最新ニュース - HDFilms 社、Convergence と Chadam の Web シリーズ Gamasutra について語る
ロサンゼルス発 – Epic Games の Unreal Engine 3 の技術は、ゲームの世界だけに留まらず、ハリウッドにまで進出しつつあります。HDFilms は UE3 をライセンス契約し、高い評価を受けているアーティスト Alex Pardee 氏による「Chadam」という奇想天外な世界を、10 話からなる 50 分間の Web シリーズとして実現し、ワーナー ブラザースのテレビ配信グループから配信することになりました。
HDFilms の創設者 Jace Hall 氏は、自身の開発スタジオ、Monolith でビデオ ゲーム業界でそのキャリアをスタートさせています。ハリウッドに進出し、過去数年間にわたって Warner Bros. Interactive Entertainment 社のトップを務める前は、市場に出回っているゲーム エンジンの動向を調査する立場にありました。
「当社独自の 3D Lithtech Engine 技術を外部へライセンス供与し始めて以来、ライセンスを供与することが私の仕事の一部となりました。現在では、Monolith はその技術を外部に提供していませんが、その当時は、3 つのエンジンが競い合っていました。Unreal Engine、d Software社の Quake Engine、Lithtech Engineｍ の 3 つです。職務をきちんと果たすためには、これらすべてのエンジンについて、機能や進歩のスピード、操作環境などを詳細にわたり常に正確に把握している必要がありました。当社独自の技術があったため、Unreal Engineを私自身で使用必要はありませんでしたが、もちろん Unreal Engine は長年の仕事を通じて携わってきた技術でしたから、その仕組み、長所や短所については理解していました。このプロジェクトについて検討した時、その目的に対してどの技術が最も有効であるのか、私には容易に評価することができました。Unreal Engine 3 が、他を圧倒していました」と Hall 氏は語ります。
Epic Game 社では、グラフィックや物理処理で他のエンジンの一般的なレベルをはるかに上回る改良を加えていたことを、Hall 氏はそれまで見ていました。ハリウッドの制作関係者にこの技術をライセンス供与する上で重要な点は、同社が重視してきたツールの向上にあった、と Hall 氏は語ります。
「Epic Game 社では、複雑なシステムでなければできないようなことを、多くの人々ができるだけ簡単に使えるように努力しています。過去と現在の Unreal の違いは、そのツールセットが以前より格段に洗練されているという点です。さらに同社では、映画やテレビのプロダクションが、制作現場でほぼリアルタイムで使えるようなユーザー インターフェイスを開発しました。UE3 を使用することは、質の高い 3D アニメーションを非常に明確なコスト管理の下に制作できる、ということを意味します。実現可能なこととそのコストのバランスについては、妥協が必要です。エンジンのインターフェイスとなる、文字通りのシネマティックス シーケンス ツール Matinee などのツールを追加することで、そのツールセットで最も費用効率の高い 3D を作成することができるようにしたのです」と Hall 氏は述べています。
Hall 氏とそのチームが制作しているのは、世界の滅亡をたくらむ Viceroy という連続殺人犯に対する Chadam の戦いに焦点を当てたストーリーです。チームは、Pardee 氏によるオリジナルのキャラクタ モデルと風景のデザインに UE3 を活用しています。全エピソードの制作期間は、全体で 1 年もかからないだろう、と Hall 氏は語ります。
「ゲーム テクノロジーの限界が何であれ、それを踏まえたうえでこの番組を構成しています。それによって、チームのサイズは管理しやすい規模になります。50 名ものスタッフは必要ないからです。さらに、要求されるモデリング作業も管理しやすい規模になります。大規模なプログラマー チームも必要ありません。そこにすでにあるものを活用し、それで何ができるのかを実証しているのです。ゲーム開発に携わっていれば、Unreal Engine で作られた既存作品を上回るものを開発し、それによって認められようとします。このケースでは、私達が Unreal Engine を活用して実現しようとしていることは、まだ誰も成し遂げていません。たとえ、この技術に伴う標準機能の多くを利用して作業するだけで、過度のシェーダー作成などには足を踏み入れないとしても、視聴者を感心させることが可能でしょう」
UE3 では、何も変更を加えなくとも Pixar 映画「Toy Story」よりも優れた CGI ビジュアルが可能だと、Hall 氏は語りますが、「Gears of War」レベルのクオリティの2 時間映画を制作しようとしているのではない、ということも強調しています。目的は、過去のどの短編よりも優れた 3D グラフィックで展開する感動的なストーリーを、インターネットで配信することなのです。
さらに Hall 氏は次のように語ります。「この番組は、単に技術的な側面だけから観てもらいたくはありません。ストーリーとしてとても素晴らしいものにしたいのです。そして、最高のストーリーを 3D で表現することを可能にしてくれるのが、UE3 の技術なのです。Chadam のようなプロジェクトは、非常に重要なものになります。なぜならば、これまで誰も実現できなかった、インターネット短編ストーリーの品質レベルを超える、話題性のあるものになるからです。誰もが、ピクサーのような映画を作ろうとしていますが、インターネットの短編にはそのような大金をつぎ込むことはできません。Chadam は、Unreal のゲーム テクノロジーで何ができるのかという点で、ハリウッドの注目を集めるでしょう」
ハリウッドで何年間も過ごした経験を持つ Hall 氏は、多くの脚本家、監督、プロデューサーたちがゲームを楽しみ、ゲームを身近に感じるようになっているにも関わらず、ゲームがどのように制作されるのかを未だに理解していないということを知っています。
「彼らは、誰かが Maya を使ってゲームを開発していると思い込んでいます。ゲーム テクノロジーとハリウッドとの共通点が限られてきたのは、3D アニメーション プロジェクトに対するハリウッドの伝統的な考え方が、リアルタイム ゲーム エンジンでゲーム内のシーンを組み立てる方法と違っているために過ぎません。彼らは、このようなエンジンで何ができるかということを理解していないのです。この状況を打破するには、私のようなゲーム業界から来た人間が必要なのです」と Hall 氏は語ります。
Chadam は、実験的なアプローチとしての役割に加え、チームが UE3 技術を活用して、長編のエンターテイメントやゲームや他のインターネット短編などの将来のプロジェクトを制作する上での、パイプラインの役割も果たすだろう、とHall 氏は語っています。このプロセスは、ゲーム会社が映画的コンテンツを開発するアプローチと、ハリウッドのアニメーターがハイエンド 3D 映像を活用して、迅速かつ低予算のソリューションで CGI を作り出すアプローチとをミックスすることになり、語り手にとっては、新しい表現方法への道を開くことになるでしょう。
「我々にとって唯一の制限は予算ですが、この予算でも Unreal を使えば、カメラを使って同じ予算で製作した実写映画よりも数段優れた感動的なストーリーを作ることができます。Chadam は、インターネット短編 3D アニメーションの世界での新たな基準となることになるでしょう」と Hall 氏は述べています。