは Richard とその家族に何が起こったのかを明らかにする必要があります。そのために、会話をしたり、アイテムを使ったり、道具やデバイスを操作したり、時にはキャラクターを切り替えたりします。何よりも、予測していなかったような劇的な瞬間やゲームプレイのタスクを通じて、感情を揺さぶるような体験を届けることを目的としています。ゲームの中心となる謎は、ストーリーの中にあると言えます。
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State of Mind には、アクションやアドベンチャーのジャンルにこれまでなかったゲームプレイの要素または仕掛けがありますか?

ストーリーを伝える方法に特徴があります。2 つの世界で 6 人のキャラクターを操作し、そのうち 2 人は、過去と未来についての真実を明らかにするために協力する必要があります。Richard の主な目的、「1 つの自分を取り戻す」ということは、ゲームの構造を反映しています。断片化したストーリーで、複数の視点があり、場所、キャラクター、時間が飛び飛びに入れ替わります。Richard の state of mind(精神状態)は、まさしく断片化しています。Richard の行動、プレイヤーによる Richard の操作によって、ストーリーが組み立てられていくのです。

これまで、State of Mind をいくつかのイベントで紹介していらっしゃいますね。プレイヤーからの反応はどのようなものでしたか? プレイヤーからのフィードバックをゲームの最終バージョンにどのように取り入れましたか?

これまでのところ、フィードバックは非常に好意的です。最初にプレイヤーを引きつけるのは、間違いなくビジュアルのスタイルです。そこからプレイヤーが興味を持ってくれるようです。面白いことに、ストーリーや全体的な設定について理解すると、ほとんど誰もがゲームの状況について意見があるようでした。自分自身にとってあり得る未来だと感じたのでしょう。プレイヤーの意見を引き金に、多くの議論が生じています。それはまさに、私たちがこのゲームで成し遂げようとしていることです。

ショーの会場でベータテストを実施してフィードバックを直接収集するというやり方は、いつもやっているものではありません。社内外で多くのテストを行い、経験豊富なレビュアーに、リリース前にゲームをプレイしてもらっています。確かに、公開イベントでのフィードバックも考慮しますが、そういったフィードバックも、内部でのフィードバック プロセスに組み込んでいます。内部でのフィードバック プロセスでは、管理された体系的な方法で評価を行っています。
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アンリアル エンジンは、マルチプラットフォームのタイトルを開発するうえで、どのように役立ちましたか?

とても役に立ちました。私たちは、6 つの SKU を並行して開発しました。それぞれ、PC、Mac、Linux、PS4、Xbox One、Switch 版の SKU です。このようなことが可能になったのは、アンリアル エンジンの SDK の連携とマルチプラットフォームのサポートが非常に優れていたおかげです。プラットフォームごとに、UI とゲームプレイについて前もってある程度考慮しておけば、とてもスムーズにポートできます。

アンリアル エンジンはグラフィック処理性能にも優れていて、アーティストにとっては夢のようなものです。エンジンのオプションは、イエローページに載っている Millers の数よりも多いですね。並外れたビジュアルのゲームを作成できます。制限について心配することなく、State of Mind の特徴的なビジュアルを作成できました。

マルチプラットフォーム向けの開発という点では、ブループリント システムによって、イテレーションのプロセスを大幅にスピードアップできました。プログラマーやスクリプターにとって順応しやすいもので、すぐにプロダクションに入ることができました。また、直感的に使えるシステムで、サウンド エンジニア、3D アーティスト、レベル デザイナーも、スクリプターやプログラマーの助けを借りることなく多くの作業を行うことができます。同様に、FX アーティストはブループリント システムと組み込みのパーティクル システムからメリットを得ています。
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アンリアルで特に便利だったことはありますか?

たくさんあります。アンリアルによって生産性が大きく向上したことが特に役立ちました。State of Mind は、ストーリーによって牽引されるゲームです。イテレーションのスピードを上げる方法が必要でした。また、ストーリーの比重が高いため、シーンの演出、会話の変更、カットシーンの作成をエンジン内で行う強力で簡単な方法が必要でした。シーケンサーはカットシーンと演出の両方において強力なツールです。すべてのカットシーンの作成とすべての演出にシーケンサーを使用しました。シーケンサーの機能を拡張してくれてとても嬉しいです。これからもシーケンサーを最大限に活用していきたいと思っています。活用法について、すでにいくつも新しいアイデアを練っているところです。

本日はありがとうございました。State of Mind はいつリリースされますか? ゲームの詳細情報はどこで確認できますか?

2018 年 8 月 16 日に、すべてのプラットフォーム向けにリリースします。SteamGOG では、State of Mind の PC 版を先行予約していただけます。Reddit ページで、最新情報や新しいアセットを定期的にお届けしています。もちろん、Daedalic を Facebook または Twitter でフォローしていただくこともできます。

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