2015年8月12日

ドラマ『DEATH NOTE(デスノート)』

作成 Shinji Watanabe

ドラマ『DEATH NOTE(デスノート)』
Unreal Engine 4使用事例

デジタル・フロンティア UnrealEngine 担当  渡辺伸次

TVドラマというハードルをどう越えるか?

映画『DEATH NOTE(デスノート)』ではMAYAを使用していたが、ドラマという厳しいスケジュールで死神CGキャラクターを動かすにはかなりの工数削減が必要で複数のリアルタイムエンジンを検証した結果、ゲームエンジンであるアンリアルエンジンでTVドラマのクオリティを維持しつつスケジュールに合わせられる事がわかりワークフローに実装することになった。映画ではデスノート前編の総カット数は70ショットだが、ドラマ1話目では特番90分ということもあり90ショットとすでに映画のカット数を大きく超えていた。映画と違いTVドラマでは撮影から2週間でオンエアーになり、非常に厳しいスケジュールの中で、最初の1週間ではオフライン映像が上がってきた段階でカメラのマッチムーブ処理をし、モーションキャプチャー撮影を行いアニメーションを制作、残りの1週間でアンリアルエンジンでカットシーンを構築しAfterEffectsにて合成作業を行う。モーションビルダーからアンリアルエンジンへの直結のワークフローにしたことでMAYAを介さずドラマにあわせたパイプラインを実現した。 そのため、揺れるアクセサリーや髪の毛などの物理シミュレーションはアンリアルエンジンとモーションビルダーのリアルタイムシミュレーション設定をすることでMAYAを介さず作ることが出来た。また、フェイシャルアニメーションもモーションキャプチャーと同時にフェイシャルキャプチャーを行いフェイシャルアニメーションはモーションビルダーで完結しアンリアルエンジンに流し込んでいる。MAYAでこれらのアニメーション作業を行っているとTVドラマでは納品が全く間に合わなかっただろうと想像する。

映画クオリティの維持

10年前に制作した映画版のクオリティに近づけることが今回の目標だった。そのためまずモデリングデータは映画で使ったアセットをハイメッシュ化しアンリアルエンジンに実装。物理シェーダーでの設定を行い4K(4224x2376/4K+10%)という高解像度でレンダリングしている。現状のアンリアルエンジンのアンチエイリアスのクオリティではちらつきを抑えることが出来なかったため高解像度でレンダリングし縮小して使用した。これだけの高解像度でもレンダリングスピードは遥かに速く1秒/f程度で済んだ。今回は実写合成を行うためAfterEffectsで合成を行うにあたり各パスを出力できるようアンリアルエンジンのカスタムパラメーターでキャラのシェーダーセットが変わり簡単にパス出力できるよう開発に仕様を出し作ってもらった。パスの種類は以下になる。

  • ビューティー
  • キャラマスク
  • キャラパーツマスク4種類
  • デプス(奥行き/縦)
  • 反射
  • BGシャドウ
  • アンビエントオクルージョン

これらのパスを元に他のプロジェクトと同じワークフローを構築している。その他、サブサーフェースや目の明るさなどキャラ独自の細かい設定もこちらのパラメーターで簡単に変更できる。

リアルタイムエンジンの可能性

レンダリングエンジンをアンリアルに置き換えるにあたってもちろんいろんな問題が発生した。アンチエイリアシングやシャドウノイズのちらつき、半透明オブジェクトのソート問題などはかなりの割りきりが必要だった。また、16bitで素材を出すことが出来なかったため、マチネのムービー出力 機能を使わざるをえなかった。今後はソースをカスタマイズしマルチパス16bit出力する機能を盛り込む予定である。将来的にはAfterEffectsのようにマスク機能なども盛り込み、アンリアル上で合成していくなんてことも出来るかもしれない。そうすればAfterEffectsなどのポスト処理も必要なくアンリアルのモーションブラーや被写界深度など設定したまま合成でき、さらにスピーディーなワークフローが出来るのではと思う。4K8K時代ではこれらリアルタイムエンジンをどう使っていくかがCG屋の課題になってくるのではないかと感じた。

 

※デジタル・フロンティアのテレビドラマ「デスノート」メイキング記事はこちら。
http://www.dfx.co.jp/cgmaking/deathnote/index.php