インタビュー

2026年10月15日

SILENT HILL: Townfall が UE5 で脳裏に深く刻まれる極上のサイコロジカル ホラーを実現

時として、それまでの常識を覆すほど斬新なゲームが登場し、新たなジャンルを生み出すことがあります。1999 年に発売された Silent Hill は、それまで誰も体験したことのない、独特なサイコロジカル ホラーというジャンルを切り開きました。Alan Wake 2 から Crow Country まで数多くの作品にその系譜が受け継がれている伝説的タイトル SILENT HILL が、シリーズの新たな一作となる SILENT HILL: Townfall として帰ってきます。

この最新作は、1996 年に深い霧に覆われたスコットランドの港町セント アメリアの海岸に漂着した、Simon Ordell というアメリカ人を中心に展開します。霧に包まれたこの町を舞台に、シリーズ特有の「罪の意識」というテーマと、90 年代の英国的な哀愁漂う感性を融合させた本作は、じわじわと迫りくるような身の毛もよだつ心理的恐怖を描き出します。SILENT HILL: Townfall は、まさに真のサバイバル ホラーの復活を告げる作品として期待を集めています。

Screen Burn Interactive が本作の開発に Unreal Engine を採用したのは、Lumen や Nanite などの強力なシステムを活用することで、小規模なチームでも複雑で美しくレンダリングされたシーンを作成できるだけでなく、MetaHuman などのツールにより、リアルなデジタル ヒューマンを作成およびイテレーションするための高速なワークフローを実現できると考えたからです。さらに、チームはエンジン以外の機能にも注目し、RealityScan をはじめとする Epic エコシステム全体の強力なツールを活用して、実在するスコットランドの村のディテールをキャプチャし、取り込みました。

Epic Games では、Screen Burn Interactive のライター兼ディレクターの Jon McKellan 氏、リード アニメーターの Andrea Gandola 氏、リード プログラマーの James Hancox 氏にインタビューを実施し、本作の開発についてお話を伺いました。

ご参加いただきありがとうございます!SILENT HILL: Townfall は、最高に恐ろしい雰囲気を醸し出していますが、本作の概要と、セント アメリアでプレイヤーを待ち受けているものについて教えていただけますか?


Jon McKellan 氏、ライター兼ディレクター:SILENT HILL: Townfall は、ストーリー主導のホラー ゲームです。主人公の Simon Ordell は見知らぬ町に漂着しますが、なぜか「状況を正す」ために、この町に「戻る」ように迫られます。 

舞台となるのは、スコットランド沖の島町、セント アメリアです。本作は、SILENT HILL シリーズのフルレングス作品として初めて、一人称視点を採用しており、ステルス、回避、戦闘、パズル解決が独自に融合されています。
 
 

Silent Hill は、ホラー ゲームの中でも最も熱狂的なファン層を持つシリーズの 1 つですね。フルレングスの独立した作品を制作するにあたりどのような目標を掲げたのでしょうか?また、チームとして、Silent Hill 作品における Silent Hill 作品らしさをどのように定義されたのでしょうか?


McKellan 氏:Silent Hill は、人によってさまざまな意味を持つ作品です。これほど長く続いていて、しかも実験的な試みを数多く行ってきたシリーズですから、いつ、どのようにしてその魅力に触れたかによって、ファンそれぞれが抱く原体験や思い入れのポイントも異なるのだと思います。 
私個人としては、1999 年に PS1 で発売されたオリジナル作品をきっかけに夢中になり、それ以降、このシリーズは私自身の創作活動のインスピレーションの源となりました。その一方で、ここ 10 年ほどの間にこのシリーズを知り、過去のオリジナル作品を「レトロなカルト的名作」として発見したというファンの方々もいらっしゃいます。こうした傾向は、開発チームだけでなく、ファン層にも見られます。

