世界を救いたいと思っても、一人では成し遂げられない。これは Beastro が掲げる根幹のテーマのひとつです。本作は「crunchy cozy (心地よさと戦略性を併せ持つ)」エクスペリエンスをコンセプトに掲げ、デッキ構築など多様なジャンルの要素を取り入れながら、鮮やかなビジュアルや個性的なキャラクター、そして料理やクラフトといった魅力的なシステムを前面に押し出しています。
プレイヤーは若き料理人 Panko となり、壁に囲まれた村 Palo Pori を舞台に、神である Flambe の助けを借りながら、訪問者である Caretaker たちに創意工夫を凝らした料理を振る舞います。目的は、彼らが村の外れで敵と戦い続けられるよう、心から満足できる食事を提供し続けることです。
その設定は独創的で野心的ですが、Timberline の少人数チームは、本作に対する明確なビジョンのもと、まるで一皿の料理のように要素を絶妙に組み合わせ、誰もが楽しめる「味わい深いエクスペリエンス」へと仕上げることを目指しました。
Unreal Engine 5 のアートおよびアニメーション ツールに魅了された 13 名のチームは、その表現の限界に挑み、圧巻のビジュアルで描かれる人形劇のようなバトルを実現しました。これが本作における「戦略性」を担っています。また、Epic のコミュニティ リソースによるソース コードへのアクセスやサポートも、彼らの目標達成を後押ししました。
さらに詳しく知るために、私たちは Timberline のゲーム ディレクターである Lindsey Rostal 氏、テクニカル ディレクターの Bryan Pawlowski 氏、そしてテクニカル アートおよびアニメーション ディレクターの Nathan Fulton 氏に話を伺いました。Beastro に込められた魅力的な試みの裏側に迫ります。
ご参加ありがとうございます。ファンタジーやアドベンチャー、そして「剣よりスプーン」を重視したデッキ構築要素が融合した、心地よい作品と評される Beastro ですが、多彩なジャンルに独自のアレンジを加えたタイトルのように感じられます。Beastro について、どのようなゲームなのか、またその着想の背景について教えてください。
Lindsey Rostal 氏 (ゲーム ディレクター):Beastro は、私たちが「crunchy cozy」と呼んでいるタイプのゲームです。「世界は一人では救えない」という考えを軸に制作しており、誰かの支えがあってこそ成り立つ。そんな関係性を描いています。Beastro ではプレイヤー自身が英雄になるのではなく、彼らを支える側に回り、その力を引き出していきます。
そのコンセプトはゲームプレイにも落とし込まれており、主人公は農業や釣り、素材集め、住民との交流、料理といった穏やかな日常を送ります。しかし、そうした「cozy (心地よい)」な営みこそが、後に展開される人形劇風のバトルという「手応え感」のある要素を支える力になっています。
プレイヤーは、日々の冒険を通じた英雄たちの活躍を知るとともに、自分のレストランでの食事によって得られる力がどのように活かされているのかを見守ります。彼らはモンスターとの戦いで素材を持ち帰り、それを使って料理を作ることで、さらに強力な力を英雄たちに与えていきます。
最終的には、世界を救うために村を訪れた英雄たちに料理を提供する「地産地消型レストラン」を運営する、心地よいデッキ構築ゲームとなっています。使用する食材や提供する料理がそのまま英雄たちのデッキを形づくり、そのデッキを使って彼らは夜ごとにモンスターとの戦いに挑みます。
穏やかな村 Palo Pori について、そして主人公 Panko がその魅力的な町で果たす役割について教えてください。
Rostal 氏:Palo Pori は、小さな城壁に囲まれた村です。世界に存在するいずれの「フレーバー勢力」にも属さない、さまざまな種族が暮らしています。彼らは戦う者ではなく、職人やものづくりを生業とする、ごく普通の人々です。武器を手に取る代わりに、自分たちの手で壁を築き、安全に暮らしてきました。
