2015年11月2日

Caged Element へインタビュー:GRIP の制作について

作成 Brian Sharon

世紀の変わり目に突如あらわれた Rollcage シリーズを、ほとんどのプレイヤーは古典的な意味で芸術的とは表現しなかったと思います。非常に激しいビークルのゲームプレイで、レース終盤の修羅場で集中度はピークになります。強烈なレーシングカーは弾丸とミサイルを次々と発射させて、最強の車輪を駆使してどんな状態のテレインも走り抜きます。エネルギッシュでアドレナリン全開の気分になりながら、プレイヤーの耳には大騒ぎのシンフォニーのハーモニーが奏でる音楽が聞こえてきます。

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Rollcage は様々な方法で限界に挑戦したゲームでした。完全に新しいディメンションをゲームプレイに追加して、車をフラットでフリップ可能にして新しいビークル メカニクスを追い求めました。さらに、ゲームの印象的なグラフィックスと爆発する特性により、プレイステーションのハードウェアは真価と問われることになりました。

Rollcage ゲームが燃え尽きて 10 年以上が経ち、刺激を受けたデベロッパー達は、レースジャンルで沸き起こるあの闘争心の復活だけではなく、絶対に完璧な形を目指しています。

このような希望が詰まった GRIP は、公式に Greenlight に登録され、Early Access を目指しています。開発を手掛けたのは Caged Element。スピード、集中度、その瞬間その瞬間で過熱するアクションで構成されています。Caged Element は、時間が許す限り限界に挑戦した Rollcage と同様のことを GRIP でも目指しています。

アンリアル エンジン 4 を使ってどのようにゲームの限界を追求するのか、実際に Caged Element 社にお話を伺いました。

GRIP は Steam の Greenlight に登録されており、アーリーアクセス版のリリースを予定しています。Early Access の性質上、アンリアル エンジン 4 はユーザーのフィードバックに基づいてリアルタイムで変更ができるのでしょうか。

Chris Mallinson:我々はまだ Steam には登場していませんが、ファンベースを引き出すために最近効率よく何度も GRIP のイタレーションを実施できたことにアンリアル エンジン 4 が大きな役割を果たしていることは明らかです。これが Steam の Early Access を楽しみにしている理由のひとつです。なぜなら、開発プロセスがスムーズになることが分かっているからです。中でも、スプラインを使ってトラック デザインを早くマップできることが本当に便利です。 

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熱烈なファンは、私達がリリースする各種レイアウトで必ず夢中になってプレイしてくれると思いますし、メカニクスとフローに関するフィードバックが得られます。ただ全体的に、アセットの新規バージョンをエンジンにプラグインし、リアルタイムで変化を確認しながら、数秒でとても簡単に調整することができます。コミュニティから受け取った貴重なフィードバックをすぐに活かして変更できるようになっています。

David Perryman:つまり、ほぼ即時ということですよね。アンリアル エンジン 4 を使ってプロトタイピングを早めるだけでなく、ゲームの完成度もできる限り高めるために、これら 2 つを合体させることが我々デベロッパーには重要です。フィードバックをすべてゲームにプラグインし、評価し、見栄えを改善することができます。 

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UE4 は Stream Early Access にまさにぴったりです。Chris によると、今年 11 月末の Early Access に間に合うようにプロセス全体の準備が整いそうです。今、UE4 によるユーザーフィードバックの評価を活かせるように時間を設けています。誰もが簡単に UE4 を使えるようにすれば、誰か 1 人に頼り切るのではなく、誰もが臨機応変に対応できるようになりますから。その時間 UE4 に費やすことで、プレイヤーのフィードバックはチームの他のメンバーの糧となり、さらに能力の伸びしろが生まれます。むしろ、チームすべての部門に糧を与える感じですね!

GRIP は、ハラハラドキドキの難解なレースゲームで、エネルギーが活力となって分かりやすく伝わってきます。はつらつとした美的センスはアンリアル エンジン 4 のどのようなエレメントで作り出されるのでしょうか。

David:まさにその通りだと思います。詳細は別のメンバーに説明してもらいますが、先ほども言ったように、UE4 があるとプロトタイピングも早いですが、磨きがかけられる点がより重要です。実演できたと思うのですが、少人数のインディー チームが「最高ランク」の品質のゲームをすぐに作ることができるということです。スコープも助けになっています。

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Chris:基本的なプロトタイピングから実行までが非常に速いことは、我々にとって非常に大きいです。GRIP とそのスピリチュアルな前衛の Rollcage にはもちろんビークルのデザインが含まれていますが、あまりにユニークなためゼロから車をビルドする必要があり、UE4 はあちらこちらで発生しうる面倒臭い作業のほとんどを緩和してくれました。Rob がその部分をかなり早く作りあげてくれたので、私も同じ速さでパーティクル エフェクトの作業をしました。パーティクル システムを作ったのは今回が初めてだったのですが、短い時間でほとんど問題なく良いものが作れました。 

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UE4 での開発が簡単であることは私が良い例かもしれません。これを使う前、私は UE 2.0 しか使った事がなかったのですが、予想以上に UE4 のシステムに早く慣れることができました。もちろん、アートの経験と常識があるにこしたことはないですが、良いソフトウェアがなければ、なかなかスタートラインから離れることができませんからね。

Robert Baker:Chris の言う通りです。UE4 の カスケード は正真正銘「最高レベル」のエフェクトを開発できるパワフルなツールですが、これだけではありません。マテリアル システムも、非常に便利な機能をアーティストがさらに制御できるようになりました。大助かりです。かつては純粋に DirectX 用の High-Level Shading Language (HLSL) などの複雑な手段を使っているプログラマーの領域でしたが、アーティストにとって使いやすいエディタ内の簡単に分かる構築を使って、かなりビジュアル的なプロセスになりました。 