プロジェクトを開始するにあたり、Silent Hill がそれぞれのチーム メンバーにとってどのような意味を持つのかを尋ねたところ、予想通り、返ってきた答えは実に多種多様なものでした。そこで私たちが着目したのは、共通点、つまり個々の作品や体験を越えて一貫したテーマ、思考、感情でした。堀り下げるべき点は数多くあり、「霧に包まれている」といった単純な話にとどまるものではありませんでした。

ストーリーは主観的で、常に解釈の余地がありました。作品の雰囲気は、突然の驚きで怖がらせるようなものではなく、重苦しく緊張感に満ちたものでした。そこには深い心理的ホラーの要素があり、遭遇するクリーチャーでさえも、ストーリーやその主人公たちと密接に結びついていました。

スコットランドの海岸沿いまで赴き、実際の漁村や桟橋、そして北海から押し寄せる海霧のハールを撮影されたそうですね。そういった現地調査は、セント アメリアという町や、本作全体の雰囲気を形作るうえでどのような役割を果たしたのでしょうか?


McKellan 氏:この現地調査は制作プロセスに不可欠でした。作品の中で新しいロケーションを作り、そこに実在感を持たせるためには、可能な限り頭の中でその場所に「実際に住んでみる」必要があると私たちは確信しています。実際に町を訪れ、自分の経験や記憶からもヒントを得ることは、町の見た目や雰囲気だけでなく、物語の要素やゲームプレイの舞台となる場所を定義するうえで、非常に大きな役割を果たしました。

私たちはさまざまな町や村を撮影するだけでなく、スキャンも行いました。RealityCapture [現在は RealityScan にリブランド] と LiDAR スキャンを組み合わせることで、非常に興味深い表面の質感やオブジェクト、地形の独特な特徴をゲームに取り込めただけでなく、あらゆるものの寸法や全体的なサイズ感も正確に再現することができました。

通り全体をスキャンして Unreal Engine に直接取り込むことで、マテリアルの参考情報やスケール、奥行きを把握するための出発点が得られました。それだけでなく、壁の沈下や歪みの程度など、自分たちだけでは想像もできなかったような驚くべき要素も明らかになりました。こういった町には直角もなければ、グリッドに沿った構造は 1 つとして存在しないのです。
「SILENT HILL: Townfall」の舞台、スコットランドの港町セント アメリアの雰囲気のある通り。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

Screen Burn Interactive の拠点は、どちらですか?また、SILENT HILL: Townfall に携わったチームの規模はどれくらいですか?


McKellan 氏:主にスコットランドのグラスゴーに拠点を置いていますが、ロンドンとブライトンでリモート勤務をしているスタッフも数名います。現時点では 27 名で、小規模チームですが、大きな目標の実現に向けて取り組んでいます!
 
 

SILENT HILL: Townfall は、Screen Burn にとって Unreal Engine で制作する初めてのプロジェクトですね。どのような理由からこのプロジェクトに Unreal Engine 5 を選ばれたのでしょうか?開発中に特に注目した UE5 の機能と注目した理由について教えていただけますか?また、チームは UE にスムーズに移行することができたのでしょうか?


McKellan 氏:プロジェクト開始時に Unreal Engine 4 に移行しました。プロジェクトの要件を検討していた当時に、最も重視していた 2 つの要素は、レンダリングにおけるリアリズムと、ブループリントでした。私たちのような規模のチームでは、あらゆる機能を実装するためにコード開発に時間を費やすことはできません。ですが、ブループリントのおかげで、各部門が自分たちでゲームを構築したり、少なくともプロトタイプを作成したりできるようになりました。Screen Burn では全員が複数の役割を兼務しているため、そういった柔軟性や、他部門での作業時間を持つことなく、迅速にプロトタイプを作成できる点は、私たちに大きな変化をもたらしました。UE5 の導入により、生産性も多くの面で飛躍的に向上しました。
 
 

Unreal Engine 5 のライティング、マテリアル、環境ツールは、本作の冷たく、霧に包まれたビジュアル アート スタイルを実現するうえでどのように役立ったのでしょうか?


