2011年6月14日

American McGee がワンダーランドに帰ってきた

作成 Unreal Engine

評判の高いクリエイター American McGee 氏が、Epic Games の Unreal Engine 3 を引き連れてワンダーランドに帰ってきました。Electronic Arts は、多くのファンが待ち望んでいた「Alice: Madness Returns」の続編を、PC 版、PlayStation 3 版、Xbox 360 版で 2011年6月に発売しました。上海を拠点とする McGee 氏の Spicy Horse は、中国における最大の欧米系ゲーム開発会社 であり、UE3 を使用してこの作品を世に送り出しました。McGee 氏は過去数年間にわたり、古典的なおとぎ話にひねりを加えた Grimm などの、エピソード ゲーム プロジェクトに関与してきました。

「Grimm プロジェクトでの良い経験がとても役立ちました」と、Spicy Horse のシニア クリエイティブ ディレクター McGee 氏は語ります。「24 本の個々のダウンローダブルなゲームすべてを通して、プロトタイプ作成と開発はとても短時間のうちに行われました。しかし Alice: Madness Returns では、コンテンツ作成、グラフィック作成、ストーリー展開、各種ゲーム メカニズムの開発に活用でき、Grimm で体験したような柔軟性と速度も維持できるような、当社の能力に見合ったエンジン ソリューションが必要でした。いくつかの技術ソリューションを検討しましたが、この条件を満たすソリューションを発見することはできず、結局 UE3 に落ち着きました」

Alice2: Return to Madness

McGee 氏は、開発会社でのこれまでの技術経験から、Alice では、プリプロダクションおよびデザインの作業と並行させながら、ステージの完全なプロトタイプ化に短時間で着手することができた、と述べています。氏はこのステージを、ゲーム エンジンを使用したアイデアの「スケッチ」だと説明しています。この開発段階で作成された物はほとんど採用されませんでしたが、チームにとっては、そのすべての作業が有意義な学習となり、実際のゲームの開発と制作に活かされました。

「これまでに使用してきたほかのゲーム エンジンと比べると、Unreal の技術は、最高レベルの速度と使いやすさを実現しています。特にコンテンツ パイプラインに関してはこれが顕著です」と McGee 氏は語ります。「制作チームに新しいメンバーが加わった場合でも、数日間のうちに開発環境に慣れて、実際の作業を開始することができます」

Spicy Horse では、70 名の社内開発者が Alice の開発を担当し、45 名の社外開発者が 3D アセットの作成を担当しました。また、2 名の在米スタッフがストーリーの作成とコミュニティ管理を担当し、合わせて 117 名のチームがゲームを完成させました。

Alice2: Return to Madness

Kismet、Matinee、FaceFX など、 Unreal のコア技術 のすべての側面が、本作品の制作で利用された、と McGee 氏は語ります。Spicy Horse は、 Kismet と Matinee を利用することにより、インタラクティブでダイナミック、そして美しい Alice の世界を実現することができました。

「とても柔軟性の高い環境のおかげで、グラフィック担当者やデザイナーは、その創造力を存分に発揮できたと思います」と McGee 氏は語ります。「言い換えればこれは、創造力の妨げを排除するツールであると同時に、技術担当者にとっては、コア機能の拡張リクエストに簡単かつ即座に対応できるツールです」

開発プロセス全体を通じて McGee 氏のチームは、 Unreal Developer Network および Epic の中国の開発会社 Ying Pei Games から提供されている Unreal 用の豊富なリソースを活用することができました。McGee 氏は、ローカルの Epic オフィス (Ying Pei Games) とオンライン コミュニティの両方からのサポートは、とても価値のあるものだった、と語っています。このサポートのクオリティが極めて優れていたことが、氏の開発会社がこの技術を採用したもうひとつの理由でした。

Alice 2: Return to Madness

「UE3 に対する期待は、Epic U.S. と Ying Pei Games とのやり取りによって確信となりました」と McGee 氏は語ります。「両者は、ほかの ゲーム エンジン プロバイダではまず見ることのできない高いレベルのプロ意識とサービス意識を持っています。当社チームが非常に特別な問題 (中国国内でのインターネット利用規制など) に直面した際でも、この両者が効率的に協力し、問題を回避して開発ペースを維持できるよう支援してくれました」

McGee 氏は開発開始当初から、特定のシーン内や環境レベル内で実現可能なスケールやディテールに関する懸念を抱いていました。チームにとっての初期の大きな不安要素は、コンテンツ表現に関する制約とその回避方法に関する誤解によるものであり、その誤解はすぐに解けました。

「このツールを使いこなせるようになってからは、「Epic 方式」の開発アプローチを理解することができ、すべてがスムーズに進行しました」と McGee 氏は語ります。「今では、制約をほとんど意識させることのない、広大であっと驚くような空想ワールドを構築することができるようになりました。このゲームの環境に関しては、1 作目で Alice が訪れた場所のいくつかに戻ることになります。1 作目で彼女は、Mad Hatter や Queen of Hearts などのキャラクタと戦いましたが、今作ではその場所に戻り、戦いの結果、各場所で起こった影響に触れることになります。また、今作では新しい場所も登場します。リアルに再現されたロンドンの街中を探索することもでき、Alice は、ワンダーランドとロンドンを行き来しながら旅を続けることになります」

Alice 2: Return to Madness

McGee 氏は、過去数年間にわたって多数のゲームを参考にしたが、 ストーリー重視型の Alice シリーズは、Valve 社の「Half-Life」や 2K Games 社の「BioShock 」(Unreal を使用した作品) の影響を受けている、と述べています。これらのゲームはナレーション ベースで進行し、プレイヤーの選択肢も限られているが、そのストーリーの表現方法とゲームプレイはとても革新的だ、と McGee 氏は語ります。

オリジナルの PC 版「Alice」は、テキサスの Rogue Software 社が、id Software の Quake III の技術を使用して 10 年以上も前に開発したものです。McGee 氏は、Electronic Arts の社員として R.J. Berg 氏と協力し、このゲームのベースとなるストーリーを作成しましたが、その際は Lewis Carroll の原作を読み返し、新しい世界観を確立しました。

「私達は、自宅の火災で家族を失ったことによるトラウマと戦うキャラクタとして Alice を登場させました」と McGee 氏は語ります。「最初のゲームで彼女は、自分が直面している問題を克服するために、精神的なワンダーランドを旅しました。10 年後の今、同じキャラクタが、ワンダーランドを旅するそのパワーを使って現実の世界の問題と対峙します」 オリジナルの PC 専用版は 100 万本というセールスを記録しましたが、McGee 氏は、Unreal Engine 3 のおかげで、開発チームは今作品を クロスプラットフォーム作品 として制作することができた、と語ります。このゲームに寄せられていた期待は、10 億ドルもの興行成績を記録した Tim Burton 監督のディズニー映画「Alice in Wonderland」の公開と連動して、非常に大きなものでした。

「原作の本が出版されて以来、Alice は世界的な影響を持つキャラクタとなっています」と McGee 氏は説明します。「この作品は、演劇や映画、そしてゲームとして数世代ごとにリバイバルし続けています」

インタラクティブな最新リバイバル版であるこのゲームでは、多くの人たちに愛されているキャラクタに新しいアレンジが加えられています。これは、Unreal の鏡の中で始まる新しい冒険です。