2007年8月21日

Unreal Engine 3 Powers Critical and Commercial Success BioShock

作成 John Gaudiosi

Irrational Games 社 (現在は 2K Boston) は、Epic Games の Unreal Engine 技術を長年活用してきました。ボストンとオーストラリアのキャンベラに開発スタジオを持つこの開発会社は、以前にも Tribes: Vengeance と SWAT 4 の開発で Unreal 技術を使用した経験を持っていました。今回の BioShock の開発では、この技術をさらに駆使して新しいレベルへと発展させています。

「以前のプロジェクトで Unreal を使用した経験のおかげでこの技術について理解しているため、今回の作業はスムーズに進めることができました」と、2K Boston の製品開発ディレクター Jon Chey 氏は語ります。「当社にとって、PC だけではなくゲーム機でも優れた性能を発揮するエンジンを使用することが重要でしたが、Epic の技術革新によってこれが可能になりました。Epic そしてその技術とは、良好な関係を保ちながら実りある仕事をすることができました」

Chey 氏は、ほかの開発チームと比べると、BioShock のチームは 80 ~ 90 名の専属スタッフで構成される比較的小規模なチームで、その多くは、このゲームの開発のために Irrational Games に戻ってきたメンバーだった、と話しています。このチームの努力は、過去 2 回の E3 で BioShock が数々の賞を受賞し、世界各地で商業的な成功を収めたことによって報われました。

Irrational Games のクリエイティブ ディレクターを務める Ken Levine氏 は、このゲームの成功における最大のサプライズは、数え切れないほどのユーザーがこのゲームに興味を示してくれたということだ、と言います。

Levine 氏は続けて、「おかしなことのように思われるかもしれませんが、BioShock は実際、人に説明しにくい内容のゲームだと思います。完全なウイットや理解を期待しているわけではありませんが、ゲーマーたちは確実に成熟しています。また、主要メディアがゲームを『子供向け』と括るのも難しくなってきています」 と指摘します。

チームが注いだ労力と情熱に加え、Chey 氏は、ゲーム評論家やゲーマーたちから名作と呼ばれているこのオリジナリティ溢れるゲームの開発に貢献した Unreal Engine 3 を高く評価しています。

また Chey 氏は、「BioShock では、既存のエンジンを利用して開発できるというメリットのおかげで、基本的なレンダリング、編集、その他の機能の準備を待つことなく、グラフィックやプレイ環境のプロトタイピングをスムーズに開始できました。Unreal の成熟したテクノロジーのおかげで、Xbox 360 でエンジンを利用可能にしてくれた Epic の仕事の恩恵を受けることができました」と語ります。

BioShock のクリエイティブ ディレクター Ken Levine 氏は、プレイヤーを世界から隔絶できる場所について考え、海中都市のアイデアを思いつきました。ゲーム内の建造物は、ニューヨークの、特にロックフェラー センターの影響を受けています。

「Rapture のビジュアル コンセプトは、ここから始まりました」と Chey 氏は言います。「Ken は奥さんを連れて、ロックフェラー センターに出かけ、ギフト ショップで安物のカメラを買って、照明やドアノブ、Diego Rivera の壁画などを、1 日かけて手当たりしだい写真撮影してきました。彼らはその足でエンパイア ステート ビルに向かい、そこで、ゲーム内の灯台のシーンで登場する『ウォール コイン』のヒントを得たのです」

ニューヨークのアールデコ建築に加え、Rapture の世界と BioShock のストーリーの制作にあたってはさまざまなメディアを参考にしました。Chey 氏は、文学、中でもAyn Rand 著の「The Fountainhead」、Stephen King 著の「The Shining」、George Orwell 著の「Animal Farm」からは非常に大きな影響を受けたと言います。また、Bernard Hermann の音楽や、映画「Fight Club」と「Logan’s Run」も、ストーリーのアイデアやテーマを固める際の参考になったと話しています。