McKellan 氏:Nanite と Lumen の両方を活用できたおかげで、小規模なチームでありながらも、きわめて複雑で美しくレンダリングされたシーンを制作できるようになりました。正直なところ、霧と曇天の光に包まれた、変化に富んだ環境を表現するのは、最も実現が難しい組み合わせの 1 つと言えるでしょう! 
奥行きを保ち、窓から差し込む自然光とバランスを取りながら、霧で拡散された太陽光の照明を正確に描写するには、多くの試行錯誤が必要でした。

そこに高密度のボリュメトリック フォグを組み合わせ、さらに Nanite で複雑な建築マテリアルを自由に作成できるようになったことで、この町の歴史や時代背景を表現するために不可欠な、歪みやひび割れといったディテールを徹底的に重ね合わせることができました。率直に言って、Nanite と Lumen がなければ、このゲームはまったく異なる作品になり、おそらく規模もはるかに小さなものになっていたでしょう!
「SILENT HILL: Townfall」の路地で正体不明の人物に銃を向けるプレイヤー。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

Lumen の動的グローバル イルミネーションと反射システム、さらにレイ トレーシングも活用しているとのことですが、これらのシステムを SILENT HILL: Townfall に実際に導入してみてどうでしたか?また、本作の見た目にどのような変化がありましたか?


McKellan 氏:Lumen は私たちにとってまさにゲーム チェンジャーでした。私は本作のライティング アーティストを務めていますが、開発のかなり早い段階で、ワールドのライティングを迅速かつ劇的に変更できるシステムを構築しました。例えば、通常の霧の状態から異世界のライティング プロファイルへと切り替えるといった変更を、ゲーム内のほぼすべてのライトにリアルタイムで反映させることができるシステムです。

このシステムは、意図的に物理的に正確ではない部分もありますが、Lumen が提供するシステムは柔軟性が高く、必要なとおりにシーン ライティングを構築できます。シーンのライティング制作時でも、ゲームプレイ中に異世界へとライティングが切り替わる演出時でも、微細な調整から全体的な変更まで迅速に行うことができます。ライティングのベイク時間を気にする必要がなく、迅速なイテレーションが可能になった点は、これまでのタイトルの開発時の経験とはまったく異なるものでした。
 
 

Nanite 仮想化ジオメトリをどのように活用して、セント アメリアとその緻密に作り込まれた環境を構築したのでしょうか?


McKellan 氏: Nanite のおかげで、以前は想像することしかできなかったレベルのディテールや長い時間の経過の痕跡を、すべてのフレームに重ね合わせることができるようになりました。それだけでなく、アーティストの作業スタイルそのものも根本的に変わりました。詳細度 (LOD) やハイポリ/ローポリのベイクに多くの時間を費やす必要がなくなり、最初から中~高ポリゴン数でアセットを構築できるようになりました。その結果、最適化とパフォーマンスを維持しながら、ゲームに迅速にアセットを組み込めるようになりました。

また、Nanite を使用すると、現地調査で得た未加工のスキャン データをワールドに直接取り込み、実際にシーン内で歩き回ったりプレイしたりしながら、何を構築し、調整し、あるいは削除するかを判断できるようになりました。
 
 

本作が醸し出す恐怖感において、キャラクターは中心的な役割を担っていますね。MetaHuman がキャラクターとシネマティック制作のパイプラインにどのように組み込まれ、他の DCC ツールと連携したのかについて、教えていただけますか?


