Youths in T-poses from UE5-powered game ‘to a T’.
たくさんのゲームに簡単にアクセスできるため、どのゲームをプレイするかを決めるのに困ることがよくあります。ゲーム デザイナーは、自分のプロジェクトがコンテンツの海に埋もれてしまう恐れがあることを理解しているため、自分の作品が多くの作品の中でも際立つように、本当の意味でユニークで特別な作品を作り出すことに注力しています。

本当の意味でユニークで特別であるということは、日本を拠点とするゲーム開発者兼アーティストである高橋慶太氏の作品にとっても最も重要な要素です。高橋氏は革新的なゲームプレイ メカニクスと、驚くほどシンプルで愛らしいビジュアル センスを融合した、象徴的な「塊魂」シリーズの制作で広く知られています。

今回、Unreal Engine 5 を初めて使用した高橋氏の最新作は、to a T です。本作は、T ポーズから抜け出せないという、ありえない状況にあるティーンエイジャーの視点を通して、日常のありふれた出来事を体験する、エピソード形式のアドベンチャー ゲームです。

鮮やかなビジュアル、印象的なキャラクター、そして牛乳を飲む、着替えるといったゲーム化されたタスクを備える to a T は、昨今の多くのゲームの典型的なゲーム体験をはるかに上回る楽しい体験を提供しており、その体験のレベルだけでも際立っています。

では、このユニークなプロジェクトを制作するきっかけとはどのようなものだったのでしょうか?また、Unreal Engine 5 は、小規模な開発チームの目標の実現においてどのような役割を果たしたのでしょうか?高橋氏にお話しを伺いました。
この興味深いプロジェクトについてお話しを伺う機会をいただき、ありがとうございます! まず、to a T の内容について教えてください。  

高橋慶太氏 (デザイナー兼スタジオ共同設立者):to a T は、T ポーズから抜け出せくなったティーンエイジャーと、愛らしい犬が中心となっている作品です。 
 

to a T のデザインや開発のきっかけについてお聞かせください。 

高橋氏:私たちが暮らす世界は、多くの人にとって幸せな場所とはいえません。だからこそ、何か前向きで楽しい作品を作りたいと考えました。
 

本作における T ポーズは何を表しているのでしょうか?何か大きなもののメタファーなのでしょうか?あるいは、社会の何らかの側面に対するメッセージが込められているのでしょうか?

高橋氏:特にはないのですが、何にでもなり得ますね。実は T ポーズについてすごく面白いジョークがあるんですが、物議を醸すかもしれないので、ここでお話しするのは控えます。 
 

ゲームのストーリーは、コアとなるゲームプレイ メカニクスにどのように影響を及ぼしているのでしょうか?

高橋氏:プレイヤーに戦闘やアクションを促すゲームはたくさんあり、そういったゲームが面白いのは承知しています。ボタンを押して複雑なアクションを実行するのは、プレイする側も見る側も楽しく、満足感があります。ですが、私はお箸を使う、豆を摘む、服をたたむといった、より日常生活に近い動作をゲームで再現したいと考えていました。なぜそう思ったのかはわかりません。多分、私が変わっているからでしょう。人間の体や動きは複雑ですので、パンチやジャンプといった素早い動作をシミュレートするのは難しくありませんが、牛乳パックを持ってボウルに牛乳を注ぐといった動作は、より多くのステップが必要になるわりには、戦闘のように楽しくも満足感も得られません。ですが、T ポーズが私の望みを叶える完璧なアイデアだと気づいたのです。退屈な日常を異なる視点で体験することで、新鮮な体験とアイデアがもたらされたのです。
The teenage main character in UE5-powered game ‘to a T’.
Image courtesy of Annapurna Interactive
本作のストーリーは「ティーン」という名前のキャラクターを中心に、数日間にわたりエピソード形式で展開されますね。 このアプローチは、ストーリー全体においてなぜ重要だったのでしょうか?

高橋氏:これはアニメからヒントを得た形式で、ストーリーはオープニング ソングで始まり、エンディング ソングで終わります。この形式を真似したいと考えたのは、ティーンエイジャーの日常生活を語るのにぴったりなアイデアだと思ったからです。
 

to a T には、プレイヤーが主人公の視点で生活を体験できる各種ミニゲームが用意されていますね。Unreal Engine でこういったミニゲームのプロトタイプを作成して、最終的に作品に追加するミニゲームを選択したチームのプロセスについて、お聞かせください。

高橋氏:少人数のチームですので、各ゲームのプロトタイプ作成にあてることができる時間が十分にはありませんでした。そこで私がストーリーボードを作成し、紙と頭の中でストーリーとインタラクティブ部分のバランスについて考えました。ストーリーボードは、主にチームに方向性を示すための、基本的なラフ アイデアに過ぎません。実際、エディタでかなりの変更を加える必要がありました。
Stylized characters in UE5-powered game ‘to a T’.
Image courtesy of Annapurna Interactive
美しい景色を見つけたり、興味深いキャラクターに出会ったりと、このゲームにはさまざまな探索要素が盛り込まれていますね。なぜこういった要素を全体的な体験に組み込むことが重要だったのでしょうか?また、UE は生き生きとしたキャラクターや環境を制作するうえでどのように役立ったのでしょうか?

