懐かしさには強い力があります。音楽に耳を傾けるといった特定の体験をすると、さまざまに入り交じった感情や記憶が思い起こされ、世界が少し輝いて見えた、楽しかった日々、素朴だった時代に連れ戻されることがよくあります。
しかし、一体いつ、どのように懐かしさが形作られるのかはわかっていませんが、過去を「古き良き時代」にするには「あの頃は良かった」と懐かしむのがポイントです。
Mixtapeでは、懐かしさの本質を捉え、懐かしさが生まれる謎を探る旅に出ます。
デベロッパーの Beethoven & Dinosaur はオーストラリアに拠点を置くスタジオです。同スタジオは、2021 年に賞を獲得した作品 The Artful Escape を制作した後、Unreal Engine に行き詰っていましたが、今では Unreal Engine 5 で妥協のないクリエイティビティを発揮したその特徴的なスタイルを編み出し、Mixtape で披露しています。
先日、Beethoven & Dinosaur のテクニカル ディレクター Roman Maksymyschyn 氏とクリエイティブ ディレクター Johnny Galvatron 氏にインタビューを行い、小規模なインディー チームが UE5 を活用してコントロール リグを使ってエンジン内アニメートを行う方法や、ソース コードにアクセスしてエンジンを拡張する方法、ブループリントを使ったアイデアの迅速なイテレーション方法のほか、本作に期待されているであろう、本ゲームの最重要要素であるオーディオ体験を MetaSound をフル活用して最先端の技術で届ける方法について伺いました。
その内容は、以下のインタビューをお読みください。
本日はよろしくお願いいたします!Mixtape は懐かしさあふれる思い出をたどる体験ができるようですね。まず、どのようなゲームなのかを教えていただけますか?
Roman Maksymyschyn 氏 (以下、RM 氏。テクニカル ディレクター) と Johnny Galvatron 氏 (以下、JG 氏。クリエイティブ ディレクター):Mixtape は、仲良しの高校生 3 人が、もう戻らないつもりで故郷を離れる前日を一緒に過ごす話です。ある時代のサウンドトラックに込められた、夢の断片のような音楽、思い出、出来事を集めていきます。
象徴的なサウンドトラックを基に青春物語を作成するというコンセプトはどこから得たのですか?
JG 氏:いつも私たちがインスピレーションを得ているのは、青春映画、ハングアウト映画、思春期を軸にした映画です。たとえばジョン・ヒューズ監督の作品がそうです。それらの映画では、登場人物が変化という大きな危機に立ち向かいます。「同じ時は二度とこない」という感覚は、物語を構築するうえで素晴らしい核になります。この感覚は、時代を問わず、エモーショナルです。ほとんどの人は、この考えをある程度は理解できるでしょう。
他のゲームと比べて、Mixtape のエクスペリエンスではサウンドトラックが果たす役割ははるかに大きなものです。最初の時点から特定のトラックをゲームに含めようと考えていましたか?それとも、開発をしながら決めていったのですか?
RM 氏:最初に Johnny が Devo から Smashing Pumpkins まで、有名なヒット曲を集めたプレイリストを計画しました。その後は一緒に、異なるアレンジやバージョンを試しました。歌を置き換えたり、加えたり、抜いたりもしました。アレンジごと、ミックステープごとに、伝えられる物語は異なり、強弱の付け方も異なります。最終的に曲順が決まったのは、制作を始めて約 2 年経ったときでした。
Beethoven & Dinosaur は、どちらに拠点を置いていますか?また、Mixtape を担当したチームの規模はどれくらいですか?
RM 氏:Beethoven & Dinosaur はオーストラリアのメルボルンに拠点を置いており、コア チームは 12 人です。
このプロジェクトに Unreal Engine 5 を使おうと思ったのはなぜですか?また、開発中に特に印象に残った UE5 の機能は何でしたか?その理由もお教えください。
RM 氏:UE5 を選んだ理由はいろいろありますが、挙げるとすれば、インディー チームが最先端のゲーム開発テクノロジーを使い続けるのに最高の方法だということです。私たちのチーム規模では時間の都合で自作できない、さまざまなテクノロジーや機能を利用できます。
特に気に入っているのは、ソース コードへのオープン アクセスです。エンジンの内部で何が起こっているのかを短時間で深く理解できるほか、エンジンをカスタマイズしたり、必要な場合は今後のリリースで追加される特定の機能や修正プログラムをすばやく取り入れたりすることができるからです。
Unreal Engine に用意されているツールをそのまま使って得られた、ビジュアル面で最大のメリットは何でしたか?
RM 氏:具体的な要素を 1 つ挙げるのは難しいですが、幅広い機能が用意されているという事実が重要でした。それらが連携して力を発揮することが、作業やカスタマイズのうえで素晴らしいベースになるからです。
小規模チームの視点から見て、UE のビルトインのアニメーション ツールでどのようにパイプラインが簡素化しましたか?