Andrea Gandola 氏 (リード アニメーター):MetaHuman は、Maya や Unreal Engine の開発環境に直接統合できる、標準化された高品質なリグとアセットを提供してくれました。これにより、キャラクターを通じて繊細でありながら、ドラマチックな演技を表現するうえで不可欠な、非常に詳細な表情や微細な動きを再現することができました。Townfall での演出は、控えめでニュアンスに富んだものです。MetaHuman は、こうしたストーリーの伝え方を実現する鍵となりました。例えば、ほんの少し視線を動かすだけでも、より大きな感情の動きを暗示することができるのです。

Townfall では、開発の初期段階から MetaHuman パイプラインに移行することを決定しました。つまり、MetaHuman 技術の進化、改良もそのまま取り入れることができました。MetaHuman の複雑なアセットとリグ生成機能は、DCC ツールとエンジンの間をつなぐ優れた架け橋となりました。採用の主な理由の 1 つは、大規模で複雑になりがちな FACS (顔面動作符号化システム) ベースのリギング パイプラインの開発および維持の必要性をなくすことでした。これにより、キャラクターごとのセットアップと研究開発にかかる数か月を削減できました。RealityCapture でスキャンし ZBrush で処理したメッシュや、俳優本人の容貌を可能な限り忠実に再現するために、MetaHuman Creator を使用しました。
「SILENT HILL: Townfall」の Simon Ordell のクローズアップ。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

MetaHuman がプロジェクトにもたらした最大のメリットは何でしたか?また、キャラクターやカットシーンを制作、実装する作業には、日常的に何名くらいのスタッフの方が携わっていたのでしょうか?


Gandola 氏:私たちのような規模のチームにとって、MetaHuman のヘッドは、迅速なイテレーション、処理時間の短縮、表現の深みとディテールを実現するうえで不可欠でした。セットアップが標準化されているため、メッシュ、スケルトン、リグ ロジック、ビルド ツールなどを共有でき、その結果、多くの改善点をすべてのキャラクターに適用することができました。

アニメーションに関しては、カットシーンの制作に常時 3 名が携わっていました。そのうち 2 名はゲームプレイ関連のタスクも兼務していました。具体的には、専任のシネマティック アニメーターが 1 名、テクニカル アニメーターが 2 名です。テクニカル アニメーターのうち 1 名は DCC ツールを主軸にリグやメッシュを担当し、もう 1 名はゲームプレイやシステム寄りの役割として、リアルタイムのゲーム ワールドとカットシーンのシーケンスを連携させる作業を担っていました。プロジェクト全体を通じて、フェイシャル アニメーションのブラッシュアップや編集作業の大部分をたった 1 名のアニメーターが担当しました。このことは、そのアニメーターのスキルだけでなく、使用していたツールの品質の高さをも証明しています!

その他の作業については、Jon が シーケンサーでのシーンの編集、カメラ アニメーション、ライティングを担当し、Arrival のチームがオーディオ制作と音声編集を担当しました。
 
 

MetaHuman を活用することなく、チームがゲームのキャラクターやカットシーンを制作した場合、さらにどれくらいの時間がかかっていたと推測されますか?


Gandola 氏: MetaHuman パイプラインを導入する以前、私たちは従来のFACS ベースのパイプラインを使用していました。それには高額なライセンス料が必要なうえ、セットアップに長い時間がかかり、手作業でのマーキング作業も膨大で、さらに後から大幅な調整が必要になることもありました。一方、MetaHuman はエンジンに統合されているため、迅速なイテレーションが可能になり、スマートな自動解決機能のおかげで、アニメーターは面倒な技術的プロセスから解放され、クリエイティブな作業やブラッシュアップに時間を割けるようになりました。

結局のところ、MetaHuman を使用しなければ、Townfall のストーリーの表現方法は大きく異なっていたでしょうし、私たちのチーム規模では実現できるシーンの数もはるかに少なくなっていたでしょう。
UE5 を採用したゲーム「SILENT HILL: Townfall」に登場する看護師 Zoe Ellis。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

カットシーンをリアルに表現するうえで、シーケンサーと Unreal Engine のインエンジンのアニメーション ツールはどのような役割を果たしましたか?その作業のどれくらいが直接エンジン内で行われたのでしょうか?