「海底都市 Rapture には、次々と現れる敵だけではなく、実際に人々が住んでいるような雰囲気を出したかったのです。ほかのゲームとは違ってこのゲームは、プレイヤーが自由に探検、対話、実験できる、非直線的な形式になっています」と Chey 氏は説明します。

さらに Chey 氏は、BioShock でのチームの主な目標のひとつは、AI キャラクタ同士に、ゲームに大きな影響を与えるような、意味のある興味深い関係を持たせることだったと述べています。特に、Big Daddy と Little Sister については、ゲームにおいて、モラルとテクノロジーの中心とすることをめざしました。

Chey 氏は「Little Sister は、ゲームにおけるモラルの中心的役割を演じています。Little Sister というキャラクタは、可能な限り最高のゲーム プレイとインパクトのあるストーリーを展開させることのみを目的に設定されました」と語ります。

BioShock は、筋金入りのゲーマーと一般的なユーザーの両方から絶賛される、珍しい FPS ヒット作のひとつです。開発開始のベースとなる優れたプラットフォーム Unreal を使用することによって、Irrational Games は、その開発時間とエネルギーを、ストーリーとゲームプレイに集中させることができました。

Chey 氏は、「筋金入りのゲーマーたちを惹きつける戦略的な要素に加え、一般ユーザーにとっても使いやすく楽しい要素が一定量必要です。さまざまな方法で攻略できるゲームを開発するため、このバランスに気を配りました。 たとえば、一般ユーザーは数個のテクニックのみに頼って敵と戦いますが、筋金入りのゲーマーは複雑な複合攻撃でゲームを進めます。またこれとは別に、ユーザーのレベルを問わず、心に響くような芸術的な装飾に包まれた世界を構築する、という側面もありました」と語ります。

新世代ゲーム機の登場によってゲーム業界は、映画的要素が完璧なだけでなく、デジタル キャラクタを通じて人の心に訴えかけるような「市民ケーン」的なゲームの方向に向かいつつあります。多くの評論家たちは BioShock のゲームの雰囲気を、ゲーム史上もっともオリジナリティに溢れる設定、そして最高級のビジュアルとして評価しています。

Chey 氏は、「現在のゲームでは、以前のゲーム システムでは実現不可能だったストーリー、キャラクタ、グラフィック、プレイ環境が信じられないくらいの奥深さを演出できるため、これまでにないほど効果的に感情に訴えることができます。ゲームで人を泣かせることはできるでしょうか?これは難しい課題ですが、ゲームで恐怖、興奮、悲しみなどの感情に訴えることは可能です」と述べています。

そして、BioShock の大成功は、長年の開発に十分報いてくれるものだったと氏は強調します。

「走って撃つだけの一般的なゲームの枠を超えて、ゲーム内での行動やその理由をプレイヤーに考えさせるような内容にまで発展させた、この苦心作に対するユーザーの反応は、とてもうれしいものでした。特別なゲームに仕上がったという自信はありましたが、ユーザーのみなさんにも喜んでもらえてとても光栄でした」と Chey 氏語りました。

Levine 氏は、BioShock は、シューティング ゲームのジャンルが進化していることを示す一例だと述べ、次のように述べています。

「BioShock をプレイした後 (そして昨夜 Portal を攻略してみて)、今年は、見た目だけのゲームや単なる戦闘もののゲームを超えて、FPS の進歩が始まる年になると実感しました。 ゲームのストーリーやテーマはどんどん洗練され、プレイヤーも、ゲーム プレイに自由な主体性を求めるようになっています。やらされるだけのゲームはもう飽きられてしまっていて、プレイヤーは、ゲームの中にリアルに構築された世界を自由に駆け回りたいのです。このジャンルのゲームでは、もちろんシューティングという側面が重要な鍵ですが、単なるシューティングを超えたジャンルに発展し、 映画やテレビでは味わえない物語を体験することがポイントとなりつつあります」

Unreal で実現した BioShock では、ほかのゲームとは一線を画した体験が待っています。