カリフォルニア州サンフランシスコ発 – Irrational Games 社 (現在は「2K Boston」) が、オリジナルの海底アドベンチャー FSP ゲーム「Bioshock」で初めて海底都市「Rapture」の作成に着手した際、その作成には Unreal Engine Engine 2.5 が採用されました。多くの賞を獲得したこの独特なシングルプレイヤー ゲームの続編 (マルチプレイヤー版の前編は Digital Extremes 社がトロントで別途開発中) の開発は、1 作目の開発を担当した主要メンバー 8 名のもとで新しいチーム (2K Marin) が担当しましたが、今回の作品でも Unreal Engine 2.5 がメインのツールとして使用されました。
「率直に言って Unreal Engine がとても気に入っています。私がこの仕事を始めて以来のお気に入りです」と、 Bioshock 2 でクリエイティブ ディレクターを務めた Jordan Thomas 氏は語ります。「現在では、当社バージョンの Unreal Engine は当社独自の発展を遂げており、当社チームが細部までカスタマイズしてエンジン基盤に追加した、異なる機能を多数搭載しています」
Thomas 氏は、1 作目と同様にプレイヤーや評論家を驚かせたビジュアルを誇る続編の Bioshock 2 が、未だに Unreal Engine 2.5 をベースにしているという事実は、その技術の優秀さを物語っていると指摘します。Bioshock 1 と Bioshock 2 の両開発チームによって大変なエンジニアリング作業が行われ、これも評価に値しますが、Thomas 氏は、ここまで大々的なカスタマイズが行われた Unreal Engine 2.5 でも、Bioshock 2 のようなゲームの開発が可能だということは驚異的だと語ります。
「Irrational Studios で過去 8 ~ 9年間にわたって多くの改造やカスタマイズが施されてきた Unreal Engine の特徴を考えると、これはある意味、面白い状況だと言えます」と、Bioshock 2 で主任デザイナーを務めた Zak McClendon 氏は語ります。「開発には試行錯誤や苦労がつきものですが、Unreal Engine の良いところは、非常に高度なレベル デザイン用ツール セットが用意されていて、これがデザイン ワークフローの土台となることです。このおかげで開発チームは、スムーズに作業を行うことができます」
Bioshock 2 で環境グラフィックの主任を担当した Hogarth de la Plante 氏は、1 作目でも環境/レベルのグラフィック責任者でした。氏は、1 作目ではグラフィック関連の問題が一切発生しなかったため、開発チームは Unreal Engine 3 へのアップグレードを見送ったと述べ、その経過を次のように語っています。
「その年は、まるで、業界のすべての美術監督賞やグラフィック賞を総ナメしたような気分でした。そこで当社では、この時点でパイプライン全体を変更して Unreal Engine 3 に移行すべきか?それとも Bioshock 2 で必要となる改造を加えてこのまま使うべきか?という検討をしましたが、今回はこのまま行こう、ということになりました」
\de la Plante 氏によれば、その後チームは、Unreal Engine 2.5 をベースとしてその独自技術の開発を継続。氏はプレイヤーが海中にいる場面での海の表現を改善したかったのですが、チームのメンバーが、これが可能になる特殊なシェーダー技術を開発しました。氏は、Unreal Engine 2.5 とシェーダーによって、グラフィック担当者の柔軟性と創造力が飛躍的に向上したと述べています。
また、特に面白みのない技術的なレベルでも、基本的にメモリ使用量を抑えながら、より多くのことが可能になったと氏は付け加えています。
「Bioshock 2 では、レンダリング側の担当者が体積ベースのフォグを作成しました。これにアンビエント インクルージョンを追加してレベルに適用し、そして AI システムは完全に書き換えられました」と de la Plante 氏は述べます。「このように数多くの機能が追加されているため、市販の状態の Unreal 2.5 とはまるで別物のようになっています。事実このゲームには、Unreal Engine 3 のシェーダー システム全体が導入されています。当社は、Epic が開発したこの機能をとても気に入ったため、当社バージョンの Unreal Engine にも採用したのです」
Digital Extremes 社では Unreal の技術を長年利用してきましたが、同社のシステム デザイナー Alan Goode 氏は、Bioshock 2 の新しいオンライン マルチプレイヤー ゲームの開発にこれがとても役に立った、と語ります。
「Unreal Engine をこれまで使用してきた経験は、そのフレームワークを既に理解し、技術をさらに前進させるために必要な実際の作業を完了させることのできる多くの優秀な人材が当社に存在する、ということを意味するものでした」と Goode 氏は語ります。「レベルを構築する作業においても、過去の経験が実に役に立ちました。これは、当社のレベル デザイナーが、BSP などを使用してその技術を活用する方法を正確に把握していたためで、そのおかげですべてがスムーズに進行しました」
2K Marin で使用されていた改造版 Engine 2.5 技術はマルチプレイヤーに対応していなかったため、Bioshock 2 のコードは、Digital Extremes のチームがすべて開発する必要があった、と Goode 氏は説明し、その結果として最高に楽しいゲームプレイとなることを氏は約束しています。
「マルチプレイヤーでの目玉は、Bioshock 2 のプラスミド、トニック、武器のコンビネーションにおける、技術的な成果です」と Goode 氏は述べます。「このモードがすごいのは、リトル シスターやビッグ シスターとの場面や、アトムを使って自分自身を接合して強化する場面など、Rapture のさまざまな要素がすべて最高の完成度で表現されているという点です。これらの要素はすべてオープンな状態でしたが、結果としてその全要素をまとめ上げたのはプレイ環境自体で、このため Bioshock と同じプレイ感覚が実現しました」
高度に改造された旧バージョンの Unreal 2.5 の技術が利用されているにも関わらず、プレイヤーはこの続編で大きな進化を感じることができると、Goode 氏はあらためて語ります。
「当社では、既に発売されている最新の Unreal 技術を使用しているわけではありませんが、Bioshock 2 の、特にマルチプレイヤー モードでは、明らかに進化したプレイを楽しめます。マルチプレイヤーに必要なコードはすべて当社が開発して導入しましたが、これはすべて、Unreal Editor と、以前の Bioshock チームが開発したコード基盤があるおかげです」と Goode 氏は説明しています。
今回の続編では Unreal Engine のカスタム バージョンを使用することを決定しましたが、Thomas 氏は、Unreal Engine 3 の最新技術に対する Epic の取り組みにも同時に注目しています。
「これは私の偏見かもしれませんが、Unreal Engine は、コンテンツ デザイナーを非常に意識したシステムになっていると思います。Unreal Engine 3 については、Epic 純正のレベル エディタ、シネマティック エディタの Matinee、スクリプティング システムの Kismet に次々と追加されていく機能を見ると、ますますワクワクします」と Thomas 氏は語ります。「このシステムは本当にすごいと感じます。正直なところ、いくつかの機能は実際に使ってみたいと思っています」
シングルプレイヤーの続編とマルチプレイヤーの前編は、2010年2月9日に発売予定です。