Gandola 氏:ゲーム内のシネマティックスはすべてシーケンサーを使用しており、音声と同期してアニメーション化する必要のあるゲーム内アイテムもいくつかあります。これらは、特定の瞬間や動的な瞬間によってトリガーされ、ゲームやミッションの他のロジックとはきちんと分離されています。シーケンサーのイベント トラックのおかげで、ライティングの変化といったワールド内のイベントを確実に制御し、同期させることができました。

開発期間を通じて、ブロッキングから最後の微調整やブラッシュアップに至るまで、迅速なイテレーションを行うためにエンジン内のアニメーション ツールを活用しました。ただし、アニメーターが、既存のツールで最も使い慣れている Maya の使用を優先しつつも、今後さらに活用していくことが見込まれる UE のツールのアップデートにも常に注目していました。
「SILENT HILL: Townfall」でプレイヤーが CRTV を手にしているシーン。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

CRTV は、シリーズおなじみの「ラジオ」に代わる巧妙な装置ですね。実際の CRT (ブラウン管) テレビやポケット テレビで映像を再生し、その外観を作成したというお話を伺いました。Unreal Engine のどのツールが、そのアナログな質感をゲームで再現するのに役立ちましたか?


McKellan 氏:CRTV 用のコンテンツ制作は、実際に手を動かし、クラフト的な要素の強い作業でした。コンピューターの外で何かを作り上げる作業全般に言えることですが、非常に自由度が高く、ワクワクするようなプロセスでした!

具体的な手順としては、カットシーンやゲームプレイの最終映像を、長年収集してきた実際の CRTV や放送用モニターに出力し、再生時にさまざまな手法で信号を歪ませたうえで、その結果を撮影するというものでした。その後、コンテンツは Bink ビデオ ファイルとして再生され、CRTV の描画用マテリアルにレンダリングされました。

私たちは、複雑なマテリアル内でこのビデオ テクスチャを再生できるようにしました。このマテリアルでは、スタティック ノイズの追加や、並行して再生される複数のビデオ クリップのクロスフェード処理が可能です。さらに、アップスケーラーによる処理からノイズ部分をマスクで除外することで、グリッチや不規則な動きを含む映像が、アップスケーリングやフレーム ブレンディングによって滑らかに「綺麗に」整えられてしまうのを防ぎました。映像をあえてこれほど「ひどい状態」に見せるには、多大な時間と労力がかかるものなのです!

信号フローに組み込むためのオリジナルのシーケンスの作成は、実際のゲームプレイ映像、独自に作成したシーケンス、そしてカットシーンを組み合わせたものでした。また、それらのショットにリアルな手持ちカメラの撮影のような質感を加えるため、カメラの揺れのアセットを細かく調整して使用しました。実際のテレビを使った外部処理の工程では、単に質感を加えるだけでなく、シーンの内容に合わせてノイズや砂嵐、信号の劣化といった要素を「演奏」するように制御できました。ケーブル入力を楽器のように「演奏」することで、特定のセリフに合わせて砂嵐を激しくするといった演出も可能でした。テレビを「壊す」作業ですが、これほど楽しい作業はありません!
「SILENT HILL: Townfall」の CRTV の画面に映し出された不気味な家。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

本作の緊張感の多くは、ステルス要素や、プレイヤーにはまだ見えない脅威から生まれていると思います。敵の行動や遭遇時のデザインにはどのように取り組み、そういった場面を調整するうえで Unreal Engine はどのような役割を果たしたのでしょうか?


