2010年10月5日

Ninja Theory Takes an Odyssey with Unreal Engine 3 for Namco Bandai Action Game

作成 John Gaudiosi

高い評価を受けている PlayStation 3 のアクション ゲーム「Heavenly Sword」を開発した Ninja Theory 社は、最新ゲーム「Enslaved: Odyssey to the West」の開発に Epic Games の Unreal Engine 3 の技術を採用しました。今回の開発では、約 80 名の主要スタッフを含む大規模なチームを結成。社内のゲーム エンジンのアップデートより、スタッフのクリエイティブ能力に焦点を当てて、構想されたすべての目標を達成すべく、バンダイナムコ ゲームス発行のこのアクション アドベンチャー ゲームの開発を推進しました。

「『Heavenly Sword』では独自のエンジンとツールセットをすべて自社開発しましたが、その開発には多くのリソースを割く必要があり、そのツールセットを継続的にアップデート/改善し、必要な新機能を追加していくには、同様に多大な労力が要求されました」と、Ninja Theory の共同創設者である最高技術「責忍者」Mike Ball 氏は語ります。「マルチプラットフォームのゲーム開発を決定した時点で、繰り返されるゲームプレイをより短時間で開始可能にするために Unreal Engine 3 の導入も決定しました。そして、チームのワークフローを効率化して開発時間を最大限活用することを目標としていましたが、Unreal Engine 3 のおかげでこれを達成することができました」

Enslaved

Ball 氏は、Unreal Engine 3 を選択した理由のひとつはその即戦力だった、と説明し、グラフィック担当者とデザイナーは、導入後すぐに試行錯誤を開始でき、短時間ですばらしい結果を出せるようになった、と続けます。

「事実 Unreal Engine に関しては、学習用の参考書やビデオが出版されています」と氏は述べます。「当社では主に、三人称視点のアクション アドベンチャーを視野に入れて、市場で実績のあるマルチプラットフォーム対応エンジンを探していました。また、デザイナーやグラフィック担当者がその能力を存分に発揮できるということもエンジンの条件でした。当社の以前のエンジンは、過去の実績にもかかわらず、この点を欠いていました。ニーズに対応することができなかったのです」

Heavenly Sword に対しては総プレイ時間の長さに関する批判もあったため、将来的なプロジェクトではこれが大きな課題となっていました。プレイヤーが探検や行動できる、過去のゲームより格段に広くなったプレイ環境の作成には、Unreal Kismet のビジュアル スクリプト ツールが大いに活用されました。このツールにより、長くなったゲームプレイ全体にわたって豊かなバラエティを持たせることもできました。Ball 氏が説明するように、結局はこれがプレイヤーの心をひきつけておくための重要な鍵となるのです。

Enslaved

Enslaved のストーリーは、伝説に基づいて書かれた 400年前の中国の物語「西遊記」がベースとなっています。Ninja Theory は、80年代のテレビ番組「西遊記」でこの物語について知ることになりました。この物語には、ポップ カルチャーの分野でも非常に異なるバージョンが数多く存在しますが、Enslaved は、世界の終末後の未来が舞台となっています。この未来世界では、魔法はテクノロジーとして、魔物は、忘れ去られた戦争の遺物であるメカとして登場します。

「この奇怪でマジカルな旅には、3 人のメイン キャラクタが登場します」と、共同創設者であると同時に最高デザイン「責忍者」も務める Tameem Antoniades 氏は語ります。「プレイ可能なキャラクタは Monkey のみですが、この Monkey が、メカとの戦いやターザンのようなアクションを繰り広げます。彼は伸縮自在の棒を持っていて、これでメカたちを攻撃したり、攻撃範囲の広い武器として使ったりします。また、ゲーム内の一部では「クラウド (雲)」というホバーボードを使うこともできます」

もうひとりの登場人物 Trip は、盗んだヘッドバンドを使ってモンキーを奴隷のように扱うハッカーです。彼女は、独りではこの旅を乗り切ることができないので、Monkey の助けを借りて家に帰ることを望んでいます。彼女でプレイすることはできませんが、Monkey がパズルを解く手助けをしてくれます。途中で旅に加わる Pigsy は爆発物と射撃のエキスパートで、片手がフックのようになっているため、ほかの 2 人が行けない場所にも行くことができます。この 3 人がそれぞれの違いにもかかわらず協力し合って幾多の試練を乗り越え、旅を続けていきます。

Enslaved

Ninja Theory がすばらしいのは、このようなキャラクタ (とプレイヤー) が冒険する環境が美しく描き出されているという点です。アート ディレクターを務める Alex Taini 氏と Stuart Adcock 氏は、Heavenly Sword と並ぶこの美しいグラフィックを今回の作品でも実現した重要なスタッフです。彼らの作業は、すべてのシーンにおいて、カラー、光源処理、動きという 3 つの原則がベースとなっています。Ball 氏は、Unreal Engine 3 を使用することによってグラフィック担当者の自由度がさらに増した、と語っています。また、より高度な開発ツールのおかげで開発チームは、これまで以上に環境内のディテールにこだわることができたようです。

「これは、私達が表現したかった New York を描写するのに非常に重要でした」と Ball 氏は語ります。「世界破滅の後に捉えられ、必死に脱出しようとする人々のストーリーを、環境の各種要素を通じて伝えたい、と思いました。シェーダーとポストプロセスのチェーンの管理をグラフィック チームに任せたため、破滅シーンとの劇的なコントラストを醸し出す美しいシーンを構築することができました」

Unreal Engine は、Gears of War などのような三人称視点のシューティング ゲームの開発ツールとしても知られています。Antoniades 氏は、チームの主な目標は、Enslaved での戦闘を、毎回死ぬような思いで戦わなければならないほど危険極まりないものにすることだった、と説明します。

「カメラでの実験を何度も行い、すべての攻撃が大きなダメージに感じるような、プレイヤーを熱中させる戦闘システムを目指しました。テイクダウン攻撃や必殺技にはズームアップを使用して、Monkey への感情的なインパクトも表現できるようにしました。メカたちとの戦闘は、とても映画的な演出に仕上がったと思います」

Enslaved

このゲームにフレッシュなスパイスを加えているのは、以前の戦争で取り残されたメカたちです。普段は死んだように静かですが、いったん作動すると、カンボジア、アンゴラ、アフガニスタンに現在埋設されている地雷のように、誰彼構わず殺戮を開始します。その結果、世界中に恐怖感、危機感、緊張感が張り詰め、緑豊かな風景との鮮やかなコントラストを生み出しています。

開発期間中、Ball 氏とそのチームは、Unreal Developer Network を通して Unreal Engine のほかのライセンシーとコネクションを持ちました。Ball 氏は、このコミュニティは、Unreal Engine 3 を使用する上で非常に心強いサポートになった、と語り、技術的な質問に対しては、Epic から回答が届くよりも前に、世界各地のほかの開発者から回答が寄せられることも多々あったと述べています。

その結果、ビジュアルと革新的なゲームプレイの枠を超えて進化を続ける、プレイ時間も長くより充実した内容のヒーロー アクション ゲームが完成しました。