2008年2月11日

Unreal Engine 3 によって鮮やかに描かれるおとぎ話 American McGee’s Grimm

作成 John Gaudiosi

常にゲームの世界にユニークな視点を与えてくれる American McGee 氏が手掛け、そのビジョンが描き出された初めてのエピソード型ゲーム Grimm が、GameTap 社から独占リリースされます。id Software で長年クリエイティブな作業に携わっている同氏は、世界的に有名なおとぎ話のゲーム化に自身の解釈で挑みました。その開発には、本作品の 24 話のエピソードの開発スケジュールを効率化するため、Epic Games の Unreal Engine 3 が採用されました。上海にある McGee 氏の開発スタジオ Spicy Horse では、コンセプトから商品化までを 12 か月間で実現する必要がありました。この観点から、革新的なゲーム コンセプトのプロトタイプ化、独特なグラフィック スタイルの確立、大量のコンテンツの作成を、短期間で効率的に行える UE3 は理想的だった、と McGee 氏は語ります。

「面白いことに、id Software のスタッフという立場から、常に Epic とその技術を『向こう側のもの』と考えていました」と、Spicy Horse のクリエイティブ ディレクター McGee 氏は語ります。「初期段階では、Epic のエンジンをいろいろ試しながら、ツールやインターフェイスなどの問題をどのように解決できるのか検証しました。当時は、いつも無骨なツールだと感じていましたが、今考えると、ただ慣れていなかっただけだと思います。そして数年の間に加えられた変更は、まさに驚異的と言えます。ツールセットは成熟し、強力で柔軟な総合ソリューションへと進化しました。今では、私達のニーズに対して最高の総合ソリューションを使っている、という安心感があります」

American McGee's Grimm

McGee 氏の主要チームが UE3 に落ち着く前は、Valve 社の Source エンジン、Gamebryo エンジン、そして id 社自身の技術など、複数のエンジンを検討していました。最終的にチームは、UE3 を使用することによって、コンテンツの統合および必要なビジュアル成果物のアーカイブ化が高速で簡単になる、という結論に達したのです。

McGee 氏は、「この判断は主に、優れた参考資料、チュートリアル、コンテンツ パイプライン、ツールによるものでした。これが決定した後は、UE3 を使用した経験があるチーム メンバーを集め、重要な知識や情報を収集するのは簡単でした。Grimm は非常に実験的なゲーム コンセプトとなっているため、新しいアイデアを形にするためのプロトタイプ化を短時間で行うことが重要でした。ワールドを、ほぼ最終的な状態のコンテンツを使用して短時間で構築できたため、オリジナルのアイデアを反映させるという課題に集中して取り組むことができました」と述べています。

昨年の初期コア チームの 10 名は、評価を行いながら UE3 を試用した以外はほとんど使用経験がありませんでしたが、チームが 35 名の社内スタッフと、アメリカ国内の 20 名の社外スタッフ (アーティストなど) にまで拡大したにもかかわらず、開発期間中に締め切りに遅れることはありませんでした。McGee 氏は、UE3 のツールセットを使用するに当たって開発チームは、その技術の全側面をさまざまに活用した、と語ります。

America McGee's Grimm

「とにかくすべてが便利でした。Grimm には、物語的で映画的な要素が大量に収録されているため、FaceFX と Matinee のツールを使用してコンテンツの編集に時間をかけました。当社で行ったカスタマイズの多くは、ある意味では『伝統的』な手法を取り入れるためのものでした。たとえば FaceFX ツールでは、求めていたシンプルなアニメーション的な顔を作成するための改造が必要でした。次世代ゲーム エンジンで『South Park』的なスタイルの表情アニメーションを作成するのは、逆に、簡単なことではありません」と McGee 氏は説明します。

GameTap では、伝統的なおとぎ話を「フレッシュでおもしろおかしいインタラクション」として表現するという McGee 氏のコンセプトを支援し、舞台を、明るいものからダークなものにするというコンセプトに焦点を当てました。当初は PC 版が開発されていた、24 話のユニークなエピソードで構成される Grimm は、McGee 氏いわく、真のエピソード型「実験的」ゲームに仕上がったそうです。McGee 氏は、Grimm の開発当初から一般的なユーザーを対象に考えていました。

「3D コンピューター ゲームをプレイしたことがないようなユーザーが、この物語、ビジュアル、ゲーム システムを楽しむことができるのか?ということに興味がありました。そのため、なるべくシンプルなゲームにすることを心掛けました。コントロールは、マウスの 2 つのボタンを使うだけのシンプル操作で、標準的なキーボードの WASD ボタンでも操作できるようにしました」と McGee 氏は語ります。

American McGee's Grimm

ゲームの内容は、明から暗への転調というアイデアを基準にしており、メイン キャラクタ Grimm が行くところはすべて、闇に包まれています。このキャラクタは、かわいらしいアニメの世界を暗くペイントしてしまうブラシのような存在で、彼が世界を暗闇に変えると彼自身がパワーアップし、彼がパワーアップすると、さらに大きな物を変形させたり、速く移動できるようになったり、高くジャンプできるようになります。各エピソードは、元のグリム童話をベースにしています。

McGee 氏は、「変形メカニズムには 3D コンソール ゲームの要素が加味されていますが、その結果として、視覚的に魅力のある、そして病み付きになる、ユーモアにあふれた表情豊かな物語に仕上がったと思います。正直言って Grimm は、ほかに類を見ないようなとても個性的なゲームだと思います。このゲームに対するユーザーの反応がとても楽しみです」と話します。

McGee 氏は、エピソード型ゲームの開発サイクルでは必須となる、純粋なコンセプトからプレイ可能なコンセプトを作成するまでの作業を、開発チームは UE3 を使用して記録的な短期間で完了させることができた、と語っています。言い換えると、このモデルでは、プレイ時間 12 時間のコンテンツを 24 の小さなゲームに分割する必要がありました。これは、個々の「ゲーム」の開発サイクルが、一般的な年単位ではなく、週単位になることを意味します。しかしその短期間のサイクルにもかかわらず、問題が発生することは一切なく、締め切りに遅れることや、小さな事故が発生することさえありませんでした。

American McGee's Grimm

「開発プロセスでは、デザイン、コンセプト化、プレイ可能なアルファ版、コンテンツがロックされたベータ版、最終版と、標準的なスケジュールが設定されましたが、プロセス全体が効率化されていたため、各主要フェーズで 6 週間以上かかることはありませんでした」と McGee 氏は語り、「1 つのエピソードには、合計で 18 週間かかりました。また、デザイナーからデザイナーへのコンテンツの移動や、コンセプト版から最終版への移行など、複数の開発サイクルが並行して進行していました。いろいろな意味でこれは、大規模開発プロジェクトの縮図と言えます」と続けます。

その結果となる Grimm の最初のエピソードは、初のプリプロダクション会議から約 1 年後にリリースされます。以降のエピソードは、8 週間にわたって毎週リリースされる予定です。開発チームは、その後に短い休みを取ってユーザーからのフィードバックや提案を元にコンテンツを調節し、8 週間かけて残りのエピソードを制作します。

McGee 氏は、「エピソード型コンテンツは、今後どのように展開するかわかりませんが、私達にとって、そして願わくばユーザーにとっても、これから長い間、注目のスタイルであり続けると思います。この開発プロセスと開発結果には、価値のあるなにかがきっと存在しています。Grimm は、エピソード スタイルでゲームを開発、配信、プレイするという発想が進化していく、第一歩に過ぎません」と締めくくりました。