McKellan 氏:デザイン チームは、敵の行動をコントロールするために、複雑でありながら、高度なビヘイビア ツリーを構築しました。ステルス性が高い場面でプレイヤーに恐怖を感じさせるためには、クリーチャーが、かなりグロテスクで奇妙な姿をしてはいますが、「リアルに感じさせる」行動をとる必要がありました。クリーチャーは明らかに抽象的な生き物であり、動物ではないので、矛盾しているように思えるかもしれませんが、奇抜なデザインを取り入れながらも、彼らに感覚と探索能力を備えさせることで、クリーチャーに現実味を持たせることができたのです。感覚、ビヘイビア ツリー、ナビゲーション メッシュ、そして音声専用のナビゲーション メッシュを組み合わせることで、プレイヤーの位置、向き、行動に合わせて個別にカスタマイズされたようなクリーチャーの挙動を実現しました。これは 10 年前には実現不可能でした。
「SILENT HILL: Townfall」で薄暗い部屋に佇む突然変異した村人。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

開発全体を通じて UE のソース コードにアクセスできたことは、どのくらい重要でしたか?


James Hancox 氏、リード プログラマー:開発中、Unreal Engine のソース コードにアクセスできたことは、私たちにとって非常に有益でした。ソース コードのおかげで、各システムがどのように実装されているかを詳細に理解でき、Unreal Engine をスムーズに活用して本作を構築することができました。また、必要に応じてエンジン自体を改変することもできます。具体的には、Unreal Engine の新しいバージョンで行われた変更や改善を以前のバージョンにバックポートしたり、ゲーム特有の状況に対応するためにエンジンのシステムを拡張したりできます。

例えば、本作はシネマティックな演出を重視しており、シネマティック シーンはもちろん、プレイヤーが CRTV を持ち上げる際や、メイン メニュー画面でも被写界深度エフェクトを使用しています。ソース コードにアクセスできるおかげで、UE 5.6 で本作をリリースしたにもかかわらず、UE 5.7 や 5.8 で導入された被写界深度に関する機能強化を本作で活用することができました。
 


Unreal Engineのプロファイリング ツールは、チームのデバッグやパフォーマンス最適化にどのように役立ちましたか?SILENT HILL: Townfall は、PlayStation 5 版でレイ トレーシングに対応し、2種類のグラフィック モードを搭載していますね。これらの目標を達成するために、どのようなアプローチを採用されたのでしょうか?


Hancox 氏:SILENT HILL: Townfall の最適化にあたり、Unreal Engine のツールを数多く活用しました。パフォーマンスが低下しているシーンやエリアを特定した場合に、通常、最初に使うツールは、Unreal Insights です。Unreal Insights より、GPU と CPU の処理時間に関する詳細な内訳を把握でき、フレーム内で何に時間がかかっているのか、そしてどの領域に注力すべきかが明らかになりました。

ボトルネックがどこにあるかに応じて、エディタ内のさまざまなツールを使い分け、最適化の対象を絞り込みました。たとえば、シャドウ マッピングの負荷が特に高いことが判明した場合は、特定のシーンのライティング設定を確認するためにライト ミキサーを使って特定のシーンのライティング設定を確認し(範囲が広すぎるライトがないかなどを確認)、仮想シャドウ マップ (VSM) のキャッシュされたページ ビューを使用して、ワールド位置オフセットなどが原因で VSM のキャッシュが無効化されている箇所を特定しました。

標準搭載のツールでは私たちのニーズに完全に合わない場合、拡張やカスタマイズを行うこともありました。Unreal Engine のフロントエンド フィルター検索システムを基盤として、問題のある特定の種類のテクスチャやメッシュを検索するためのカスタム フィルターを追加したり、Unreal Insights のマーカーでゲームのソース コードに注釈を付け、CPU 時間がどこに費やされているかを追跡できるようにしました。また、Gauntlet システムを利用して、ゲームの簡易的な自動パフォーマンス テストを構築しました。小規模なチームにとって、こうしたシステムを基盤として活用できることは非常に大きな価値がありました。私たち自身でこういったツールをゼロから構築、保守するリソースはありませんが、既存のツールを拡張することで、特有の課題を解決することができたのです。

