2016年4月7日

BMW が新車モデルの開発に HTC Vive VR ヘッドセットと MR (複合現実) を採用

作成 Dana Cowley

BMW は自動車メーカーとしては初めて、コンピューター ゲーム業界で使用されるコンポーネントのみで構築した複合現実システムを車開発に取り入れました。これまでの VR システムに比べて格段に有利な点もあり、仮想現実がデベロッパーのワークステーションの一部となる近い将来へ向けての最初の一歩となりました。

この複合現実システムの採用により、特に開発の初期段階において、時間と工数が大幅に削減しました。VR による調査は、費用のかかる特別な設備に対してのみ前もって実施することもできます。家電製品を統合することにより、どんな変更もすぐに実行およびテストすることが可能になり、デベロッパーにとって融通が利くようになります。世界中どこにいても、デベロッパー達は出張せずに自分のオフィスで意志決定に参加することができます。3D ヘッドセットを使ってドラフトのデザインが承認されると、テストに向けて実際にビルドを開始します。


BMW は 1990 年代から開発プロセスで VR システムを取り入れてきました。これまで自動車産業では利用されなかった分野の技術を今回システムに実装し、改めて先駆者としての位置に立ちました。今春からは、コンピューター ゲーム業界のコンポーネントを使用することで、エンジニアとデザイナーはさらに現実的な仮想世界に没入することができるようになりました。家電製品の開発サイクルが短いほど、幅広い機能を低コストで提供することができます。その結果、より現実的な方法で車の機能を VR モデルへ変換することができるようになります。また、異なるデベロッパーのワークステーションに、ほとんど苦労せずにシステムをスケールすることができます。

これは、革新技術とデジタル処理に重点を置く BMW 戦略の理想です。車の機能と新しい内装デザインは、ビジュアル体験を活用すれば、簡単にモデル化することができます。広範囲の視野はどうか、見る角度やシートの位置によってディスプレイが読みずらかったり触りにくかったりしないかをテストしながら、街の中を運転するシミュレーションが可能です。開発エンジニアは、ずっと自分が本物の車に座って実際に運転している感じがします。 

2015 年を通して行った評価に従い、BMW は現在利用できる最強のソリューションを実装することにしました。モバイル コンピューター メーカーの HTC からのタイムリーなサポートを得て、HTC Vive のデベロッパー キットを 2015 年秋からパイロット プロジェクトで使用しています。 

このコンポーネントはヘッドセットのコアとなります。高解像度の 2 つの画面と、BMW アプリケーションの 5 x 5 メーターのエリアをカバーするレーザーベースのトラッキング システムで構成されています。グラフィックスは、最高レベルのコンピューター ゲーム グラフィックスの生成に使われるソフトウェアで計算されます。BMW は、このタスクをエピックゲームズのアンリアル エンジン 4 に託しました。UE4 は、写実的なクオリティを保持したまま 90 fps の安定したレンダリングが可能です。演算処理は、水冷式でオーバークロックされたハイエンド ゲーム コンピューター (Intel Core i7 と Nvidia Titan X graphic カード 2 枚を内蔵) で実行されます。さらに、ヘッドセット ハードウェアとソフトウェアでは他にもまだまだ利点がありそうです。これらは定期的に評価されます。

ビジュアル自体の評判は今一つです。この理由から、再利用可能な内装アセンブリを BMW は採用しました。プロトタイピングを迅速に行うことができるので、複合現実体験で得る印象をさらに高めることができます。BMW 特有のエンジン音などを、正確かつステレオスコピックな音の再生により、体験はいっそうイマーシブになります。これを VR モデルと一緒に使えば、さまざまな環境での乗車体験が可能になります。このようにして作り出された、本物の車に実際に乗車しているような印象は、自動車業界ではかなりユニークな存在です。 

HTC Vive Lighthouse トラッキング システムが使用されているので、部屋の中の至る所に VR ヘッドセットとコントローラー上のセンサーでトラックされる目に見えないライト フィールドがあります。システムのレーザーは、見る角度のわずかな変化すら逃さずに、すべての体の動きを超精密にトラックし、数ミリ秒間隔でトラッキング フィールドをリフレッシュします。非常に正確で安定しているこのトラッキングのおかげで、ヘッドセットを装着したユーザーが、インターフェースなしで仮想環境内を移動できます。これは、できる限り本物に近づけてイマーシブレベルを最高にする空間印象を作成するだけでなく、VR ヘッドセットをなじみやすくするために不可欠なことです。BMW の社内開発によるこの複合現実システムにより、VR モデル、迅速なプロトタイピング、VR ヘッドセット、トラッキングなどの個々のデバイスとコンポーネント間のインタラクションが必ず最適化されます。