高橋氏:プレイヤーが探索できる魅力的な海辺の町、そしてインタラクションできる魅力的なキャラクターたちを創造することは、開発の初期段階から to a T のデザインの中核を成していました。Unreal Engine の統合ツールによって、アイデアのイテレーション プロセスにかかる時間が大幅に短縮され、アート、アニメーション、デザイン、オーディオ、エンジニアリングのすべてがそれぞれ異なる方法で本作に役立ちました。
 

ティーンのスタイリングについてですが、Unreal Engine はゲームの豊富なカスタマイズ オプションを実現するうえでどのように役立ったのでしょうか?

高橋氏:ティーンのために幅広い衣装オプションを作成しましたが、ブループリントを活用することで、アーティストはカスタマイズ システムの初期バージョンのプロトタイプを迅速に作成し、より多くの衣装をデザインするためのパラメータを定義することができました。簡単に新しいエントリを追加できるデータ テーブルを作成することで、デザイナーが、利用可能なカスタマイズ オプションをより細かく制御できるようになり、ゲームのバリエーションが大幅に向上しました。
 

Unreal Engine 5 がこのプロジェクトに最適であった理由を教えてください。
 
高橋氏:当初は、Unreal Engine 4 で to a T の制作を始めました。当時、私たちは 5 年間 Unity での Wattam の開発に携わった後であり、ゲーム エンジンでの開発を検討していました。共同創設者兼アニメーターの Ryan Mohler が以前のプロジェクトで使用した UE4 について熟知しており、少なくともブループリントを使ってゲームのプロトタイプを作成でき、最終的には、必要に応じて Unreal Engine のソース コードに直接アクセスできることがわかっていたので、UE4 を選択しました。また、本作には大量のアートとアニメーションが含まれることもわかっていました。そのため、当時においても UE4 のツールは、他のエンジンが標準で提供していたどのツールよりも本作に適していました。シーケンス エディタ、スケルタルメッシュ アニメーション システムなどを活用し、最初の数か月でわずか 3 名でコントロール可能なプロトタイプを作成することができました。Unreal Engine 5 がリリースされた際は、Unreal Engine 5 にスムーズに移行することができました。さらに改善されたツールとワークフローを活用してゲームの開発を継続することができました。
 

Epic MegaGrants を獲得されたことで、本作の開発にどのような影響がありましたか?
 
高橋氏:正直なところ、Epic MegaGrants のサポートがなければ、to a T を完成させることはできなかったと思います。Epic Games のサポートに本当に感謝しています。
A conversation scene in UE5-powered game ‘to a T’.
Image courtesy of Annapurna Interactive
開発中に特に役に立った UE5 の機能はありますか?

高橋氏:UE5 のブループリント ビジュアル スクリプティング、アニメーション ブループリント、レベル ストリーミングの各機能は、開発プロセスにおいて欠かすことのできない機能でした。
 

このゲームは非常にユニークなビジュアルが特徴ですね。 このビジュアルは最初から決まっていたのでしょうか、それとも時間をかけて作り上げていったのでしょうか?
  
高橋氏:私たちは、to a T を完全にアニメ調に仕上げたかったので、アウトラインとハーフトーンを試しました。アウトラインではうまくいかず、UE4 で試した際には、すべてのアングルをカバーするためにアセットを 2 回描画する必要があり、大変な作業が発生しました。そこで、アウトラインの使用を止め、ハーフトーン シェーダーに絞ることにしました。 
 

ゲームのサウンドトラックは、ビジュアルを引き立て、ユニークなストーリーを表現するうえで重要な役割を果たしているように思います。 これは最初から意図していたのでしょうか?

高橋氏:そのとおりです。
A large giraffe waves in UE5-powered game ‘to a T’.
Image courtesy of Annapurna Interactive
これまでに得たフィードバックについてですが、若いオーディエンスと成人のユーザーの間で、ゲームの反響は異なると思いますか?  

高橋氏:今のところ、若い世代からのフィードバックはまだ多くないのですが、あらゆる方が本作をプレイしてくださることを願っています。
 

to a T の開発を通して得た知見で、今後の新しいプロジェクトに活かしたいものはありますか?

高橋氏:リリース後のアップデートや修正など、現在も開発を積極的に進めていますので、まだしばらくはこの 5 年間を振り返る余裕はないようです。 
 

貴重なお話をお聞かせくださり、本当にありがとうございました! to a T の詳細は、どこで確認できるでしょうか?

高橋氏:uvula.jp をぜひご覧ください。