PlayStation 5 で目標を達成するには、多くの作業が必要でした。大まかに言えば、私たちが採用したアプローチは動的解像度スケーリングを活用し、ターゲット フレーム レートを維持しながら、内部解像度を変動させるというものでした。その上で、継続的なプロファイリングと反復的な最適化を行い、フレームの各処理段階からさらなるパフォーマンスを引き出そうと試みました。

特にレイ トレーシングに関しては、UE 5.6 での最適化のおかげで、コンソール版においてソフトウェア レイトレーシングからハードウェア レイトレーシングへと移行することができました。ただし、それに伴い、レイ トレーシングのアクセラレーション構造、すなわち、トップ レベル アクセラレーション構造 (TLAS) とボトム レベル アクセラレーション構造 (BLAS) の最適化を重点的に行う必要が生じました。

レンダリング リソース ビューアを使用することで、BLAS のサイズが異常に大きいアセットを容易に特定できました。こういった問題のあるアセットが特定されたら、アート チームと協力して最適化の方法を見つけることができました。一方、TLAS の最適化はより困難な課題でした。セント アメリアはリアルで、密度の高い環境であり、XY グリッドに沿っていない曲がりくねった道路や建物が多いため、特定の領域で TLAS の非常に大きなオーバーラップが発生していました。エディタ内のインスタンス オーバーラップ デバッグ ビューで問題箇所を特定することはできましたが、レベルのレイアウトが既に確定していたため、できることはやや限られていました。道路のような非常に大きなメッシュを小さなセクションに分割することで多少の改善は見られましたが、解決が難しい問題であることに変わりはありませんでした。
「SILENT HILL: Townfall」の霧に包まれた不気味な通り。
©Konami Digital Entertainment ©Annapurna Interactive ©Screen Burn

チームは開発を通して、UE のドキュメント、Epic Developer Community、Epic Pro Support、Fab などのエコシステムを活用されたのでしょうか?


Hancox 氏:プロジェクト全体を通して、Epic Pro Support には大変助けられました。Epic Pro Support のおかげで、他のデベロッパーがどのように問題に対処しているかを確認したり、機密性の高いプラットフォーム関連の課題について議論したり、さらには私たちが使用していた Unreal Engine の新機能の開発者に直接連絡を取ったりすることができました。

例えば、UE 5.5 の新しいファースト パーソン レンダリング機能を試し始めた際、発見した問題や遭遇した具体的なバグについて開発者にフィードバックを送ることができました。その結果、UE 5.6 でのリリース時には報告した問題が解消されており、改善された機能を活用して本作をリリースすることができました。
 
 

現在 Unreal Engine を検討しているインディー チームや小規模チームに向けて、何かアドバイスはありますか?


McKellan 氏:どんなプロジェクトにも言えることですが、適切なエンジンを選ぶだけでなく、そのエンジン内で適切なツールセットを選ぶことも重要です。UE にはフォトリアルなレンダリング以外にも幅広いアプリケーションに対応しており、ソフトウェアに搭載されているツールセット (モデリング ツールや プロシージャル コンテンツ生成など) を活用することで、ワークフローを劇的に変えることができます。

UE5 と UE5 が提供するツール群がなければ、SILENT HILL: Townfall を制作することは、特に私たちが実現したような品質や規模で作り上げることは不可能だったと言っても過言ではありません。わずか 27 人のチームで AAA レベルのゲーム体験を作り上げるのは大変なことですが、Unreal Engine のおかげでその負担は大幅に軽減されました。それだけでなく、以前なら思いつかなかったような開発手法や斬新なアイデアを取り入れながら、私たちが本当に作りたかったゲームを実現することができました。
 
 

本日はお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!SILENT HILL: Townfall についてさらに詳しく知りたい場合は、どこで確認できますか?

Hancox:公式サイト https://www.konami.com/games/silenthill/townfall をぜひご覧ください。