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プログラマーは演算とアルゴリズムのアプローチで難しく手間のかかる作業でエンベロープをプッシュすることが可能ですが、アーティストは簡単に制御し、最終的なフレアを追加してゲームを最高の状態に仕上げることができます。

実績は積んでいても、Caged Element は自他共に認める小規模のチームです。ブループリントのような生産性の高いツールで、コンテンツをより効率的に作成したり、開発プロセス全体はどのように変えるのでしょうか。

Chris:これまで私はアーティストとしてソフトウェアでノード システムをコードしたり使用したことは一度もありません。ブループリント を作ることが楽しいだなんて絶対思わないだろうと思っていましたが、楽しいんですよ、これがまた。あり得ないと思われるかもしれませんが、アンリアル エディタ 4 のブループリント エディタの前に座って 1 日中あれこれノードをいじくり回しても全然平気です。UE4 で一番便利だと思うのは、設定の間違いを常に指摘してくれることです。 

こんなに大きなブループリントでノードを 10 個以上プラグインした結果を確認するのは楽しいですし、コンパイルすると間違った情報はすべて (常に多い) 表示されます。行き詰ったとしても、アンリアル コミュニティはものすごく大きいので、90 パーセントの確率で誰かしら問題の解決方法を投稿して助けてくれます。ブループリント システムはシンプルでもあり、奥深く複雑でもあります。ほんの一部しかいじれていないことは分かっていますが、それでいいのです。システムに十分興味を持てて問題がなければ、さらに踏み込んで学習していけばいいのです。

Rob:ブループリントがもたらす恩恵といえば、何よりも作業時間の短縮です。コードをリコンパイルし、変更した数字でゲームを再実行してから、イタレートし直すという終わりのない作業に費やす時間は莫大です。ブループリントはコンフィギュレーションをどんどん公開してくれるので、とても気楽でいれます。一度公開されたコンフィギュレーションはチームメンバー全員、つまりこの手のスペシャリストであるデザイナーも変更することが可能です。 

これまで関わったどのプロジェクトよりも格段に早くゲーム内でアクタを作成し仕上げることができます。また簡単に完成できるので、仕上がりがビジョンにかなり近い形になります。ブループリントを使うことで、かつてはプログラマーがメインで処理していたデザイン分野において、デザイナーが本領を発揮できるようになったのです。

もちろんブループリントの用途はコンフィギュレーションに限りません。ロジックの作成に使用すれば、プログラマーは面倒臭いグルーコードのストレスから解放されます。

ブループリントはまた、ゲームの中のものを埋めていくので、プログラマーをいらつかせていたロジックの個々の要素の実行にも役立っています。たかがゲーム関数を作るだけなのにと常にイライラして細かい作業をすることもなくなり、今では人工知能などのさらに大きなタスクに集中することができるようになりました。仮にプログラマーがブループリントを使って何か書き出す必要があっても、ブループリント エディタでビジュアル的に行うだけで、これまでの編集、コンパイル、実行というつまらないサイクルが驚くほど面白くインタラクティブになるんです。こういう事を可能にしたエピックは、本当に素晴らしいと思います!

David:まあ簡単に言えば、ブループリントさえあれば、ゲームのコンテンツを誰でも調整できるようになる、ということです。コンテンツを調整したい時、プログラマーは実装したプログラマー本人に時間を割いてもらう必要がもうなくなったのです。少人数のチームの場合は特に、各人の担当は大きく異なりますから、これは基本中の基本となります。最善の結果を出せる人がその仕事をする、それが品質を高める原則です。

スタジオとしてのゲーム開発、特に既存のジャンルの垣根を超えるゲームを作成する難しさはよく伝わってきました。過去のプロジェクトでの体験と比較して、アンリアル エンジン 4 はどのように開発プロセスを緩和しましたか?そして GRIP のどんな面に磨きをかけることができるようになりましたか?

Rob:さきほども話題にあがりましたが、ブループリントが開発時間の短縮に果たした役割は確かに大きいです。実際は GRIP のロジックのほとんどはまだ C++ コードであるにしろ、アンリアル エンジン 4 のお陰で以前ほど障害にはならなくなりました。エピック ゲームズはブループリントの実装だけでなく、エディタにゲームコードもホットロードしてくれました。本当に素晴らしいと思います。図り知ることのできない時間が節約できたんです。

アンリアル エンジンを使ったプロセスは時間短縮の要素があちらこちらに詰まっています。数年前と比べてゲーム開発がこんなに楽しくなるなんて!プログラマーとしても、ただひたすらハードコアのエンジニアリング的な課題を克服するのではなくて、ゲームを形作っているという気分にさせてくれます。今の時代、UE4 なしでは GRIP のような大規模なタイトルを完成させることはできないのではないでしょうか。

細かい作業から解放されて短縮できた時間は他ののタスクに使うことができます。例えば、私は今ビークルの人工知能の作業をしています。Rollcage の作業でこのプロセスは、うまく書き出すためにゲーム開発中ずっと 1 人のプログラマーがかかりきりになります。もちろん作業結果はすばらしいですし、リリース期限にしっかり間に合ったという点は特に評価すべきです。ただ、今は慣れてきたので、GRIP でのバーをあげて Rollcage の中で最初に披露した人工知能レベルまで改善しています。単に可能であるというだけではなくて、大ヒット作を作ることが可能になったということです。Rollcage の開発時代に AI の作業に費やしていた膨大な時間も、今なら数時間で片付けられます。この生産性は本当にパワフルで、まさにゲームの変革者です。

GRIP は 2015 年 11 月に Steam Early Access に登場する予定です。詳細については Facebook そして TwitterCaged Element をご覧ください。