そんな穏やかな日常は、世界の神である Flambe が、壁の外の戦いで傷を負い、村に墜落してきたことで一変します。ある日、若き料理人である Panko は彼女を見つけ、保護し、回復の手助けをします。
やがて Panko の師匠が行方不明となり、彼は店を引き継がざるを得なくなります。そして、火を扱うために Flambe の力を借りることになります。ほどなくして、彼らの店は村人だけでなく、Caretaker (外の「フレーバー地域」から訪れる英雄たち) にも食事を提供するようになります。彼らは食事を求めて村にやって来るのです。幸いにも、Panko と Flambe が作る料理は、Caretaker たちの「フレーバー魔法」を解放し、これまでにない力を与えます。その結果、彼らはより激しい戦いに挑めるようになっていきます。
異なる「フレーバー地域」から来る Caretaker たちに好まれる食材やレシピについて、どのようなリサーチや試行錯誤が行われたのでしょうか。
Rostal 氏:私たちは幸運なことに、美食の街ロサンゼルスを拠点にしています。Beastro は、そうした多様で個性的な食文化から大きな影響を受けています。実際にさまざまなレストランを訪れましたし、料理に関するドキュメンタリーやリアリティ番組も、少し恥ずかしくなるくらい大量に観ました (Chef’s Table や Top Chef は特に参考になりました)。その結果、私自身の料理本や雑誌のコレクションもかなり増えましたね。
このゲームを作る過程で、私自身も料理人として成長しました。新しいレシピに挑戦し、味のバランスについて理解を深め、これまでなら避けていたようなことにも積極的に取り組むようになりました。そうした経験を通して、味が人にどのような印象や感情を与えるのか、その理解と味わいへの理解や愛着をより深めていきたかったのです。
アニメーション制作をすべて Unreal Engine 上で行うことで、従来の手法と比べてどの程度スピードは向上したと感じていますか。また、それによって得られた他のメリットについても教えてください。
Fulton 氏:正確に何倍速くなったかを数字で示すのは難しいですが、とにかく大きな変化でした。初期には Maya から UE への移行にある程度の学習コストはありましたが、決して乗り越えられないものではありませんでした。エディタの設定を調整して UI を Maya に近づけることで、かなりスムーズに馴染むことができました。
具体例をひとつ挙げると、キャラクターが周囲の環境とインタラクトするシーンですね。たとえば歩いてテーブルに近づき、物を手に取るような場面です。
従来のワークフローでは、まずレベル上のジオメトリを収集して FBX として書き出し、それを Maya に読み込んで参照します。その上で Maya のキャラクター用のリグを用いてアニメーションを作成し、エクスポート用スケルトンにベイクして再び FBX として書き出します (スクリプトである程度効率化はできますが、それでも必要な工程ではありますし、そもそもリグの準備自体にも手間がかかります)。
その後、再びエディタに戻ってアニメーションをインポートし、シーケンス上でキャラクターを配置し、位置や回転のずれを調整して整合性を取る必要があります。さらにアニメーションを修正するたびに、このエクスポートとインポートの工程を何度も繰り返さなければなりませんし、ファイルの整理も必要です。しかも、後からレベル ジオメトリに変更が入ると、最初からやり直しです。
一方で新しいワークフローでは、コントロール リグのキャラクターをシーンに配置し、シーケンサー上でそのままアニメートします。そして変更を保存すれば、リンクされたアニメーション シーケンスに即座に反映されます。
アニメーションのエクスポートやインポートも不要で、レベル ジオメトリを書き出す必要もありません。さらに、ライティングやシェーディングを含め、実際にゲーム内でどう見えるかを確認しながら作業できます。仮に後からレベル ジオメトリに変更があっても、シーケンサー上でアニメーションを更新して保存するだけで完了です。こうした違いによって、イテレーションにかかる時間は劇的に短縮されました。