RM 氏:Unreal のたくさんのアニメーション機能を利用しています。複雑な動作の作成にはアニメーション ブループリント、動的なアニメーション プロパティの管理にはモンタージュ スロットを使っています。最も便利な機能の 1 つはコントロール リグです。Look At や足 IK のように、一般的な用途でこれをいつも使っています。しかし、ゲームの一部では Unreal で徹底的にアニメートすることにしました。Unreal を使うと、プロセス全体が Unreal 内にカプセル化され、技術チームとアニメーション チームの間で透明性を確保してすばやくイテレートができて素晴らしいです。
また、コントロール リグを使ってシーケンサーで既存のアニメーションにちょっとした調整を加えたり、スケートボードの車輪をアニメートしたりもしています。車に乱流やノイズを追加するようなことすらできます。
本作はオーディオに重点を置いていますが、MetaSound を使用してゲームの全体的なサウンド設計に影響を及ぼすことはできましたか?
RM 氏:はい。ゲーム全体でかなり MetaSound を使用しており、サウンドを編集するプロセスを楽しんでいます。オーディオ グラフ フローを生で見ながらあれこれ調整できるのは面白いし便利です。概して、非常に強力なツールですね。
Mixtape に作成した中で最も役立った MetaSound の 1 つは、サウンド ウェーブを用意 (ループの開始、終了、フェード時間を指定) して、イントロを流した後にシームレスにクロスフェードして特定の時点に戻ってくる MetaSound です。このおかげで、ループしないサウンドをシームレスなループにして、音楽や継続的サウンド エフェクトを作ることができました。特に、曲の冒頭を再生した後に残りの部分をループ再生したい場合には、別々のアセットを用意する必要がなく、再生のスケジュール設定も不要なので助かりました。
UE5 の機能の中で、分野横断的なワークフローに最も大きな影響を及ぼしたのはどの機能ですか?そういった機能は、開発プロセス全体を通して、イテレーション時間の短縮、チームのコラボレーションの向上、制作コストの削減にどのように役立ったのでしょうか?
RM 氏:分野横断的なワークフローに役立つ機能はたくさんあります。たとえば、アニメーション チームが技術チームに頼らずにブレンド タイミングを調整できるようにモンタージュを作成したり、バイナリ アセットで誤って同時に作業してしまって競合が発生するのをビルトインの Perforce 統合で防止したりできます。しかし、開発のスピードアップに最も寄与したのは、エディタを拡張してユーザー独自のニーズに合わせたカスタム ツール (たとえば、ゲームの特定の時点をエディタ内でプレイできるデバッグ メニュー) を作れる機能です。
C++ とブループリントを併用し、チーム全体で開発を効率化することができましたか?
RM 氏:はい。どちらも、Mixtape の開発に重要な役割を果たしています。パフォーマンスの高いコードを C++ で作成して、デザイナー用のブループリントに公開する内容を選択できるのはとても有益でした。ブループリントに位置メッシュ コンポーネントや Set Material などのビジュアル要素を処理できる手段があるのがよかったです。
開発全体を通じて UE のソース コードにアクセスできたことは、どの程度重要でしたか?
RM 氏:この上なく重要でした。複数のプロジェクトにわたって Unreal Engine を使い続けた主な理由の 1 つです。迅速なデバッグ、エンジン コードの拡張、個々のアップストリーム修正の取得ができるといった明確なメリットの他にも、ベスト プラクティスを判断したいときや、Epic がどうやっているのか気になるとき、とりわけカスタム エディタのツールや拡張機能を作成するときには、コードの基準点として非常に有益です。
デバッグとパフォーマンスの最適化に際して、Unreal Engine のプロファイリング ツールはどのように役立ちましたか?
RM 氏:Unreal のプロファイリング ツールはとても有用です。特に、Unreal Insights を常に使用して、パフォーマンスのボトルネックを特定したり、ヒッチの (発生場所がエディタとビルドのどちらであるかにかかわらず) デバッグをしたりしています。最近は、新しく登場した Audio Insights ツールもよく活用しています。ゲーム内の音声のデバッグとマスタリングに非常に便利なツールです。
チームは開発を通して、UE のドキュメント、Epic Developer Community、Epic Pro Support、Fab などのエコシステムを活用されたのでしょうか?
RM 氏:はい。前述のリソースはどれも有益でした。他に人気のエンジンを使う大きなメリットだと思うのは、何らかの問題に遭遇したとしても、大抵は他の人がすでに体験しているので、オンライン上のどこかで議論済みで、対処方法や修正が見つかるケースがよくあることです。特殊なサポートが必要な場合は、エスカレートして Epic から直接サポートを受けられるのも良いですね。Fab はプロトタイピングにときどき使っています。考えているアセットに似ているものが見つかればそれを使ってとにかくプロトタイピングしてみますし、気に入るアセットや気に入らないアセットからアイデアなどが得られることもあります。
前述のアセット以外では、コンテンツ サンプルが非常に有益です。とりあえず始めてみて、さまざまな要素がどのように構成されているのかをコンテキストに即して確認できるほか、自分のプロジェクト内で何らかの理由でうまく動作しない機能がある場合に何が誤っているかを確認する際の基準とすることができます。